カテゴリー「軍事」の7件の記事

2017年5月 7日 (日)

生物兵器とバイオテロ(後編)

 ここ(後編)へ先にに来てしまった方、こちらの前編からどうぞ。

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(3)その他細菌について

A:細菌では赤痢菌の、今では病原性大腸菌O157の毒素としてのほうが有名なシガ(志賀)毒素、これは、ボツリヌス菌や破傷風菌毒素に匹敵する強毒素です。そして、黄色ブドウ球菌腸管毒素、これは、毒性は今まで挙げたものほど強くなく、致死率も1%以下ですが、エアロゾル化して散布した場合、発熱や嘔吐などの症状で、敵を無力化することが出来ます。治療法がないので、対症療法しかないのが現状です。
 次に、リケッチャとクラミディアです。これらの名前はユリコはあまり馴染みがないのではないかと思いますが・・・。

Y:あ、クラミジアですよね。それ、聞いたことがあります。たしか性病の…。

A:それは、クラミディア科でも性感染症のクラミディア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ですね。兵器として使われる可能性のあるクラディミアは、オウム病クラミディア(Chlamydia psittaci、クラミジア・シタッシ)で、種類が違うのです。こちらはズーノシス…人獣共通感染症であり、『動物のお医者さん』でヒシヌマさんが研究していたやつです。

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2017年5月 4日 (木)

生物兵器とバイオテロ(前編)

はじめに
 今回説明する生物兵器(Biological weapons)と、サリンで有名な毒ガス等の化学兵器(Chemical Weapons)(合わせてBC兵器と略す)は、貧者の核兵器ともいわれ、比較的低コストで製造でき、しかも強力な威力をもつ厄介な代物です。また、ボツリヌス菌など例外もありますが、多くの感染症の初期症状が風邪と良く似ているため、かなり感染が広がるまで生物兵器が使われたということが発覚しない可能性が高いのです。テロリズムにうってつけの兵器といわれる所以です。
 第1次世界大戦以降、BC兵器の使用が目立ってきます。そして、第2次世界大戦末期に完成した核兵器とともにNBC兵器と呼ばれるようになりました(昔はABC兵器と言っていましたが、水爆の完成により原子〔Atomic〕から核〔Nuclear〕と呼ぶようになりました)。

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 以下、ギルフォード教授の野外講義で詳しく説明しましょう。(小説「朝焼色の悪魔」より抜粋加筆)

【登場人物】

A:アレクサンダー・ライアン・ギルフォード(Guildford)教授
 イギリス人。ウイルス学者でバイオテロの専門家。色々あって、Q大(九大ではない)客員教授をしている。
 YG性格検査のJ.P.ギルフォード(Guilford)博士との血縁関係はない(てか、そもそもスペルがちがう)。

Y:篠原由利子
 リストラで会社を辞めた後、ギルフォードに拾われ助手をしている。顔音痴のギルフォードのフォロー役でもある。

J:葛西純平
 F県警K署勤務の刑事。大学で微生物を研究していた。

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A:さて、バイオテロといえば・・・まず、何を思い浮かべますか、ユリコ?

Y:やっぱり、あのアメリカで起きた炭疽菌事件、あれですね。

A:そう、米国の炭疽菌事件を思い起こす人が多いでしょう。結局犯人とおぼしき科学者の自殺で幕を閉じることになりましたが・・・。バイオテロはBiological weapons、生物兵器の転用と考えられます。生物兵器とは、病原微生物やそれが作る毒素を利用したものですが、歴史的にはかなり古いです。それは、まだ感染症が微生物が原因で起こることすらわかっていない頃からのことです。疫病で死んだ人や動物の死がいを敵地に投げ込んだりしていました。それが感染るということだけはわかってましたからね。

