福岡の福島応援ショップ風評被害で中止に
ここしばらくニュースネタばかりだったので、書くのを控えていましたが、やはり、看過出来ないことなのでエントリーをたてます。
これは、風評被害以外の何者でもないでしょう。
福島産といっても、「生鮮食料品は取り扱わず、福島県の生産者から仕入れたジャムや梅干し、乾めんなどの加工品を販売する計画で、放射線量が国の暫定基準の10分の1以下であることが確認されたものに限る方針だった。」といいます。
これのどこが危険なのか。不安な人は買わなければいいんです。しかも、、「福島からトラックが福岡に来るだけでも放射性物質を拡散する」なんて抗議は、まったくの言いがかりでしょう。福島から避難している人や、福島ナンバーの車両に対する差別や暴言は今までもいろいろ問題になっていましたが、まさか、私の住んでいる県でこんなことが起きるとは。本気でそう思っているなら、無知蒙昧と言うしかありません。
去年の宮崎口蹄疫禍の時も、宮崎ナンバーの車両(特にトラック)がボイコットされました。まるで同じことが今起こっているのです。
実際、数十本の抗議メールや電話であっさり中止になったことに若干の疑問がありましたが、「不買運動を起こす」「「抗議デモを行う」「フジテレビと同じ目に遭うぞ」のような脅しまがいのメールが来たならば、出店先に迷惑がかかると中止せざるを得なかったのは納得できます。実際に、抗議を呼びかけるサイトもあったといいます。なんか、女性専用車両反対運動を彷彿とさせました。
企画された方々も、まさかこれ程(数ではなく質として)の妨害があるとは持っていなかったに違いありません。
だけど、これはたまたま福島原発が事故を起こしたからのことで、もし、これが玄海原発の事故だったら、それで、まったく逆の現象がおこったとしたら、どうでしょう。きっと、悲しい思いをするに違いありません。
まあ、世の中色々な考え方があることはある程度理解できます。しかし、もう一つ驚いたことは、原発が怖くて避難して来られた方が反対されているということです。
私も福島原発が事故を起こした当初から、妊婦さんや小さいお子さんは、出来るだけ安全な地域に避難した方がいいと言うことを書いていましたし、それは正しいと思っています。しかし、遠くに避難なんて裕福だったり受け入れてくれる人がいたりするような、条件の整った人しか出来ないのです。私だって、多分留まらざるを得ないと思います。ワーキングプア状態が長引いたおかげで、ろくな蓄えはありませんし、猫たちを置いて出ていくわけにもいきません。
多くの人は留まり、そこで生きて行かねばなりません。避難区域に入らなかった人たちは、今までのコミュニティで、避難区域の方たちは避難所や仮設住宅で。そして、農家や製造業の方たちは、放射能という見えない脅威故に売ることが出来なかったり、幸い基準値以下で安全であっても福島産というだけで買い手がなく、これからの生活自体がどうなるかわからない人たちが大勢おられます。自立して生活する意欲はあっても手段が奪われつつあるのです。そんな福島を何とか応援したい、元気をあげたい。これは、そういう気持ちで立ち上げた企画でしょう。それなのに、安全圏に避難できたらもう他人事かい、ついそう思ってしまいます。
まあ、以下のニュース記事内で反対の電話をしたと報告された女性は、福島ではなく関東から避難して来られたということなので、かなり放射能に対して神経質になられておられると考えられ、さもありなんという感じですけどね。
敢えて書きますが、1950年から1970年位までの間は、核兵器保有国が競って大気中核実験、平たく言うと、大気中に放射能を景気よくぶちまける実験をさんざっぱらやらかしていましたので、その頃の放射能汚染 は今よりはるかに大きかったはずです(福島原発ホットスポットを除く)。しかも、地球規模です。逃げようがなかったのです(当時、「雨に濡れたらハゲる」とよく言われたものです)。
特に、中国の核実験は、日本に大量の放射能を降らせたはずです。それでも、当時胎内あるいは内部被曝をしたはずの私たちは、元気で生きています。日本人の死因のトップが感染症からガンにとって変わりましたが、それは被曝のせいではなく皆が長寿になったからです(広島や長崎で被爆された方々の放射線量はけた違いに多いので、一線を画します)。
