カテゴリー「感染症の話」の23件の記事

2017年5月 7日 (日)

生物兵器とバイオテロ(後編)

 ここ(後編)へ先にに来てしまった方、こちらの前編からどうぞ。

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(3)その他細菌について

A:細菌では赤痢菌の、今では病原性大腸菌O157の毒素としてのほうが有名なシガ(志賀)毒素、これは、ボツリヌス菌や破傷風菌毒素に匹敵する強毒素です。そして、黄色ブドウ球菌腸管毒素、これは、毒性は今まで挙げたものほど強くなく、致死率も1%以下ですが、エアロゾル化して散布した場合、発熱や嘔吐などの症状で、敵を無力化することが出来ます。治療法がないので、対症療法しかないのが現状です。
 次に、リケッチャとクラミディアです。これらの名前はユリコはあまり馴染みがないのではないかと思いますが・・・。

Y:あ、クラミジアですよね。それ、聞いたことがあります。たしか性病の…。

A:それは、クラミディア科でも性感染症のクラミディア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)ですね。兵器として使われる可能性のあるクラディミアは、オウム病クラミディア(Chlamydia psittaci、クラミジア・シタッシ)で、種類が違うのです。こちらはズーノシス…人獣共通感染症であり、『動物のお医者さん』でヒシヌマさんが研究していたやつです。

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2017年5月 4日 (木)

生物兵器とバイオテロ(前編)

はじめに
 今回説明する生物兵器(Biological weapons)と、サリンで有名な毒ガス等の化学兵器(Chemical Weapons)(合わせてBC兵器と略す)は、貧者の核兵器ともいわれ、比較的低コストで製造でき、しかも強力な威力をもつ厄介な代物です。また、ボツリヌス菌など例外もありますが、多くの感染症の初期症状が風邪と良く似ているため、かなり感染が広がるまで生物兵器が使われたということが発覚しない可能性が高いのです。テロリズムにうってつけの兵器といわれる所以です。
 第1次世界大戦以降、BC兵器の使用が目立ってきます。そして、第2次世界大戦末期に完成した核兵器とともにNBC兵器と呼ばれるようになりました(昔はABC兵器と言っていましたが、水爆の完成により原子〔Atomic〕から核〔Nuclear〕と呼ぶようになりました)。

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 以下、ギルフォード教授の野外講義で詳しく説明しましょう。(小説「朝焼色の悪魔」より抜粋加筆)

【登場人物】

A:アレクサンダー・ライアン・ギルフォード(Guildford)教授
 イギリス人。ウイルス学者でバイオテロの専門家。色々あって、Q大(九大ではない)客員教授をしている。
 YG性格検査のJ.P.ギルフォード(Guilford)博士との血縁関係はない(てか、そもそもスペルがちがう)。

Y:篠原由利子
 リストラで会社を辞めた後、ギルフォードに拾われ助手をしている。顔音痴のギルフォードのフォロー役でもある。

J:葛西純平
 F県警K署勤務の刑事。大学で微生物を研究していた。

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A:さて、バイオテロといえば・・・まず、何を思い浮かべますか、ユリコ?

Y:やっぱり、あのアメリカで起きた炭疽菌事件、あれですね。

A:そう、米国の炭疽菌事件を思い起こす人が多いでしょう。結局犯人とおぼしき科学者の自殺で幕を閉じることになりましたが・・・。バイオテロはBiological weapons、生物兵器の転用と考えられます。生物兵器とは、病原微生物やそれが作る毒素を利用したものですが、歴史的にはかなり古いです。それは、まだ感染症が微生物が原因で起こることすらわかっていない頃からのことです。疫病で死んだ人や動物の死がいを敵地に投げ込んだりしていました。それが感染るということだけはわかってましたからね。

Y:随分原始的な方法だったんですね。

A:そうです。それが、20世紀に入ってから、兵器として本格的に研究され始めました。その頃生物兵器を研究していた主な国は、イギリス・アメリカ・ドイツそして日本です。特に日本の研究資料は、戦後、アメリカの生物兵器研究に関わってきます。その日本の研究機関こそが、悪名高い・・・ジュン、知ってますね。

