3.暗雲 (9)ビジーディ
話は少し前に戻る。
「ジュンは、この遺体を見て帰っちゃったんですか?」
ギルフォードはガラス越しに解剖を終えた遺体を見ながら言った。横に立っていた九木が苦笑いをして答えた。
「ああ、さすがにダメージが大きかったらしくてね。連れの富田林君の方は復活が早かったが、おもりを兼ねて一緒に帰らせたよ」
「そうですか。ジュンらしいと言えばジュンらしいですが、僕は会いたかったのに残念です。で、結局ジュンにも誰かわからなかったんですね」
「まあ、君はともかくとして、写真で顔を見た私だってこれが渡部と言う男かどうか判断つきかねたからね。私も人の顔の判別は得意な方なんだが」
九木はそこで肩をすくめると続けて言った。
「しかし、おそらく篠原由利子が見てもわからなかっただろうね」
「おや、どうしてですか」
「これは想像だが彼女は、顔の造作もだが、多分相手の目玉も判断基準にしているんだ。どんなに整形しても、年齢を重ねても、それだけは変わらない。警官が訓練して習得する技術を、彼女は本能的にやっているんだと思う。たいしたもんだよ」
「なるほど」
とギルフォード。
「これだけ形相が変わって、目も腐ってれば、由利子にもお手上げってことですね」
「まあ、多分と言うことだがね。それ以前に女性には見せたくない代物ではあるな」
「ええ。ですから、秘書も待合室に置いてきました」
「正解だな」
「あらゆる部分が派手に膨れ上がっていますからねえ・・・」
と、こんどはギルフォードが肩をすくめ、口をへの字に曲げた。
「それにしても、なんで不法投棄の家電の中に入ってたんでしょうか」
「さあてね。もし例のひったくりの片割れとしたら、何らかの悪意を持った理由があったんだろうが、何の関わりのない感染者の可能性もある。森田健二は県道まで約800mの道のりを歩いたそうだから、何かから逃れようとした挙句の行動だったのかもしれない。いずれにしろ迷惑な話ではあるし、地主にとってはとんでもない災厄には違いないよ」
そこまで話した時、解剖を終えた法医学者と高柳が世間話をしながら歩いてきた。法医学者がギルフォードの顔を見るなり笑顔で呼びかけた。
「ギルフォード君、久しぶりだね」
「おや、カツヤマ先生。久しぶりって、最近はけっこうお会いしているし、F駅の『自爆』遺体の司法解剖の時もお会いしたじゃないですか。まあ、あの時はとてもお話しできる状況じゃありませんでしたが」
「ははは」
勝山は笑った。しかし、笑いに力がない。
「今日も、事件性があるというので司法解剖に呼ばれたんだがね」
「まあ、前みたいに大学の法医学教室でするわけにはいきませんからねえ」
「夕方、立てこもり犯の解剖が終わって、さて帰ろうかと思った矢先にこの仏さんだ。しかもご覧のような大物でね。アウェーの作業でもあるし、いささか疲れたよ。今、昨日亡くなったお嬢さんのご遺体も見せてもらったんだが、痛々しくて見るのが辛かったよ。かわいそうに。これからもこういう遺体が出るのかと思ったら、やりきれんよ」
(”なるほど")
ギルフォードは思った。
(”だから元気がねぇのか。しかし、この先生が音を上げるなんて、相当なことだな”)
「それで、この仏さんに関する先生の見解は? ひったくり犯の渡部との整合点はありましたか」
と、すかさず九木が聴いた。
「詳しいことは(遺体)検案書を読んでもらうとして、かいつまんで説明しよう」
勝山は、そう前置きすると、続けた。
「年齢は20歳から40歳くらいだな。ご面相については、ああいう状態なので見た目では判断しがたい。指紋掌紋は、手足の皮膚がごっそり脱落しているため、採取不能だった」
「皮膚が? まさか身元を隠すために・・・」
「いや、体幹の方にもそれが見られたから、おそらく病気のためだろう」
そこに、ギルフォードが口を挟んだ。
「僕もそう思います。ウイルスの増殖で皮膚が壊死して剥がれるんです」
それを聞いて、九木が驚いて聞き返した。
「それは君の経験なのか?」
「ええ、まあ・・・」
「凄まじいな。じゃあ、残る身元確認は歯型・・・か。まさか歯まで全部抜けていたなんてことは・・・」
「それが、抜けていたんだ」
と、勝山。
「ええっ?」