もちろん、子供や妊婦さんの放射線被曝は極力避けるべきことなのは変わりありません。
放射性物質(放射能)は自然界にも存在します。たとえば御影石の近くでは測定値が跳ね上がります。宇宙からは放射線が降り注いでいます。私たちはそんな自然放射線からは逃げようがないのです。しかし、その程度の放射線では、ほぼ健康に影響することはありません。
原発事故が深刻なのは、当然ですし、関係者には当然責任を取らせるべきことだし一刻も早い収束を願います。事故が長引く程、排出放射能は増える一方ですから。私たちも侮らず、情報収集に努めるべきだとも思います。しかし、間違った知識や偏見をはびこらせるべきではないし、「放射線」「放射能」と聞いただけでヒステリックに恐れない冷静な判断も必要です。そうでなければ、これからの復興は困難を極めるでしょう。
応援する、協力出来ることは出来るだけ協力する。そして、無駄に足を引っ張らない。
今回の災害は、未曽有の大地震による大災害に、原発事故という特殊な事故が重なったもので、今までの災害とは一線を画しています。むしろ、太平洋戦争後に近いかもしれません。ですから、今まで通りにはいかないことも多いと思います。だからこそ、復興に向けて日本中(国籍を問わず)が心をひとつにしてがんばって行かねばならないのです。
それを踏まえて、福島応援ショップはぜひとも実現してほしいと思います。
三つの心がひとつになっただけで、百万パワーになるんです。みんなでがんばりましょう。
【アーカイブス】
福島支援の販売店中止、「放射能拡散」抗議で
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news-spe/20101002-883049/news/20110908-OYS1T00635.htm
東京電力福島第一原発事故の風評被害で苦しむ福島県の農家らを支援しようと、福岡市西区の商業施設「マリノアシティ福岡」で17日に予定されていた「ふくしま応援ショップ」の開店が、中止されることになった。出店を計画していた同市の市民グループ「ふくしまショッププロジェクト」などに、「福島からトラックが福岡に来るだけでも放射性物質を拡散する」といったメールや電話が相次いだためで、同団体は新たな出店先を探すという。
同団体によると、農産品の宅配を行う「九州産直クラブ」(福岡市南区)と連携し、マリノアシティ内の農産品直売所「九州のムラ市場」の一角で開業予定だった。生鮮食料品は取り扱わず、福島県の生産者から仕入れたジャムや梅干し、乾めんなどの加工品を販売する計画で、放射線量が国の暫定基準の10分の1以下であることが確認されたものに限る方針だった。
8月26日に出店を発表したところ、同団体などに「出店するなら不買運動を起こす」など、放射能に汚染された食品が福岡に持ち込まれることを不安視するメール十数件と電話が多数寄せられたという。今後、同団体は別の出店先を探し、通信販売を検討するという。
(2011年9月8日 読売新聞)
福島県産品店中止「悲しい」「安全保証ない」交錯
http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/20110909-OYS1T00728.htm
原発事故による放射能汚染を恐れる人からのメールなどを理由に福岡市内での出店が中止となった福島県産品店「ふくしま応援ショップ」。事実が明らかになった8日、「残念だ」との声が上がる一方で、汚染を恐れて避難してきた被災者からは「出来るだけ危険を避けたい」との本音も聞かれた。東日本大震災から11日で半年。被災地支援の難しさが、改めて浮き彫りになった。
同ショップが出店する予定だった福岡市西区の商業施設「マリノアシティ福岡」。買い物をしていた元病院検査技師、上田孝子さん(52)(福岡市博多区)は「そうしたメールの意見が福岡県民の大多数の考えと思われると残念」と表情を曇らせた。
かつて仕事で放射線を使用する機器を扱っていたと言い、「基準値以下のものだけを販売するとしており、問題はないと思う。正しい知識が大切」。出店を断念した市民グループ「ふくしまショッププロジェクト」へは「復興支援は息の長いものになる。これにめげず、新しい販売場所を探してほしい」と話した。
