手(けっして夜中には読まないで下さい)
友人が開設していたブログを閉じて記事も破棄するという。もったいないのでとっときのこわい話をコピペでここに掲載させてもらうことにした。
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これは、友人が同僚から聞いた話です。もう10年以上前の話だそうです。
当時、彼女-仮に「美幸」と呼ぶことにしましょう-美幸さんは大学を出たばかりの会社員でした。
彼女はいつも少し早い時間の電車に乗っていました。
その後の電車に乗れば丁度よい時間に会社に着くのでしたが、それは超満員で、おまけに彼女は入社したての頃痴漢に遭うという嫌な思いをしたので、今の電車を利用するようになったのでした。
その電車は何故かラッシュ時にしては不思議と満員ではありませんでした。
もちろん、ラッシュ時ですからそこそこには混んでいます。だけど、前後の電車は身体が動かせないほどぎゅうぎゅうに混んでいるのです。まあ、そういう時間帯なのだろうと美幸さんは納得していました。
その日は朝から大雨でした。6月も終わろうとしていましたが、その年はいわゆる空梅雨で、久しぶりの大雨でした。まるで今まで溜め込んだ水を吐き出すかのような・・・。
(雨の日の電車は独特の雰囲気があるな)
電車に揺られる通勤者の群れの中に埋もれながら、彼女は思いました。
(それに窓も曇って水滴がたれてくるし、床もべちゃべちゃで、皮膚もなんかべたべたして嫌だなあ。なんかひといきれまでうっとおしいし。それに半端に満員って安定悪いよね。)
それでも20分の我慢だ、と美幸さんは気を取り直しました。その時急ブレーキがかかり、よろけそうになった彼女はとっさに手を伸ばしてバーにつかまって、何とか倒れそうになる身体を支えました。
電車の中が急にざわつきはじめました。人々のざわめきの中から、何人かの「また?」という声を彼女は聞き漏らしませんでした。
(また・・・?)彼女は奇妙に思いました。
「ただいま、線路に人影を確認しましたので、安全の為急停車いたしました」
車内にアナウンスが響きました。
その時です。彼女の脚に何かが触りました。足元に何かがいる気配がしました。(誰かの手だわ!)彼女は咄嗟に思いました。
(こんな時に痴漢しようだなんて、なんてヤツ!!)
かっとした美幸さんはその不届きものを見届けてやろうとそっと振り向き足元を見ました。すると―
確かに足元には手が、まるで何かを探すようにうごめいていました。
でも手首から上のほうがどうしても見えないのです。手だけが床をはいずっているのです。
恐ろしくて彼女は声も出ませんでした。
手は、すうっと人の足の林の中に消えていきました。いえ、本当に消えたように思えたそうです。
「急停車いたしましたが、異常はありませんでしたので発車いたします。お急ぎのところまことに申し訳ありませんでした」車内アナウンスが終わると電車はゆっくりと走り始めました。
彼女は今見たことが信じられずに呆然としていました。他の乗客は「それ」に気がついた様子はないようでした。
会社に着いた美幸さんは、一日中気分が悪く脚にはあの手の感触が残って怖くて仕方がありませんでしたが、実のところ自分が見たのが現実だったのか錯覚だったのか、よくわからなくなっていました。
それで夕方、湯沸し室で片付けをしているときに思い切って一緒にいた先輩に聞いてみました。先輩は、ちょっと黙っていましたが、「これは聞いた話なんだけど。」と前置きしてゆっくりと話始めました。
なんでも、数年前の大雨の日に男の人が電車にはねられて亡くなったこと。その時もやはり梅雨の時期だったこと。自殺だったこと。遺体は電車に轢かれた割には状態もよく、遺体回収は比較的楽だったようだが、右手首から先だけは、何故か見つからなかったこと。その後その時間帯の雨の日に線路内に人影を見て急ブレーキをかけることがあったり、手だけが電車の床を這っていたのを見た乗客が何人か出て、ちょっとした怪談騒ぎになり、今でもその時間の電車を避ける人が多いのだということ。
美幸さんは、電車の中で見たモノを思い出して悲鳴を上げて倒れてしまい、それから一週間くらいどこにも行けず、会社も休んだそうです。家の人が心配してとうとうお払いまでしてもらい、ようやく出社できるようになったらしいのですが、しばらくお母さんに送迎をしてもらうことになり、とんだ散財だったんだよ、やっと話せるようになったんだけど、今でも時々手の感触を思い出してぞっとするし、雨の日の電車も怖いんだよ、と美幸さんは笑いながら言っていたそうです。
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コメント
前置きしてくれたおかげで助かりました。
周囲に4猫を配置して、完全猫武装で読みました。
こういう「足つかまれモノ」、めっちゃ苦手です。
なので、真夏でもキチンとお布団をかぶって寝ます。
今日みたいな梅雨時の電車は、空気が悪いので嫌いでした。
これからは、もっと嫌いになりそうです (涙)
投稿: 猫だぬき | 2006年6月15日 (木) 13:35
うわ~、これは怖い!