「まあ、一部だけどね。20代半ばで既に前歯が上下ともインプラントだった。上顎が4本、下顎が2本だ。ひと財産だな。喧嘩か事故で歯を折ったんだろう」
「若い男の強い歯が根っこからですか?」
「事故のショックで歯が抜けてすっ飛んで行くこともある。上下一緒ってのはあまり聞かないが」
と、今まで黙って話を聞いていた高柳が補足した。
「・・・あと、麻薬やシンナーの常習でも歯が弱るからね。そういう複合的な要因からじゃないかな」
「なるほど。やはりこの仏さん、堅気ではない可能性が濃いですな」
九木が納得して言った。勝山はそれに頷き、話を続けた。
「渡部の歯科の資料が来たら、すぐに照合できるだろう。だが別人だったら厄介だね」
「その可能性を含めて、今、行方不明者との整合も合わせてやっていますよ。一刻も早く特定しないと、しかし、まったく新しい感染者なら、また新たな感染ルートがあることになりますから、確かに厄介ですな」
「それと、もう一つ。遺体の状況から死亡日時の割り出しは難しいが、まだ息のあるうちに冷蔵庫に入れられたのは間違いないね」
「確かに、庫内には男の体組織が何か所か付着してましたが、それは死後、膨張したせいだと・・・」
「体に庫内で暴れたような形跡が見られた。手や膝や額の皮膚や肉が若干磨滅していたよ。必死で出ようとしたんだろう」
「惨いことを・・・」
「例え、命の火が消えかかっていたとしても、生きようとするのが生物の性なんだと思い知らされたよ。さて、いささか疲れたんで、そろそろ解放してもらっていいかね。いい加減こっちにも監察医制度の導入をして欲しいよ、まったく」
勝山は最後にそうぼやくと、また高柳と連れ立って歩き始めた。
「ありがとうございました。お疲れさまです」
「オツカレサマ」
二人が勝山の背に向かって言うと、勝山が振り返って一礼し、またすたすたと歩きだした。去って行く二人を見ながら、九木が半ばつぶやくように言った。
「勝山教授か・・・。彼が最初に感染者・・・指針症例とみられるホームレスを司法解剖して異変に気付いたのだったな」
「ええ、そうですけど・・・」
「何故彼は、そんなことをしたんだろう」
「何か問題が?」
「ホームレスなんて、多少死に方に問題があったって司法解剖に回されることなんてめったにない。この国ではな」
「え? そうなんですか」
「欧米に比べて立ち遅れているんだ。犯罪者にとっては天国だな。警察の怠慢を言われればそれまでだが、現場で事件をかけ持つとな、なかなか大変でね・・・」
九木はそういうと、自虐的な笑みを浮かべた。
「カツヤマ先生は、依頼されたと言ってました。貧乏くじを引かされたと嘆いてましたが、そういうわけだったのですね」
「貧乏くじか・・・」
九木はそうつぶやくと、今度はふふっと含み笑いをした。
その頃、九木と同じ疑問をもった人物がいた。めんたい放送の美波美咲である。
美波は帰りの電車の中で、件のサンズ・マガジンを読んでいた。誰よりも前向きで負けず嫌いな彼女は、すでに痛手から立ち直り、気持ちを次のステップに切り替えていた。
金曜の夜とはいえ、10時すぎるとFI駅を下った後の普通電車はめっきりと人が減り、一車両に人がまばらに座っているだけだった。その車両はボックス席の新型車両で、美波は4人掛けの席に悠々と一人で陣取っていた。なんとなく旅行気分で窓の桟(さん)に缶ビールを置き、時折飲みながらの読書だ。
(何これ、ひどい記事やね。さすがタブロイド紙。私ならこんな切り込みはせんけど。それに、もっとちゃんと裏を取ってからじゃないと、記事には出来んやろう。しかも、容疑者の証拠もない人物を怪しいと勝手に決めつけて写真まで載っけてから。人権侵害ものやん)
美波は半分読んだあたりで、呆れていた。しかし、話としては面白く、すぐにその記事を読み終えた。
(確かに、このウイルス災害は謎の部分が多い。やっぱり私、この事件を追ってみよう。私が一番引っかかっているのは、この事件の発端。最初に感染したホームレスから病気が発覚したので、比較的早めにウイルスの発生がわかったのよね。それがなきゃ、未だにサイキウイルスの存在は知られてないかもしれない。でも、あまりにも出来すぎていない?)