Y:随分原始的な方法だったんですね。

A:そうです。それが、20世紀に入ってから、兵器として本格的に研究され始めました。その頃生物兵器を研究していた主な国は、イギリス・アメリカ・ドイツそして日本です。特に日本の研究資料は、戦後、アメリカの生物兵器研究に関わってきます。その日本の研究機関こそが、悪名高い・・・ジュン、知ってますね。

Y:私も知ってます。731部隊・・・ですね。

A:そうです。さて、生物兵器というと、炭疽菌と天然痘ウイルス、これがまず出てきます。特に炭疽菌は、生物兵器に出来る特性を充分備えているのです。731部隊も炭疽菌の兵器開発にはかなり力を入れてました。

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2017年4月17日 (月)

せっかくだからMOABについても書いてみよう。

20174 米軍がISに対してMOAB(Massive Ordnance Air Blast bomb、大規模爆風爆弾)を使ったというニュースで、いきなりこの記事(最強の殺傷力「真空爆弾」投下実験に成功…ロシアが発表)にアクセスが集中し、14日のアクセス数がいきなり1000を超えた。
 この記事は何故か最近タイノエや「朽ちていった命」レビューを押えてアクセス数トップになる事は多かったが、このアクセス数は異常である。
 このロシア製の爆弾は「すべての爆弾の父」と呼ばれるものだ。今はもっと強力な爆弾を持っているかも知れないが。

 そしてこのMOABだが、「Mother Of All Bombs(すべての爆弾の母)」とも呼ばれており、前述のロシアの爆弾はこれに対抗して作られたものだという。

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2008年7月19日 (土)

「Big Dog」続報

軍事用4足歩行ロボット”BigDog"」の続報です。

 すごい! 重い荷物もなんのその。蹴っ飛ばされても凍った地面の上でバランスを崩しても踏ん張って倒れない。何処かの相撲取りには見習って欲しいものです。文字通りの瓦礫の山も、一歩一歩確認するようにしっかりと越えて行ける。やはり被災地に物資を届けるために役立ちそうなロボットである。軍事利用だけにはもったいない。まあ、後はバッテリーがどれだけ持つかですな。あと、値段か。バカ高そうだもんな。

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2007年9月16日 (日)

最強の殺傷力「真空爆弾」投下実験に成功…ロシアが発表

 ちょいと古い記事になってしまったが、ロシアで開発された強力爆弾について書こうと思う。
 (MOAB(「母」の方)についてはこちら↓もどうぞ)
https://kuroki-rin.cocolog-nifty.com/heaven_or_hell/2017/04/post-ff95.html

 これは、燃料気化爆弾を強力にしたものらしい。燃料気化爆弾はウィキペディアによれば、

燃料気化爆弾(ねんりょうきかばくだん、Fuel-Air Explosive, FAE または FAX)とは、爆弾の一種である。なお日本では「燃料」が抜けて、単に気化爆弾とも呼ばれる。また、貧者の核兵器という呼称も持つ。燃料気化爆弾というのは主に日本で定着している俗称であり、軍事上の正式名称はサーモバリック爆弾(Thermobaric)である。

とあり、さらに、下にリンクしている「ストライクウイング」では、

液体状態で爆弾につめられている燃料を着弾寸前に空気中に放出、空気と攪拌させ最適な混合率になった時点で点火、数十メートルの火球を作り出し全てのものを根こそぎ吹き飛ばすことが可能な大爆発を伴う急激な燃焼をおこさせる、いわばガス爆発を人為的に起こす爆弾です。
衝撃波のみで考えれば通常のTNT炸薬を使った爆弾よりも数倍の爆発力があります。地上は火炎地獄になり、たとえ建物や塹壕に隠れていても全ての酸素を燃焼し尽くし酸素欠乏により窒息死、もしくは急激な気圧の変化により内臓に損傷を受け死亡に至ります。また、超音速でも投下が可能であり戦闘機やヘリコプターに搭載されます。