筑紫野市から来ていた男性(75)も「(2005年の)県西方沖地震の際は県外の多くの人たちから応援してもらった。福島のものを買うのが不安なら店に行かなければいいだけなのではないか」と語った。
一方で、避難者の中には複雑な思いを抱えた人も。関東から子どもと避難してきた女性は、今回、実際に出店に反対する電話をかけたという。「福島の食品が安全だという保証はない。九州まで逃げてきたのに、また追いかけられるような気がする」
「ふくしま応援ショップ」の出店準備を支援してきた福岡福島県人会の浅野雄たけしさん(67)(福岡市早良区)は、「福岡の消費者には懐深く受け止めてほしかったが、残念だ。放射能が怖いのは理解できるが、日本全体で東北、福島を支援していこうという中、始める前から問答無用ではねつけるなんて、やるせなく悲しい。震災でやる気をなくしていた福島の生産者が、開店を『希望が持てる』と喜んでいただけに、気落ちしないか心配だ」と案じていた。
(2011年9月9日 読売新聞)
福島応援ショップ「放射能不安」風評被害で出店中止
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20110908-OHT1T00305.htm
東京電力福島第1原発の事故発生後、風評被害に苦しむ福島県の農家らを支援するため、福岡市内のショッピングモール「マリノアシティ福岡」内で17日にオープン予定だった「ふくしま応援ショップ」の中止が8日、決まった。先月下旬の計画発表後、放射性物質の拡散を不安視する市民らから「不買運動を起こす」「(韓流問題で抗議デモを受けた)フジテレビみたいになりたいのか」といった抗議がメールや電話で寄せられたため、苦渋の決断に至ったという。
「ふくしま応援ショップ」プロジェクト事務局によると、同店舗の計画は4月下旬にスタート。マリノアシティ福岡内の直売コーナーに店を構え、今月17日から福島県産の農産物を販売する予定だった。先月26日に記者発表し、開店準備を進めていた。
消費者が抱える不安を考慮し、生鮮食料品の取り扱いはなし。店頭に並べるのはジャムやうどんなど、震災前に原材料が収穫された加工品に限定した。さらに全商品に放射線量のテストを行い、国の暫定基準量の10分の1以下であるかどうかをチェックするという、徹底した管理態勢を敷く方針だった。
にもかかわらず、先月末から今月初旬にかけ、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」で、ショップに対して批判的な書き込みが相次いだ。その後、マリノアシティや、店の運営母体である「九州産直クラブ」に対し、抗議の電話、メールが約30件寄せられた。内容は「福島からトラックが来るだけで放射性物質が落ちる」「(マリノアシティの)不買運動を始めるぞ」といったもの。さらに、先月下旬に「韓流偏重だ」などとして抗議デモを受けたテレビ局を引き合いに出し「フジテレビみたいになりたいのか」などと脅迫めいた抗議もあった。
九州産直クラブは、マリノアシティ全体に迷惑や影響が及ぶことを懸念し、7日に出店の断念を申し入れた。今後は別の形での展開を模索することになる。プロジェクト事務局の吉田登志夫さん(59)は「風評被害とはこういうものなのかと痛感しました。残念というほかありません」と肩を落としつつも「これからも福島県とのつながりを作っていきたい」と話している。
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コメント
情けない……
いっそリヤカーかカンカン部隊で、ゲリラ出店するか(^^;)
投稿: bergkatze | 2011年9月13日 (火) 00:03
何ともいえない気持ちになりますね。
感情論でなく、きちんと放射能について勉強してもらいたいですね。
投稿: MM21 | 2011年9月13日 (火) 21:29
こういうのって、声のでかい奴(電話でクレーム入れる、ネットでわーわー騒ぐ、匿名でメールする等)の意見が結構通ってしまうんですよね。大多数の人はそういう風には思っていない、とこれは僕が勝手に思いたいだけかもしれませんが。