美波は、以前取材で司法解剖の壁にぶち当たって悔しい思いをした経験があった。それで、ウイルスの告知があった時から疑問に思っていたのだ。
「そもそも変よ。偶然司法解剖に回されたホームレスの遺体から、感染症を疑うなんて。出来すぎだわ!」
「いよお、ねえちゃん。さっきから何をぶつぶつ言いよぉと?」
そう言いながら大柄な若い男が近寄ってきて、美波の真横に座った。鼻ピアスにアーミーベストをつけ、脱腸かと見まごうほどのローライズのアーミーパンツをはいたその男は、いかにもチンピラと言った風情で、しかもかなり酔っぱらっていた。
(いやだ、いつの間にか声に出しとったっちゃね。しかし、変なのを呼び寄せちゃったなあ・・・)
美波は身の危険を感じて、体を座席に縮ませた。
「おねえちゃん、ちょっと遊ぼーや」
「ごめんなさい。あんたとはちょっとムリ」
「ムリ? お高くとまってんねえ」
「人を呼ぶわよ」
「人? あれえ、この車両、誰もおらんごとなっとるけどなー」
「じゃあ、110番するだけよ」
美咲は出来るだけ平静を装い、携帯電話を出してかけようとした。だが、男は美波の手を掴み携帯電話を取り上げ、床に投げ捨てた。
「何すんのよ、やめて!」
「すぐに終わるからさー、ちょっとだけ仲良くしよーよ」
そう言いながら男は窓のブラインドを下ろすと、美波に襲い掛かった。
「やめて、誰か、助けて、いえ、車掌さん呼んできてっ!」
「うるさいな」
男は面倒くさそうに美波の口を塞ぎ、アーミーベストのポケットから大型のカッターナイフを出して、美波の頬にあてた。先端が少し当たって、頬に一筋血が流れたのがわかった。美波は恐怖で身動きできなくなってしまった。男はそれを確信すると、おもむろに美波のジーパンを下ろそうとボタンをはずしジッパーを下げた。
(もうだめか・・・)
美波は絶望した。明日のニュース、私自身がネタにされるんだ。それにしてもひどい一日だったな。しかもトドメにこれかよ。
その時、男の動きが止まった。誰かが彼の首根っこを掴み、美波から引き離したのだ。その救いの主は、さわやかな笑顔で言った。
「君、大丈夫?」
「はい! ありがとうございます」
「おじさんたちみんな逃げちゃって、ひどいよね。早く行きなさい。そして、車掌さん呼んできて」
「はいっ!」
襲撃者から逃れることが出来た美波は、素早く衣服を整えると後部車両に向かって駈け出した。途中美波は、バツの悪そうに美波から視線をそらそうとしたり、酔っぱらってだらしなく爆睡しているらしい男たちの姿を横目で見ながら、情けなくなった。あの人が来てくれなかったら、私はどうなっていただろう・・・。怒りと情けなさで少し涙が出てきた。それを手の甲で拭いながら、美波は揺れる電車の中を走った。
男は降屋裕己だった。彼も隣の車両で件の雑誌を読んでいたが、女性の悲鳴が聞こえたので急いでその方向に駆けつけ、美波が襲われているのを見てとっさに男を引き離したのだった。欲望の対象を逃がされた男の怒りは、当然降屋に向かった。男はカッターナイフの刃を最大限に出すと、降屋に向けた。
「てめえ、ぶっ殺してやる!! いいか、これだって人の首を切断するくらいの威力はあるんだ!」
男は怒鳴るや否や、降屋に突進した。しかし、降屋は素早く身を低くして切っ先をかわすと、反動を利用して間髪を入れず男を掌底で打った。一瞬、男の顔が妙な形に歪んだ。男は自分より小柄でやや細身の降屋にあっさりと殴られ、一瞬何が起こったかわからないようだったが、わからないまま前のめりに崩れた。恐怖で必死に這いずって逃げようとする男の首筋を、降屋は軽く手刀で打った。男は再び敢え無く床にうつぶせて倒れ、ピクリともしなくなった。しかし、背中が上下しているので死んではいない。