私も時々怖い体験談を公開したりしてますが、ここまで怖い目に
あったことはないです・・。
幸い、昼休みに会社で見ました。夜じゃなくて良かった~。(^^)
投稿: wanwanmaru | 2006年6月15日 (木) 22:00
猫だぬきさん、
私も夜足をつかまれたくないので、布団はともかく暑くてもベッドから脚を出さないようにしています。まあ、猫たちがぴったりとひっついて寝てくれるので、妙なものは寄って来ないような気がしますが。
雨の日の乗り物は、電車に限らずバスも船も嫌ですね。変なにおいがするし。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月15日 (木) 23:28
夏休みの昼にTVでやってた「あなたの知らない世界」でさえ一人で見れなかった私は人一倍怖がりです。
そのわりに怖い話には興味があったりします。
ホラー映画は観ないのですが、一度レンタルで「女優霊」というのを借りて一人で観たときは、数日電気をつけたまま寝てました。
というわけで今回のエントリーは心構えを十分にし、怖くならない状況で読んだので、それほど恐怖は感じませんでした。雨の日には私も少し怖い体験があります。
投稿: 天そば | 2006年6月15日 (木) 23:48
むう、わしはぜんっぜんこういうのにぶち当たった事がありまへん。
居るモノなら見てみたいのですが、どうもみんなわしを除けておるかのようです。
わしは魔除けのお札か?!
投稿: 眠り猫 | 2006年6月16日 (金) 01:03
wanwanmaruさん、
wanwanmaruさんとこの話も怖いですよね。
私は例の社宅以外では幸いたいして怖い目にはあってません。
この話はよりによって深夜UPしたので、読み返した時さすがに背筋が寒くなりました。アクセス解析をみますと、1時から3時の間に24ほどアクセスされてました。丑三つ時にアレを読むのはキツかったかも・・・。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月16日 (金) 01:34
天そばさん、
そうそう、あと水曜スペシャルとか木曜スペシャルとかの怪奇特番もよく見てました。当時は本気にして見ていたので、すごく怖かったです。変化する絵とか、チューリップ階段の心霊写真とか・・・。最近そういう特番をみても、こっちがすれっからして爆笑しながら見てしまいます。それはそれで面白いのですが。
私は最近どっちかというと懐疑派ですが、心霊にしろ超能力にしろ宇宙人にしろ何かはあると思ってます。ロマンのかけらが欲しいのです。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月16日 (金) 01:43
眠り猫先輩
心霊に嫌われる女・・・。なんだか青池保子先生みたいですね。犬鳴峠で一晩キャンプを張ってみるとか・・・。私はようしませんが(笑)。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月16日 (金) 01:46
旦那が怖い話大好きなんで、読み聞かせながらだったせいか平気でした(笑)。元々、全然こういう経験が無いし霊を感じる等も無いし、何より”ホントにいるなら正体確かめてやる!”っと、好奇心と強がりに勝てない方なんで(笑)猜疑心いっぱいな為気になりません( ̄▽ ̄;)今年に入って1度不思議な体験はあったけど1日限定だったようで(笑)確かめられないまま・・・。霊よりも、生きてる人間の方が私はよっぽど怖いです(;¬_¬)
雨の日の電車の、あのカビがはえちゃいそうなジメジメ感は嫌デスネ(泣)。
投稿: wing | 2006年6月16日 (金) 03:17
>心霊にしろ超能力にしろ宇宙人にしろ何かはあると思ってます。ロマンのかけらが欲しいのです。
私もそうです。
オカルト好きで片付けられそうですが。
投稿: 天そば | 2006年6月16日 (金) 07:33
wingさん、
>何より”ホントにいるなら正体確かめてやる!”っと、好奇心と強がりに勝てない方なんで
まあ、一番の敵はパニックでしょうからね。
しかし、事実か否かはわかりませんが、話的には良くできてるんですよ、この「手」という怪談は。典型的なフォフ(FOF。friend of friend-すなわち友達の友達-の略)だしね。最初に怪異があり、後で因縁が発覚するという王道でもあります。