Y:私も知ってます。731部隊・・・ですね。

A:そうです。さて、生物兵器というと、炭疽菌と天然痘ウイルス、これがまず出てきます。特に炭疽菌は、生物兵器に出来る特性を充分備えているのです。731部隊も炭疽菌の兵器開発にはかなり力を入れてました。

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2016年3月28日 (月)

「チフスのメアリー」のこと

 かつて、「チフスのメアリー」と呼ばれた女性がいました。彼女は、自分でも知らないうちに、腸チフスの感染源になっていました。彼女は全くの健康体にも関わらず、体内にチフス菌を宿していた無症候性キャリアでした。

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【登場人物】

ギルフォード教授
 ウイルス学者でバイオテロの専門家として日本政府から招かれたはずが、色々あって、Q大(九大ではない)客員教授をしている(当時の厚生労働大臣と大喧嘩をして飛ばされたという説がある)。

由利子
 リストラで会社を辞めた後、ギルフォードに拾われ助手をしている。顔音痴のギルフォードのフォロー役でもある。

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2014年10月27日 (月)

エボラ出血熱のこと(バイオテロについても含む)

エボラウイルスは、感染力は強いですが、感染者の体液に直接触れたあと、ウイルスのついた手などで傷口や眼や鼻などの粘膜に触って感染する接触感染がほとんどです。空気感染はしません。また、呼吸器疾患ではないため症状に咳やくしゃみがほとんどないので(他原因でのくしゃみや咳はあり得るので注意は必要)、飛沫感染も少ないでしょう。また、潜伏期間では感染力は低いということです。ちなみに、放血を「炸裂」と表現することもありますが、爆発はしませんから
 もし日本に上陸したとしても、医療も公衆衛生も整っていますので、パニック映画のように広がることはありません。冷静な対処をしてください。そして、常日頃から頻繁に手を洗う習慣をつけてください。エボラウイルスは石鹸での手洗いでも死滅します。

 私は医者ではないし、感染症の専門家ではない。知識も若干古いかもしれない。しかし、この件には触れておかないといけないと思う。しばしお目汚しを御勘弁願いたい。
 この件は、『エボラ出血熱とデング熱』というエントリーで触れるつもりだったが、気になる記事を見たのでテーマを変えてアップすることにした。

 しかし、これを書いている間にも、刻々と状況が変わっている。そのため書いている内容にも整合性がないところがあるかもしれないが、ご容赦願いたい。この件については、状況が落ち着いて(悪化もあり得ますが)から加筆修正します。

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 このエントリーは、第1部でエボラウイルスについて、第2部で、エボラウイルスが人工的に開発された生物兵器であるという説に対する反証という、2部構成になっております。

第1部 現在のエボラウイルス禍について

 エボラウイルス感染症は1976年に中央アフリカのスーダンと旧ザイール(現在のコンゴ民主主義共和国)で、ほぼ同時に発生した。遺伝子を調べた結果、ほぼ同時に発生したとはいえ、スーダンからザイールへ飛び火したのではなく、全く別のウイルスが偶然同時に発生したものだった。その約10年後の1995年に再びザイールで大発生が起き、たまたま映画「アウトブレイク」の上映と重なり、世界中の注目を集めた。その後もエボラウイルスはアフリカで数回散発的な大流行を繰り返した。
 エボラウイルスはフィロウイルス科に属する。フィロウイルスのフィロは紐という意味で、ウイルスには珍しい紐状の形をしているために命名された。この科にはマールブルグがある。1968年にドイツのマールブルグ市の研究所でアフリカ産のミドリザルから感染が広がった。フィロウイルスはその致死率の高さや不吉な形状から宇宙から来たアンドロメダ病原体ではないかと恐れられた。
 現在、西アフリカでエボラウイルスは拡大し続けており、予断の許されない状態になっている。正直、WHOも手の打ちようのない状態になりつつある。早期のワクチン・抗ウイルス薬の完成が望まれるところだが、今のところ半年以上かかりそうなのが現状である。
 しかし、アフリカとは違い、日本などの先進国の医療体制は整っており、万一上陸したとしても、一気に広がることはないだろう。この場合、ウイルスよりもパニックの方が深刻な事態を引き起こす。各人の冷静な行動が望まれる。現在、アメリカ合衆国とスペインにウイルスが上陸している。これ以上広がらないよう、各国の水際対策の強化と感染地から帰った人々の慎重な行動が必要である。
 また、我が国において住民の反対にあって現在BSL-3でしか使用していない研究室をBSL-4で稼働できるよう早急に対処するべきだと思う。(エボラウイルス流行で稼働できるようになった模様)