>原発が怖くて避難して来られた方が反対されている
これは、あるでしょう。芥川の『蜘蛛の糸』のカンダタの心境なんでしょう。自分が助かると思って、後ろを見たら多くの亡者がうじゃうじゃとすがってくるのを見てしまったら、助かるのは己だけで十分だと叫んでしまう。まあ、人間なんてそんなものだと言えなくもないです、ハイ。
>中国の核実験は、日本に大量の放射能を降らせたはず
「放射能雨」が降るから、外で遊んだらイケナイ、ハゲるというのはよく言われました。あ、その時の影響が、いやいや、ワシはもともとヒタイが広いいわゆるハイブロウで、決してハゲではない。しかし、この時の放射能雨に打たれていた連中が結構ハゲてきているが、あ、単なる加齢か。
投稿: drac-ob | 2011年9月16日 (金) 23:55
bergkatzeさん、こんばんは。
情けないというか、国内ですらこうなら、海外の反応も推して知るべし・・・。トラックが云々と言い出したら、通販ですら買えないことになりますね。やはり、リヤカー部隊でしょうか。
投稿: 黒木 燐 | 2011年9月19日 (月) 23:30
MM21さん
この問題にどう反応するかが、リトマス試験紙のようなものになっているのでしょう。
ただ、幼い子供を持つ親が、過剰反応することは責められないと思います。もっともそれが良いことかどうかは別問題ですけれども。
投稿: 黒木 燐 | 2011年9月19日 (月) 23:35
drac-obさん
>声のデカい奴
所謂、ラウドマイノリティってやつですね。
決して多くはないけれど、声がでかいので注目を浴びやすい。
しかし、妹の会社の所長さんも絶対来てほしくないと言っているそうで、意外と本音ではそう思っている方が多いかもしれません。自分や自分の子が可愛くない人間はあまりいないでしょうから。それでも、むやみやたらと恐れるのは愚の極みでしょう。
まあ、しばらく経てば慣れてしまって今ほど神経質にはならなくなるかもしれません。それはそれで、問題ですけどね。
>>原発が怖くて避難して来られた方が反対されている
>これは、あるでしょう。芥川の『蜘蛛の糸』のカンダタの心境なんでしょう。
しかも、福島じゃなくて関東から避難した人っていうことが象徴的ですね。
>放射能雨にあたったらハゲる
ひょっとして、今、その噂がまた拡散していたりして。
投稿: 黒木 燐 | 2011年9月20日 (火) 00:16
国の基準自体が甘いのだから、それより低いから安心とはいえませんよ。汚染されたエリアのものは外に出すべきではありません。食べなければいいと言っても、飲食店で出される危険もあります。やはり、わざわざ他県にまで汚染のリスクのある食品を持ってくるべきではありません。
まったく、復興といえばなんでも通るという風潮は迷惑です。
投稿: hana | 2011年12月17日 (土) 22:07
hanaさん
この事は、感情論だけでどうこうできるものではないことは、重々存じております。
しかし、同じ福島県内でも放射能汚染のほとんどない場所もあります。地名ですべてNGにしてしまうのは乱暴だと思います。それに福島県以外でも放射線量の高い場所があります。理想は日本国内すべての生産物に放射能濃度基準検査をすべきだと思います。
日本の基準が甘いと言うことですが、欧米に比べると厳し方だと思いますし、特に原発事故を受けて基準が厳しくなっています。
悪戯に放射能を恐れるのではなく、正しく恐れることが必要です。子供の頃、核実験の放射能の雨にまみれた作物を食べていたはずの私たちの年代もなんとか半世紀は生きています。
それから、復興と言えば何でも通る風潮と書かれていますが、現にガレキ受入れ拒否等起こってますし、特に福島関連では通ってないことが多いのではないでしょうか。
今のところ、原発事故は「収束に向かっている」ということですが、東電についてはまったく信用できないことは自明のことですので、いつまた事態が悪化するとも限りません。
もし、再び深刻な状態に戻り、大爆発などした場合、今よりもっと広範囲に汚染されるでしょう。福島に起こったことが自分らに降りかかってくる可能性も否めません。出来るだけ冷静に、そして合理的に考え行動することが前にもまして必要になってくると思います。