ということで、かなり凄まじい爆弾であることが伺える。目的は主に人員殺傷であり、洞窟などに隠れている敵ももれなく殺すことが出来るという。また、大きなきのこ雲を共なうので、核兵器と誤認される。なお、燃焼による酸欠で窒息死させるというのは、正しくは急激な酸素減少で急性無気肺と一酸化炭素中毒と酸素分圧の低下による合併症を起こし窒息死させるということらしい。まあ、完全な密封状態の部屋でない限り、酸素がまったくゼロになることはないだろう。

 この爆弾はあまりの威力とその残酷さから、クラスター爆弾と同じく「非人道兵器」として使用を禁止しようという動きがある。兵器に人道も糞もないだろうとは思うが、戦争というものを止められない限りはそういう区切りも必要なのだろう。

 余談だが、映画「アウトブレイク」で、冒頭部分に疫病の蔓延したアフリカの村を(村人や彼らを助けるために村に入った医者や軍人もろともに)消滅させるために使われたのがそれらしい。

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2006年11月28日 (火)

軍事用4足歩行ロボット”BigDog"

 この記事は今年の3月にUPしたものだげ、このロボットが、「世界一受けたい授業」に取り上げられていたので、便乗してyoutubeにある動画を貼った上、再アップすることにした。

 これは友達のブログで紹介されていて知ったもので、元はTechEBlog(英文)といういろいろな技術を紹介する(らしい)ブログに掲載されていたものだ。これはボストン ダイナミックス社が軍事用に開発している四足歩行ロボットで、もちろん軍事用なのでロボット三原則は適用されていない。

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2005年8月30日 (火)

生物兵器概要

 これは、私が昔「殺人病レポート」というメルマガを出した時の原稿に、加筆・訂正を加えたものである。

■■■生物兵器■■■□□□□決して許してはいけないもの□□□□□

 この、病原微生物等を使った生物兵器(Biological weapons)と、サリンで有名な毒ガス等の化学兵器(Chemical Weapons)は(BC兵器と略す)、貧者の核兵器ともいわれ、比較的低コストで製造でき、しかも強力な威力をもつ厄介な代物です。また、ボツリヌス菌など例外もありますが、感染の初期症状が風邪と良く似ているため、かなり感染が広がるまで生物兵器が使われたということが発覚しない可能性が高いのです。テロリズムにうってつけの兵器といわれる所以です。
 歴史は古く、古典的な方法として敵方の井戸に動物の死骸を入れたり、疫病の感染者を紛れ込ませたりしました。また、アメリカ先住民に、痘瘡(天然痘)患者の使った毛布を送って破滅的なダメージを与えたという話は有名です。当時アメリカ大陸は、まだ痘瘡ウィルスに進入されていなかったため、疫病は恐ろしい勢いで広まりました。
 第1次世界大戦以降、BC兵器の使用が目立ってきます。そして、第2次世界大戦末期に完成した核兵器とともにNBC兵器と呼ばれるようになりました(昔はABC兵器と言っていましたが、水爆の完成により原子〔Atomic〕から核〔Nuclear〕と呼ぶようになりました)。
 ここでは、生物兵器に使われる代表的な病原体を簡単にあげてみましょう。

【炭疽菌】
 生物兵器といえば炭疽、炭疽といえば生物兵器と言われるほど、B兵器におあつらえ向きな細菌です。2001年10月に合州国でこの細菌を使ったテロがあったことは記憶に新しいでしょう。
この細菌のこわいところは、胞子(グラム陽性芽胞形成菌)化し休眠状態になることで、いったん胞子化すると、何年何十年生き続け、熱や圧力・化学薬品にも耐え、その分爆弾などに加工しやすいということです。おまけに毒性が強く、これに汚染された地域は何十年も毒が消えず、誰も住むことが出来なくなります。また、人間の五感には感じないので、気がついたときには蔓延しているという恐ろしい事態になります。