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2013年2月10日 (日)

インフルエンザに罹ってました。

 先週末、インフルエンザに罹って週末は寝込んでおりました。

 妹が会社でもらって来たウイルスで、当人は既に寝込んでいましたが、わたしは金曜日の朝はまだ大丈夫で、感染していたとしても金曜いっぱいは大丈夫だろうと高を括っておりましたが、甘かった。

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2010年5月29日 (土)

【口蹄疫】 現地の声を聞こう。2

 drac-obさんのブログにあった、47NEWSの口蹄疫特集ページへのリンクを貼っておきます。

http://www.47news.jp/47topics/e/159688.php

 現地からの悲痛な叫びの前には、私がここで書き散らした駄文など100万分の1にも及ばないでしょう。

drac-obさんの最新報告
http://gakkan.blog64.fc2.com/blog-entry-700.html
 ※アップされている動画は必見です。

 口蹄疫に限らず、災厄はどこに住んでいようが降りかかってくるものです。それに目を背けず直視することは、生きていく為にも必要だと思います。「世界にひとつだけの花」とかいって、守り現実を見せないというのは、間違っていると思います。探してまであえて見せることはないですが、ある程度免疫をつけていないと、大人になってからが大変だと思います。

 疫病は目に見えません。私もかつてうちの猫たちが猫ジスに感染して、5匹全部感染した挙句に2匹亡くしてしまった事件以来、すごく怖いです。だから、野良猫は抱き上げないようにしていますし、外から帰ったら必ず手を洗います。履くものも、自分ちの庭以外は、足の露出するサンダル系統は履きません。それでも、この前猫インフルをもって帰ってしまいました(両方ともヒトには移りません)。このときは、免疫のあった老猫はかからず、2匹いる若い猫がやられました。幸い治癒しましたが、もっと重篤な感染症だったらと思うとぞっとします。

 しかし、蔓延しない限り封じ込めは出来ます。しかしそのためには今回のようなジェノサイドが行われてしまうのです。単純に考えると、拡散が広がるごとに4倍被害面積が広がります。ですから、初期の対策が肝心なのです。

 義援金の協力をお願いいたします。
 ただし、募金詐欺にはくれぐれも引っかからないように。出来る限り公共機関の募金に協力するのが無難だと思います。あと、コンビニ等の募金も大丈夫だと思います。おつりの1円2円でもいいから、入れてあげてください。

 政府が当てにならないなら、国民ががんばるしかないです。

署名及びカンパの窓口
http://group.ja-miyazaki.jp/fmd/
 よろしくお願いします。

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2010年5月24日 (月)

口蹄疫 続報 「現地の声を聞こう」

署名及びカンパの窓口
http://group.ja-miyazaki.jp/fmd/
 よろしくお願いします。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

 全国的な報道は、沖縄基地問題などでかすんでいますが、まだまだ先の見えない厳しい状態が続いています。非難隔離されていた6頭の種牛にも感染の疑いが出てきて、1頭すでに殺されています。

 風評や意図的なガセ情報に惑わされないで下さい。殺処分された家畜の肉は出回っていませんので、今市場にある宮崎牛は安全です。いや、それ以前に、何度も書きますが、口蹄疫はヒトにはほとんど影響ありません。また、本来感染した動物も、致死率はそんなに高くなく、多くは治癒する病気です。ただ、感染力が強く、国際的な畜産の防疫基準により、殺処分がデフォルトになっているのです。
 そういうわけで、万一感染した牛の肉であっても加熱調理した場合は感染力もないし、ヒトが食べても影響はありません。