「伊達に長兄さまの護衛はしていないんでね。しばらく起き上がれんだろうから逃げる心配はないな。さて、美波美咲か。いいことを思いついたぞ・・・」
降屋はしゃがんで男の体を調べると、侮蔑の表情を浮かべ吐き捨てるように言った。
「シャブ中か。己を制することの出来ない、しかも、女性を欲望のまま襲うケダモノに生きる資格はない。地獄に落ちるがいい」
降屋はつぶやくと、ジャケットのポケットから黒いケースを出して、中からインシュリン注射のようなものを取だし、男の太ももに突き刺した。そして素早くそれをケースにしまってポケットに戻した後立ち上がり、もう一度男の腹を蹴り上げた。
「苦しんで死ね! 外道め! ついでにお前の仲間も道連れにしてくれると尚いいぞ」
降屋はそう言いながら、愉快そうに笑った。
美波が車掌を連れて戻った時、既に降屋の姿はなかった。無人駅に停車してちょうど電車が走りはじめた頃だった。
車掌は、床に転がった男を見て驚いて駆け寄ったが、息のあることを確認し、ほっとして立ち上がると美波に訊いた。
「こいつですか? あなたに乱暴しようとしたとは」
「はい。こいつがここに落ちているカッターナイフで脅して・・・。そこにあの人が来てくれて・・・って、あれ? あの人は?」
美波は狐につままれたような顔できょろきょろしていたが、車窓から道を歩く恩人の姿を見つけて指さして言った。
「あ、居た! あの人です!!」
しかし、電車は彼をすぐに追い越し彼の姿はあっけなく車窓から消えた。
「電車下りちゃったんだ。どうしよう。名前も聞いていないのに・・・」
「次のO駅に警察を呼んでますので、この男は逮捕されるでしょう。あなたの頬の傷が動かぬ証拠です。しかし、証人が居なくなったのはちょっと困るかもしれんですね」
と、車掌が残念そうに言った。美波は半ば呆然として言った。
「なんで居なくなっちゃったの? ちゃんとお礼もしたかったのに・・・」
「でもまあ、あなたに大事なくてよかったですよ」
車掌は美波を慰めるように言った。
葛西は何とか寮にたどり着き、とりあえず頭からシャワーを浴びた。例の臭いが染みついたような気がしたからだ。その後、部屋に帰るとばったりとベッドに倒れこんだ。
「ひどい1日だった・・・」
葛西はつぶやいた。
早朝からたたき起こされて空港まで呼びつけられた。それが前兆だった。その後、捕り物が2件と、多美山の仮葬儀。由利子のASD。今日の遺体3つ。そう、極めつけはあの3つ目の遺体の確認だ。
「詰め込みすぎだろう」
葛西はつぶやいた。しかし、あの遺体・・・夢に見そうだ、と、葛西は思った。しかも合間にジュリアスを見送った時の記憶が一部欠落している。
「疲れているんだ、きっと・・・。とにかく寝よう。寝るぞ!」
そう納得させると、葛西はギュッと目を閉じた。疲れていたせいで、葛西は難なく深い眠りに落ちて行った。
「なんか、ばたばたした1日だったなあ」
由利子が、風呂上りに髪を乾かしながらつぶやいた。
「はあ、これからこんな日がまたあるんやろうか・・・」
由利子は今日を振り返り、歌恋の死のところでまた胸がつぶれるような想いがよみがえった。
「あんな人を増やしちゃいけない。何としてもウイルスの拡散を防がないと・・・」
しかし、どうやって? 敵の正体すらわかっていないのに・・・?