【ボツリヌス菌】
 これも、古典的なB兵器の代表です。一時、からしレンコンの食中毒で有名になったので、名前はご存じの方も多いのではないでしょうか。この、ボツリヌス菌の出す毒素は神経毒で、青酸カリの30万倍の毒素を持つといわれ、破傷風菌毒とともに最強の毒なのです。ボツリヌス菌は酸素を嫌う嫌気性の菌で、瓶詰めやソーセージなどの加工品の中で増え、たまに食中毒を起こします。

【ハンタウィルス】
 731部隊が兵器用に研究していたことで有名なこのウィルスは、感染すると腎臓に重大な疾患を起こし出血死します。致死率は5~15%で、このウィルスの宿主はセスジネズミです。このウィルスの主な生息地は、韓国・中国・東南アジアですが、ヨーロッパのほうまで分布しています。また、93年に合州国のナバホ先住民の自治区で発生した奇病は、同じハンタウィルスでも、肺に疾患をおこすため、呼吸不全を起こして死亡するという変異株で、致死率は高く40~70%にも達します。宿主はシカネズミという可愛いネズミです。

【痘瘡(天然痘)ウィルス】
 天然痘自体は70年から80年にかけて、世界規模で撲滅作戦が展開され、ついに80年5月にWHOが撲滅宣言をし、自然界に存在しないものとなりました。しかしウィルスは、合州国とロシアが研究のため保管しているので、完全な根絶には至っていません。ウィルスのDNA解析が終わると共に焼却廃棄される筈だったのですが、それが終わった今も、いっこうに廃棄されるけはいはありません。それどころか、ロシアではB兵器用にトン単位で保管されているともいわれています。例え公に廃棄されてもウィルスが隠蔽される可能性がある限りは、両国とも廃棄処分にはしないでしょう。
恐ろしいのは、撲滅されたことで種痘をしなくなったために、痘瘡に対する免疫がなくなっている事です。種痘をうけていたとしても、その効果は既に消えているし、若い人たちは、種痘を受けてすらいません。ウィルスが保管されている限りは、決して安心できないのです。

●この他に、B兵器として開発・研究された(されている)微生物を一部列記します。

【ウィルス】
 黄熱・デング熱・リフトバレー熱・ラッサ熱・マールブルグ・エボラ
【細菌】
 ペスト・コレラ・チフス・赤痢・破傷風
【リケッチア】
 発疹チフス・ツツガムシ病・Q熱

**どのようにして使用されるか**

 病原体のタイプによりますが、一般的で一番効果のある方法は、毒素または病原体そのものをエアロゾル(霧状・エアゾール)にしてまき散らすことです。また、胞子状になるものなら、爆弾に加工することも可能です。また、古典的ながら効果がある方法として、感染動物や昆虫をばらまく方法があります。例えば、保菌蚤を衣類や綿などに付けて敵地へばらまきます。病原体を水源地に入れるという方法もあります。
 また、原料が安く、手に入りやすい上に製法も比較的簡単なため、テロに使われる可能性もあります。オ○ムが、化学兵器とともに、生物兵器の研究をしていたことは有名ですね。幸運にも生物兵器の方はうまくいかなかったようですが、彼らは実際に炭疽菌やボツリヌス毒素を散布していました。炭疽菌は、間違ってワクチン株を使ったため(こう聞くと散布された亀戸あたりの住人は炭疽菌に免疫が出来ていそうな気がするが、そう甘くはないだろう)、ボツリヌス毒素は何らかの理由(これははっきりとわかっていないらしい)で毒素が弱毒化したためにこの目論見は失敗しました。また、彼らはザイール(現、コンゴ民主共和国)でエボラ株を得ようともくろんでいたことも知られています(エボラウイルスの宿主はまだ見つかっていないので、アウトブレイクの真っ最中でない限り、いくらザイールで手に入れようとしてもほぼ不可能でしょう)。既にフィクションの世界ではなくなっているということなのです。

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