超能力番組を10倍楽しむ本
捏造をやっていたの『あるある』だけじゃない! 超能力番組のビデオを徹底検証、超能力者のトリック暴きはもちろん、テレビ局が仕掛けたトリックも見破る。あの高視聴率番組がやっているヤラセの決定的証拠も押さえた!
「ああもう、テレビなんか信じられない!」
対象年齢:小学校高学年以上
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今でこそ私は、超能力やスピリチュアル等のいわゆるトンデモに懐疑的だが、20歳過ぎまではけっこう信用していた。一時期悪いことが重なり、その上うちの猫がばたばた病気になり何匹か死んでしまったということが続いたとき、占い師に視てもらったこともあった。良く当たると有名な「天神の母」に視てもらうため、終電ギリギリまで並んだこともある。
「天神の母」の場合は良心的で、1人1000円か2000円(うろ覚えなので確かではないが、だいたいこれくらいだった)で、視てもらうということだけでカウンセリングの効果になったと思うが、これが悪質なカルト系の団体だったら、けっこう危なかったかもしれない。まあ、当時から貧乏でそういうのに貢ぐ財産もなかったので、変な壷やら買わされるような目には遭わずに済んだ。
今でも私は否定派ではない。あくまで懐疑派であり、超能力だってエイリアンクラフトだって霊(残留思念)だって存在する可能性はあると思っている。しかし、テレビのバラエティ番組に出るような超能力者は、私のような素人でもアヤシイと思うような連中ばかりである。大体ツッコミを楽しむために見ているようなもので、とても信用するに値しない。最近流行の占い師も似非だらけだ。そもそも、どこぞのオバハン占い師みたいに「死ぬ」とか「地獄に墜ちる」とか脅すのは、占いではタブーとされているのだ。例え死相が出ていても、それを本人に決してストレートに告げてはいけない。出来るだけ言葉を選んで、注意を促すべきなのだ。ゲストの無礼にムカつき腹いせに脅すなんて、それだけで似非占い師と呼ぶに値する。
さて、本題のこの本だが、夕帆ちゃんとその友達の勇馬君が、夕帆ちゃんのお父さんに超能力番組について色々教わり自分たちもトリックを見抜く練習をするという、対談形式となっている。すでにお気付きの方もおられるとおもうが、夕帆ちゃんはUFO(未確認飛行物体)勇馬君はUMA(未確認生物)のもじりである。ここまで来ると夕帆ちゃんの苗字「名原」と勇馬君の苗字「糸瀬」にも何か意味がありそうだが、まったく思いつかない。
対談形式なので、とてもわかりやすく、また小学生でも高学年なら読めるように、読みにくい漢字にはルビをふってあるので、その年齢なら充分読める本である。
しかし、このようなヤラセ超能力番組がシリーズ化して作られ、その怪しさに気づかず視聴率が上がるのもどうかと思われる。ロマンを持つのは大事なことだ。しかし、そのために詐欺師の食い物にされたのではたまらない。まあ実のところ視聴者の中の半数くらいは、ネタとしてツッコミを入れながら見ているんだと思うが、どうだろう。私たちは子どもの頃は恐ろしさで姉弟肩を寄せ合って見ていたが、今は各々ツッコミをいれながら楽しく見せてもらっている。
この本でレミィの夕帆ちゃんのパパが、「遠隔透視実験」をやって見えたもの(実はあてずっぽう)のなかに「緑色の橋のようなもの」「並んだ自転車」「モニュメント」「オレンジと白の看板」「水の流れている場所」「トンネルのようなもの」というのがあった。どれも良く見かけるものだが、特に水の流れている場所なら街中に沢山あるだろう。一番ポピュラーなのは溝だ。そして溝があるなら、おそらく暗渠もある可能性が高い。暗渠は「トンネルのようなもの」と判断しても差し支えないだろう。これだけで2つクリアする可能性がある。なかなか考えているものだ。
要するにリーディングの際に一般的なものをなんとなくぼかして言えば、当たる確率が上がるのは当然というわけなのだが、最近ではもうひとつ忘れてはならないことにインターネットの普及がある。検索すれば多少の土地情報ならそこに行かずして知ることができる。特にグーグルアースという便利なツールが出来てから、彼等はもっと「仕事」がやりやすくなっただろう。出演する「超能力者」達には、間違いなく事件の内容については知らされているだろうから、前もって充分予習して来ている事も充分考えられる。以上のことから彼らのリーディングが多少当たっていても、不思議ではないのである。ましてや番組スタッフが味方についているのだから、もう恐いものなしだろう。
ところで、この本のツカミとして、雲を消す「超能力」を持つオッサンのことが書いてあるが、これなど地震雲騒ぎと同じように、如何にみんなが空を見ないかよくわかる事象だと思う。雲というものは常に沸き立ち消えていくものなのである。消えないまでも、面白い形をした雲を見つけて人に教えようとした時には、すでに全然違う形になっていることは、誰しも経験があると思う。
試しにここで別の「超能力」実験をしてみよう。出来るだけ無風の状態の時、外に出て「風よ吹け!」と念じてみるのだ。すると少しすると風が吹いてくるのがわかると思う。風の強弱は様々だが、必ず風は吹く。要するに全く無風の状態など有り得ないから、念じようが念じまいが風は吹くのだが、この「雲を消す超能力者」のように、何度も繰り返し「成功」するとついその気になってしまうのだろう。まあ、風本体は見えないものなので、ビジュアル的にはテレビ映えしないのだが。ついでに言うと、これは風を「吹かせる」方の専門であって、「止める」事は出来ないので悪しからず(笑)。
でもまあ、「雲を消す」「風を吹かせる」程度なら他愛ないカンチガイですむ。しかし、この本で指摘されていることは、それではすまない洒落にならないものだ。「有り得ないだろう~。」と笑いながら見る分はかまわないが、行方不明者や殺人犯を捜す企画についてはそうはいかない。被害者の家族は、藁をもすがる思いで恥を忍んで依頼しているのである。それをいい加減な透視で希望を持たせたり、逆に奈落に突き落とすような事をいうのは正に人外の所業であり、番組制作者側の悪質さは、今だヤラセ問題を引きずっている「あるある大事典」をはるかに凌駕するものである。失踪事件自体が番組の創作である場合はそれより罪は軽いが、それはそれで悪質なのに代わりはない。
昨日「あるある大事典」についての謝罪が15分程の時間をさいて放送されたが、彼等を責めるなら、「テレビのチカラ」や「FBI超能力捜査官」等の超能力番組や、一時期ほどの勢いはないが今もそれなりに視聴率を取っているらしいあのオバハンの番組に対しても、追求の眼を向けるべきだと思う。あ、オーラもあったか。特に「これマジ!?」や「TVのチカラ」などでヤラセ番組を大量に放映し続けたテレ朝に、関テレをどうこう言う資格はない。ところで「TVのチカラ」という番組は、最初は事件の詳細を再現し、視聴者からの情報を集めるという内容の公開捜査的な番組だったような記憶がある。いつごろから超能力捜査のテコ入れが入ったのだろう。
このような番組がヤラセ満載で作られるのは、そういうものを真に受け喜ぶ視聴者のメディア・リテラシーの低さにも責任があるのだ。悪質ヤラセ番組に騙されないように、是非、この本を読んで欲しいと思う。
何度も言うが、テレビはウソばっかりつくものなのである。
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