由利子の胸に、もどかしさと怒り、そしてよみがえった悲しみが渦巻き、彼女は顔を覆い机に突っ伏した。由利子はしばらくそのままでいたが、不意に立ち上がって引出からノートを取り出すと、机に広げた。
「やみくもにジタバタしても無駄なだけだ。とにかく、今までの経過を整理してみよう」
由利子はそうつぶやくと、考えながらノートにペンを走らせた。
ジュリアスは、飛行機の中からだんだん遠ざかっていく日本の灯を見ていた。
彼はいったん大阪で降りて、大阪で暮らす旧友と会い思い出話に興じた。その後、夕方にシアトル行に乗る予定だった。いったんシアトルを経由して、ボストンへ飛び、とりあえず自宅のあるケンブリッジに帰る予定だった。しかし、発達した雷雲のせいで出発が大幅に遅れ、飛び立ったのは夜10時を過ぎてのことだった。
ジュリアスは、日本の灯を見ながら、この一週間のことを思い出していた。長く感じたが、振り返ると一瞬のことのようにも思えた。
懐かしい、第2の祖国、日本。そして今回、新たな思い出を胸にジュリアスは帰路に就いた。
(”由利子、葛西。君たちは最高だ。会えてよかった。紗弥、いろいろと世話してくれてありがとう。そしてアレックス。愛しているよ・・・”)
思いがあふれて、ジュリアスは小さい声でつぶやいた。
「おれが帰ってくるまで待っとれよ、みんな.」
ジュリアスは、そのまま窓の外をずっと眺めていた。
ギルフォードは、12時を過ぎてようやく自宅に帰りついた。
ジュリアスの去った後の自宅は、6月でありながら何となく寒々と感じた。覚悟はしていたし、状況は1週間前に戻っただけだ。今まで一人でちゃんとやってこれたじゃないか・・・。
しかし、再び恋人の温もりを得た身には、辛い夜になりそうだった。ギルフォードは、力なくソファに座ると、ぐったりと背にもたれた。そして、深いため息をついた後、思わずギルフォードは携帯電話を手に取った。しかしその画面は真っ黒だった。ギルフォードはまた携帯電話の電源を落としたままなのに気が付き、苦笑いをしながら電源をいれた。着信と留守録がそれぞれ2つ。一つはジュリアスから無事に飛行機に乗ったという知らせで、「愛してるよ」と言う言葉と、キスの音で終わっていた。ギルフォードは電話して声が聴きたいという欲求に駆られたが、眠っているだろうと考え控えることにし、次のメッセージを聴くことにした。もう一つの着信と留守録は、春風動物病院の小石川獣医師からで、美月が退院出来る程度に回復したので、今後どうするか相談したいとのことだった。
”ミツキ、良くなったのか・・・。これで一つ心配事が減ったな”
ギルフォードはつぶやいた。その朗報に、ギルフォードの表情が和らいだ。美月に関しては、ギルフォードに一つ策があり、それを思うと少し気分が明るくなった。
“とりあえず、シャワーを浴びて寝よう。今日は本当にいろいろありすぎた・・・”
ギルフォードは、そう言いながら立ち上がろうとしたが、起き上がることが出来ずに再びソファにもたれかかり、そのまま深い眠りに落ちて行った。
(「第3部 第3章 暗雲」 終わり)
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