投稿: 黒木 燐 | 2011年12月26日 (月) 01:05
日本がとても大好きな外人です。辞書で見読むと、風評被害というのは事実を伝えない・正確な情報を提供しない事が原因ともなる風評による経済的被害ですから、福島の場合は括弧とした高い放射能汚染の事実(現在でもスバ抜けて高い)があるところを見ると、風評といってしまうのは、おかしのでは、と私は思います。人間が受ける放射能は0に近ければ近いほどく、少なければよいという問題ではないのは世界の常識です。だから日本が事故後に引き上げた規定値の10分の1とゆう値では、とても納得いきません。そういううことは広島・長崎の経験がある日本の皆さんが一番よくわかっていると思っていましたが、このブログを読むとそうではないことが見られます。
福島の人たちの経済を助けるのは、そういう目にあわせた東電と政府に彼らの生活保障をしてもらうように国民が一体となって求めることに意義があると思いますが、無垢な皆で毒を薄めて飲もう、では、自分達のふところだけが可愛い東電と政府がいい気になるだけではないですか。今でも十分いい気になって、東北の人たちに損害賠償も十分しないばかりか、また原発を再開するなんてことまでやってしまって、世界の顰蹙をあびているではないですか。
有給休暇の制度があっても、会社の人に気兼ねして100%とりにくい、上司からのパーティー券は無理しても買わなければいけない、という日本人の気質が、こういうところにも出るのでしょうか。
福島の人たちは果たしてこういう救済方法を望んでいないと思います。彼らだって、できる限り福島県外のものを食べたいはず。それは本当の危険性を彼らが一番よくわかっているはずだからです。
投稿: stefano | 2012年8月22日 (水) 22:16
stefanoさん、コメントありがとうございます。
有給休暇もろくに取らず、休日出勤の代休も取れず、残業時間80時間越えでも25時間分しか残業代が出ず、生活保護以下の給料(手取り)で甘んじている、日本人代表みたいな黒木です。
外国の方からこのような見事な日本語で長文のコメントをいただいたことを、光栄に思います。
日本を大好きで居てくれて、ありがとうございます。
まず、これにはきちんとお返事しなければと思ったゆえに、コメントが遅くなってすみません。実は、北部九州豪雨の災害復旧の仕事が入り、8月に入ってから勢い忙しくなってしまいまして、コメントをいただいてから、なかなか腰を据えて書く時間が持てなかったのです。
広島や長崎に原爆を落とされ、放射能の怖さを十分に知っているはずの日本人ということですが、残酷だということで、最近では一部地域を除き、原爆について教える平和教育も行われておらず、1945年8月6日午前8時15分(実際は16分くらいだそうですが)に広島、3日後の8月9日11時2分に長崎という、原爆投下の日時すら正確に言える日本人も少なくなっているのが現状です。風化しつつあるといっても過言ではないです。
ですから、多くの日本人の放射能についての知識は他の国の人々とあまり変わらず、それ故に戦後の日本と同じような被曝者差別がまかり通っているのが現状だと思います。核について疎いということの結果だと思うのですが、福島原発事故直後から、このブログの「朽ちていった命」(JCO臨界事故関連書籍)の感想エントリーのアクセスが急に増えて、一時期軒並み優に1000アクセス(最多で4000を超えました)を超える日々が続いたのでした。おそらく放射線障害という検索で来られたのだと思います。
さて、「風評」ではないということですが、福島県とはいっても、全域で深刻な汚染があるわけでなく、通常とほとんど変わらない地域だってありますし、福島県外でも基準超えの地域はありますので、福島県とひとくくりにすることは乱暴だと思います。ましてや、福島の人から放射能が移る、とか、福島ナンバーの車両が通っただけで放射能汚染されるなどという人がいるとは、あまりの無知さにあきれるばかりです。このショップもしっかりと汚染の有無を調べ、基準値以下、すなわち事故以前レベルで安全な商品を取り扱うと明言されていました。福島産といえど、ほとんど汚染されていない商品だってあるし、加工品などは事故以前のものがほとんどでしょう。それなのに、福島ブランドというだけで忌み嫌われるのはやはり風評と言えるのではないでしょうか。
