はじめに
今回説明する生物兵器(Biological weapons)と、サリンで有名な毒ガス等の化学兵器(Chemical Weapons)(合わせてBC兵器と略す)は、貧者の核兵器ともいわれ、比較的低コストで製造でき、しかも強力な威力をもつ厄介な代物です。また、ボツリヌス菌など例外もありますが、多くの感染症の初期症状が風邪と良く似ているため、かなり感染が広がるまで生物兵器が使われたということが発覚しない可能性が高いのです。テロリズムにうってつけの兵器といわれる所以です。
第1次世界大戦以降、BC兵器の使用が目立ってきます。そして、第2次世界大戦末期に完成した核兵器とともにNBC兵器と呼ばれるようになりました(昔はABC兵器と言っていましたが、水爆の完成により原子〔Atomic〕から核〔Nuclear〕と呼ぶようになりました)。
クリックよろしくです。→
以下、ギルフォード教授の野外講義で詳しく説明しましょう。(小説「朝焼色の悪魔」より抜粋加筆)
【登場人物】
A:アレクサンダー・ライアン・ギルフォード(Guildford)教授
イギリス人。ウイルス学者でバイオテロの専門家。色々あって、Q大(九大ではない)客員教授をしている。
YG性格検査のJ.P.ギルフォード(Guilford)博士との血縁関係はない(てか、そもそもスペルがちがう)。
Y:篠原由利子
リストラで会社を辞めた後、ギルフォードに拾われ助手をしている。顔音痴のギルフォードのフォロー役でもある。
J:葛西純平
F県警K署勤務の刑事。大学で微生物を研究していた。
**************
A:さて、バイオテロといえば・・・まず、何を思い浮かべますか、ユリコ?
Y:やっぱり、あのアメリカで起きた炭疽菌事件、あれですね。
A:そう、米国の炭疽菌事件を思い起こす人が多いでしょう。結局犯人とおぼしき科学者の自殺で幕を閉じることになりましたが・・・。バイオテロはBiological weapons、生物兵器の転用と考えられます。生物兵器とは、病原微生物やそれが作る毒素を利用したものですが、歴史的にはかなり古いです。それは、まだ感染症が微生物が原因で起こることすらわかっていない頃からのことです。疫病で死んだ人や動物の死がいを敵地に投げ込んだりしていました。それが感染るということだけはわかってましたからね。
Y:随分原始的な方法だったんですね。
A:そうです。それが、20世紀に入ってから、兵器として本格的に研究され始めました。その頃生物兵器を研究していた主な国は、イギリス・アメリカ・ドイツそして日本です。特に日本の研究資料は、戦後、アメリカの生物兵器研究に関わってきます。その日本の研究機関こそが、悪名高い・・・ジュン、知ってますね。
Y:私も知ってます。731部隊・・・ですね。
A:そうです。さて、生物兵器というと、炭疽菌と天然痘ウイルス、これがまず出てきます。特に炭疽菌は、生物兵器に出来る特性を充分備えているのです。731部隊も炭疽菌の兵器開発にはかなり力を入れてました。
最近のコメント