>霊よりも、生きてる人間の方が私はよっぽど怖いです
激しく同意いたします。
因みにお腹が痛くてトイレ目がけて血相変えて走っている時は、目の前に血まみれの女性が立っていようが白い影がオイデオイデしていようが、蹴散らして行くような気がします(爆)。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月16日 (金) 12:52
天そばさん、
いま、と学会などで論客をやっている人たちも元々そういう話が大好きな人たちですからね。何故かほとんどの人が、佐藤有文の妖怪図鑑にいっぺん騙されているんですよ。自分もそうです。なんか変な日本語みたいな妖怪名やな、とか、この絵、先のページにあった図版に似てるなとかは思ってたんですが、深く考えなかった。だいぶ創作妖怪が入っていたみたいです。
まあ、あれはあれで面白かったから私は許してますが。
今でも怪奇特番はしっかり録画して見るし。
あ、チューリップ階段の霊の写真、ここにありましたよ。
http://2.csx.jp/~smx/soreike/spotsp-2.html
(下の方)
なんか懐かしいですね。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月16日 (金) 13:01
こんばんは。写真どうもです。
佐藤有文の妖怪図鑑は残念ながら見た事がありません。心霊写真なんかもなるべく見ないようにしてました。
チューリップ階段の写真も初めて見ましたが、これはかなり怖いです。正直こういうのはダメです。私は怖くなると暗い所で後ろを振り返れなくなるのですが(でも振り返りたい)、そんな気持ちになりつつあります。拡大してみるんじゃなかった~><。
投稿: 天そば | 2006年6月16日 (金) 18:11
天そばさん、
安心して下さい。
あの頃の心霊写真はだいたいがニセモノですから。特に英国人はそーゆーのが大好きですからねえ。
っていうか、今の心霊写真もあまり変わらねぇか(笑)。ほとんど思いこみかこじつけか「貼ったね」だもんなあ(爆)。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月16日 (金) 18:30
ベッドから足がはみ出すなんて、絶対ダメですよね。「あの世」へ連行されます。
猫たちは、横にいてくれると心強いんですが、ときどき4猫がいっせいに壁の一点を見つめて、なんにもないはずのところに向かってヒゲをピクつかせてたりして、かえって怖い思いをしたりする…。
あなたの知らない世界は怖かったですね~。私も見たくないのに見てました。で、トイレに行けなくなってました。なんとかイワオって人の名前を見ただけで怖かった。今でもイワオって名前の人に出会ったら警戒するかも…
あと、昼の番組で「心霊写真のなぞを解く」かなんかいうコーナーがあって、プロの写真家が、視聴者から送られた心霊写真のトリックを、次々に暴いていくというものだったんですが、その写真の怖いこと怖いこと…。トリックだと分かっても怖かった(涙)
それより怖かったのは、ときどき出る、「どう考えても分からないですね。これはホンモノの心霊写真です」という結論。
ちょっとしたパニック状態になれました。
でも今考えたら、仰るとおり、生きてる人間のほうが100倍コワイですね…
投稿: 猫だぬき | 2006年6月18日 (日) 13:52
猫だぬきさん、
猫は確かに心強いです。犬もそうだけど。
>ときどき4猫がいっせいに壁の一点を見つめて、なんにもないはずのところに向かって・・・
時々見てますね。
オカルト板のスレにこんなのがありますよ。
猫だけに見えるもの
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1148736698/
ほとんど猫萌えスレですが。
「あなたの知らない世界」は新倉イワオですね。
たしか脚本家か放送作家だったのがいつの間にか「心霊研究家」に肩書きが変わったりした中岡俊哉の後釜みたいな人。
しっかし、仮にも「プロの写真家」が、わからないからといって「心霊写真」と言い切るのはいかがなものかと。せめて「不思議な写真」くらいにしとけと(笑)。
それでも当時の私はホンモノと言われて妙に嬉しかったような記憶があります。
投稿: 黒木 燐 | 2006年6月18日 (日) 18:51