おたふくかぜ(ムンプス)の話
※注意:今回真面目なタイトルに似合わず下品な内容が含まれます。
妹の友人(女性)がおたふくかぜに罹ってしまったらしい。大人になって罹るとヤバイといわれている感染症である。正式名称は「流行性耳下腺炎」、病原体はムンプスウイルスである。
おたふくかぜやはしか(麻疹)のように、罹るなら子供の時にやってないと大人になって罹った場合重症化するものがあるが、特におたふくかぜが何故ヤバイといわれるかというと、「大人になってから罹ると子種が無くなる」ということを昔からいうからである。
おたふくかぜは、ウイルス感染後風邪の初期の様な症状を経て、耳下腺の腫れなどの特徴ある症状が出る(両方の耳下腺が腫れた場合におたふく的な容貌になるのが俗名の由来なのは、今更書くことでもないだろう)。ただし、感染者の30%くらいは発症しないらしい。いずれにしろ免疫がつくので、2度とおたふくかぜには罹らない。2度以上罹ったという人は別の耳下腺が腫れるような感染症に罹ったのである。また、反復性耳下腺炎という、何度もおたふくかぜ様の症状をおこす病気がある。
予防はワクチンが有効である。詳しくはリンク先を読んでもらうとして、もう一つおたふくかぜと似たような症状の病気がある。唾石症というもので、唾液腺に結石が出来たものだ。これも耳下腺当りが腫れて似たような症状になる。実は子供の頃これに罹ったことがある。やはりおたふくかぜと診断されて学校を一週間休むハメとなった。しかし、顔の腫れは退かず熱も大して出ないので不思議に思っていたら、知り合いから唾石症のことを教えられて、耳鼻科に行ったらまさにそれだったらしい。喉の腫れとともに口内炎も出来ていて痛かったのだが、それが結石であり、病気の原因だったのだ。すぐに手術することになったが、手術と言っても舌の付け根(にある唾液腺)に出来た「口内炎」を切開して石を出すだけの簡単なもので、椅子に座って麻酔もなしですぐに終わった。痛かったんだと思うが痛みの記憶はない。その後、左大腿の出来物に膿がたまった時も麻酔なしで処置されたので、昔は多少のことでは麻酔はしなかったらしい。まだ敗戦から20数年しか経ってなかった時代である。
その石は米の半分くらいの大きさで、そこの病院の資料として小さい瓶にいれて保管された。ひょっとしたらまだ資料室の片隅にひっそりと置いてあるかもしれない。
さて、諸兄諸姉のみなさんの関心は、果たして大人になって(正しくは思春期以降に)罹ったおたふくかぜは本当に子種をなくすか、という問題であろう。
ムンプスウイルスは、感染後リンパ節で増殖し、その後血液に乗って体中に広がり、唾液腺(耳下腺等)・すい臓・精巣・卵巣といった腺組織および髄膜に炎症をおこす。問題は精巣に炎症をおこした場合である。
ムンプスウイルスに感染しても30~40%の人は発症しないという。で、精巣に炎症をおこすのは感染者60~70%のうちの10~30%の男性だ。しかも、ほとんどの場合片方だけなので、不妊になる確率は少ないものと思われる。しかし、パンパンに腫れて相当痛いらしい。女性の場合卵巣炎をたまにおこすことがあるらしいが、頻度は非常に少なく、また、不妊になるようなことはまずないそうである。因みに卵巣も精巣も、男女に分化する前は同じ臓器だ。それからムンプスウイルスには催奇形性はないらしいが、妊娠初期の場合は流産する可能性があるので気をつけよう。
結論を言うと、おたふくかぜで「子種を失くす」というのは間違いではないが、その確率はかなり低いということだ。タマにタマがぱんぱんに腫れてえらい目にあう人がいるが、炎症はだいたい片側だけなので不妊になることはまずない。タマタマ両方のタマが炎症をおこした人がタマタマ運が悪かった場合、不幸にも不妊になってしまうことがあるというわけだ。ムンプスウイルスに感染した場合、両方のタマが腫れる確率は多く見積もって感染者の6%である。ただし、両のタマが炎症をおこしても必ずしも無精子症になるとは限らないのである。
しかしながら、少しでも可能性のあるリスクは避けたほうがいい。もし、あなたがまだムンプスウイルスに免疫がなく、お子さんがまだ児童の場合は、子どもがもらってきたウイルスに感染する可能性がある。出来るだけあなたもワクチンを接種していたほうがいい、ということだ。
おたふくかぜの死亡率は0.1~0.3%、後遺症として時に聴力を失うことがあるらしい。病名がユニークなわりに、意外と侮れない感染症である。