福島の農家をはじめとする生産者の方々は、汚染と戦いながらなんとか残留放射能が基準値を下回るものを作ろうと、血の出るような努力を続けておられますし、実際に基準値をかなり下回る農作物を作っておられます。また、もともとほとんど汚染されていない地域の農作物だってあります。確かに福島県産を避ける福島の方もいらっしゃるとは思いますが、郷土を思い、福島に住み続けたいと思っている方の望んでいることは、やはり安全な福島産のものではないでしょうか。
人の受ける放射線量が「限りなく0に近い」ほうが良いというのは正しいとは思いますが、原発事故がなかったとしてもそれはあり得ないでしょう。宇宙からの放射線は防ぎきれないし、自然界にだって放射線はあります。ただ、ほとんどの場所が生命に影響がないほどの線量ですけれど。花崗岩からかなりの放射線が出ていることはよく取り上げられているし、食品ではバナナの放射性カリウムが有名ですね。そういうことから、被曝即健康被害、被曝即奇形発生というのは、あまりにも過剰反応だと思います。
植物の奇形に帯化というのがあり、実はわりとありふれた奇形なのですが、けっこう見た目にインパクトがある(平たく言えば気味が悪い)ため、最近福島の原発事故独特のものだと勘違いして騒がれています。まあ、因果関係はきちんと調べないとわからないですが、おそらく他県と福島県の帯化発生率はあまり変わらないのではないかと思います。
確かに、このブログの福島原発事故直後辺りのエントリーでは、読み返すと我ながらけっこう乱暴なことを書いているなと苦笑する部分もありますが、これは当時、私が原子炉の爆発というかなり深刻な事態を想定していたということがあります。日本の国土でチェルノブイリ並の事故が起きた場合(結局チェルノと同じレベル7とされていますが、チェルノと違って原子炉自体は爆発していませんので、今のところかなりましだと思っています)、国土全体がかなり深刻に汚染されると考えたからです。
ここで間違えてほしくないのは、このエントリーを含め、私の考えは「みんなで毒を薄めて飲む」ことではなく、必要以上に恐れないすなわち、よく言われる「正しく恐れよう」ということです。このブログの常連さんたちも、放射能の恐ろしさや厄介さをよく理解している人たちです。
福島県産だから放射能汚染されているに違いないというのは間違いですし、福島県=放射能汚染から転じて東北大震災の瓦礫すべてを放射能汚染されていると考え、ヒステリックに受け入れ拒否をするのは変です。特に弊害がなければ、それで東北の復興が進むなら、各県がある程度引き受けることは合理的なのではないでしょうか。また、成人(妊婦さんを除く)であれば、微量の放射線量を恐れて神経をすり減らすより、基準値以下のものなら割り切って受け入れるほうが、はるかに健康被害が少ないのではないかと思います。まあ、広島や長崎の被爆者の方々のほとんどが健康な子孫を残されていますし、核実験全盛期に成長期にあった私たち世代にもちゃんと健康な子供が生まれているので、今の段階であれば、あまり心配することもないかもしれません。
このような事故を起こした東電や政府に責任を取らせなければならないのは自明のことです。東電は売れる者はすべて売り、役員報酬や高額な退職金は過去をさかのぼって全員が返却し、被害者の保障に充てるべきだと思いますし住む家を奪われた被害者に考慮して、豪華な持ち家も売り払い安い借家に引っ越すべきとすら考えています。また、私はこのブログで何度も東電をきちんと刑事告発すべきだと書いていますし、安全神話を押し付け原発を推進した前政党を含め政府の責任も追及すべきだと述べています。
しかし、悲しいかな、私自身はなんの力もない一介のワーキングプアな会社員です。こんなところでぶつぶつ言っても壁に向かって言うようなものかもしれません。
それでも、ここで書き続けていくことで少しでも何か変わってくれたらいいなと思っています。
投稿: 黒木 燐 | 2012年8月27日 (月) 03:47