 それにしても、口蹄疫かどうか調べるのは国の機関しか出来ないというのは、ウイルス感染の結果もたらす脅威(人的も含めて)を考えたら、どう考えてもおかしい。感染を封じ込めるには、迅速な対応が必要だろう。今回も、もし、インフルエンザのようなウイルス診断キットがあって、病気の家畜をすべて調べるということが出来ていれば、水牛感染の時に発見できた可能性があるだろう。
 今回の悲劇を少しでも無駄にしないように、これからの防疫対策をすべて見直して、出来る限り「早い・正確・安心」な対応がすべての重要感染症において出来るようにして欲しいと思う。

 【参考】

動衛研:総説
口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性について
村 上 洋 介
農林水産省家畜衛生試験場ウイルス病研究部病原ウイルス研究室長

宮崎大学農学部 獣医衛生学研究所
http://www.agr.miyazaki-u.ac.jp/~vet/hygine/HP/index.htm

 最後に宮崎在住のdrac-obさんのブログに貼ってあった動画をアップしておきます。
  元記事:やはり辺境は見捨てられるのか 

 番組中、畜産農家の奥さんが旦那さんに宛てた手紙が読まれます。映像が無くとも、今の状況が痛いほどわかります。ぜひ、最後までご覧になってください。

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2010年5月19日 (水)

口蹄疫続報:ワクチン投与後に全頭処分へ…政府方針

署名及びカンパの窓口
http://group.ja-miyazaki.jp/fmd/
 よろしくお願いします。

ワクチン投与後に全頭処分へ…政府方針
 2010年5月19日(水)3時14分配信 読売新聞
http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/yomiuri-20100519-00034/1.htm 

 なぜ、せっかくワクチンを投与したのに、結局全頭処分せねばならないかですが、下のリンク先にある山内先生の講義にも書いてありますが、簡単に説明します。

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2010年5月18日 (火)

口蹄疫で ついに非常事態宣言

宮崎県知事、非常事態宣言 (共同通信)5月18日(火)11時40分
http://news.nifty.com/cs/topics/detail/100518270135/1.htm

 こうなっては、日本中に広がる前にワクチンを使うことを考慮すべきではないかなあ。すでに、外国からも問題視されているだろうし。

 殺処分のほうが、問題も少なくてコストも安いかもしれないけど、ここまで広がっては感染を防ぐにはワクチンしかないように思える。これは、フランスなどで行っている方法らしい。

 しかし、日本の消費者は異様に潔癖症だから、どっちにしても市場に響くだろうが。

 それにしても、去年の今頃は新型インフルエンザで、今年は口蹄疫。つくづく、感染症というものの怖さ・難しさを思い知らされるこの頃である。

 

 関連記事

口蹄疫とは共生出来ないのか? すべて殺処分する以外方法はないのか?
https://kuroki-rin.cocolog-nifty.com/heaven_or_hell/2010/05/post-525b.html

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2010年5月17日 (月)

口蹄疫とは共生出来ないのか? すべて殺処分する以外方法はないのか?

 宮崎が大変なことになっている。
 それで、GPZさんから口蹄疫と宮崎の現状について書いてほしいと言う依頼があったので、近々書こうと思っているが、とりあえず私が疑問に思っていることで、山内先生の講義にちょうどいいものがあったので貼っておこう。

 口蹄疫は、感染力は半端なく強い。それで、牧場から1頭でも感染牛が出たら、そこのすべての牛を殺処分せねばならないことになっている。

 しかし、初期ならそれでいいかもしれない。しかし、今回のように広がってしまった場合は、これからどこまで広がるか予測不能ですらあるだろう。
 口蹄疫は、牛疫程すさまじい威力(感染した牛はほぼ100%死亡する)はないし、牛の致死率も低い。人にも感染しない(ごくまれに感染するが症状は非常に軽い)。だから、感染拡大防止はせねばならないが、すべて殺処分というのはどうにかならないかと思うのだ。

■口蹄疫との共生
http://jsvetsci.jp/05_byouki/prion/pf116.htm
 ※2001年の記事なのでちと古いですが、今も十分参考になると思います。

連続講座 人獣共通感染症より
(この講座は山内一也東京大学名誉教授が人獣共通感染症について色々な機会に行ったお話をまとめたものです)

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