【おたふくかぜリンク集】
http://www.harenet.ne.jp/senohpc/disease/mumpsd.html
http://homepage2.nifty.com/oyako/mypages/disease_mumps.html
http://www2.ocn.ne.jp/~toyamate/otafuku.htm
http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/infection_inf/mumps1.htm
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コメント
こんばんは~♪^^
おたふく風邪‥子供の頃にかかったの覚えてます。
あまりの腫れに、何度も何度も鏡を見ては、見る度に
。°°(((≧△≦)))°°。 びぇ~んって泣いて‥
最後にはそれを見て母達に笑らわれていたのまで覚えてますよ~><
大人のおたふく風邪‥そういうことだったんですね~勉強になりました~。
投稿: ココロ | 2006年7月14日 (金) 19:30
おたふく風邪、うちのチビもらって来ましたよ。
何でもすぐに貰って来る。
たまには、断って来い!っつーの。
おまけに、髄膜炎までなって一週間の入院生活。
小さいので親も一緒に入院隔離。は~。
予防接種しとけば良かった、とつくづく思いました(-_-;)
その上病院では、何でも親に決めさせるのよ。
髄液抜きますか?氷枕いりますか?
血液検査しますか?
自分達で臨機応変やってくれ!
何のために医者がいるんじゃ!
さんざんだったよ・・・・(ーー;)
投稿: しなさん | 2006年7月15日 (土) 01:08
ココロさん、
レス遅れてすみません。昼間は暑くてとてもパソコンに座ってじっとしてる状態じゃなくて・・・。
会社はいやだけど、冷房があるのでそれだけが長所です。
おたふくかぜってそんなに腫れるんですか。私はナンチャッテおたふくかぜだったんで、どんな状態になるのかわかりません。出来たら一生知りたくないですwww。そういえば弟妹も罹ってなかったような気がします。はしかと水疱瘡ならやりましたが。水疱瘡をやったので、今後ヘルペスになる可能性はありますから気をつけんと(笑)。
私もおたふくかぜは必ず「大人になって罹ると子種がなくなる」って思ってたので、そうではないと知って少し安心しました。って、私にはもはやどうでもいいことやがなあ(爆)。
投稿: 黒木 燐 | 2006年7月15日 (土) 23:31
おたふく。。。長男が年長の時に、ワタシがもらいました~。30過ぎで、おたふくというよりホームベース型に腫れあがった自分の顔が 情けなかった。。。薬が切れると 身の置き所が無いほど痛かった上に、長男にはうつらなかった。記事によると30%は発症しないとのこと。。。どうか 無事感染していますように!
投稿: さるる | 2006年7月15日 (土) 23:41
しなさん、
あらら、息子さん、髄膜炎にまでなっちゃいましたか。
そういうところが怖い病気ですよね。大事無くて何よりでした。
医者もいろいろクレームがつくので大変なんじゃないでしょうか。まあ、中には無責任なだけの先生もいるでしょうけど。良かれと思ってやったことで何かあって責められてはかなわないみたいな。
それにしても氷枕のことまで聞かれえるなんて、異常やねぇ。髄液抜きますかって、抜かんとアカンのとちゃいますかねえ。
ワクチンも副作用の心配があるものもあるし、気軽に受けていいのかとか思いますが、おたふくかぜのワクチンは副作用が少ないみたいですね。
投稿: 黒木 燐 | 2006年7月16日 (日) 00:07
さるるさん、
妹の友人もかなり腫れて、ものすごく痛かったそうです。唾液を飲み込む以前に唾液が出ただけで痛かったとか。梅干なんか思い浮かべた日には大変辛いことになりそうです。不妊以前に出来たら一生罹りたくない病気ですね。
さるるさんの感染源が息子さんだったのなら、息子さんは感染して発症しなかった可能性はありますね。
検査をすれば免疫が出来ているかどうかわかるようですが、病気ではない検査だけだと高くつきそうです。
投稿: 黒木 燐 | 2006年7月16日 (日) 01:15