5.告知 (7’)背徳者
【R18】注意
美葉が目を覚ますと、バスローブに着替え、紫煙をくゆらせながらテレビを見てくつろぐ結城の姿があった。美葉は横になったまま、室内を見回した。過度な装飾、そして天井に映った自分の姿・・・、レザーのタンクトップとアンダーパンツだけの姿で、毛布も掛けられずにベッドに寝かされている・・・。美葉はため息をついた。
「目が覚めたかい、美葉」
結城は美葉が目を覚ましたことに気がついて、ソファから立ち上がって彼女の方に近づいてきた。
「なかなか目を覚まさないんで、先に風呂に入らせてもらったよ」
「また、こんなところなのね」
「仕方ないだろう、『僕たち』はお尋ね者なんだからね。普通のホテルだったら怪しまれるどころか通報されてしまうだろ? しかも、おまえは眠ったままだったし。ここはガレージから直接部屋に入れるようになってたから、その点も都合が良かったしね」
そう言いながら、彼は美葉に近づいてきた。
「ま、もう少ししたら、仲間が僕たちの住む場所を提供してくれる手はずになっているから、それまでの辛抱だよ」
そう言いながら、結城はベッドサイドに腰掛けて、美葉の方に手を伸ばした。美葉は静かに、しかし鋭く言った。
「触らないで」
「おや、また今夜は特にご機嫌斜めで」
「あたりまえだわ。あんた、さっき私に何をした?」
「おまえが僕を馬鹿にして、笑い続けるからいけないんだ」
「そんなことで・・・」
「僕を馬鹿にする者は許さない」
「あんた・・・」
美葉は結城の言葉の中に狂気を感じて一瞬言葉を失った。
「僕は無敵なんだ。全人類を滅ぼすことだって出来るんだぜ」
「そんなことはさせないわ。さっきの警官たちは見抜けなかったけど、由利ちゃんなら、あんたがどんなに面変わりをしても、絶対に見つけ出すから。警察側に由利ちゃんがついている限り、あんたが逃げ切れることはないんだからね」
「篠原由利子、あの女がか?」
「そうよ。由利ちゃんはね、人の顔を覚えるのが得意なの。そうそう、いい事を教えてあげる。私ね、子どもの頃にも誘拐されたの。公には未遂ってことになってるけどね。まあ、ほかの子たちと違って早めに逃げ出せたけど、それでもけっこうひどい目にあったわ。今ほどじゃないけど」
美葉の告白に結城は少なからず驚いたようだが、彼女が忘れずに皮肉を交えた事に気がついてだまっていた。美葉はかすかに笑って続けた。
「だから私、ホントは男の人がすごく苦手だったの。何度か付き合ったことはあるけど、全部長続きしなかったわ」
「そうか、それで・・・」
結城は何か言いかかったが、美葉が眉を寄せたのを見て口をつぐんだ。
「・・・でも、あなたが現れて・・・。最初は由利ちゃんがやきもきするのが面白くて付き合ってみたの。でも、あなたは優しくて、一緒にいて安心出来たの。だからあなたなら大丈夫だって思えるようになったわ。でもその頃、私のおいたが過ぎて、由利ちゃんに絶交されちゃった・・・。だけど、あなたがいるから大丈夫だって思った。だから、あなたに奥さんがいたって知った時、ショックだった。奈落に落ちた感じだった。その上、あなたはしばらく会えないっていい出すし。私、途方に暮れたわ。そしたら、由利ちゃんがまた手を差し伸べてくれたの。すごく親身になってくれた。嬉しかったわ」
美葉はここで一息ついた。
「そうそう、肝心な誘拐犯の事を言わないとね。由利ちゃんはね、2年間私の周囲を警戒してくれたの。犯人はきっと様子を見に戻って来るって。そして、とうとう犯人を見つけてくれたわ。痩せた上に変装してたけど、由利ちゃんの目は誤魔化せなかったの。由利ちゃんね、私が目の前で誘拐されたから、すごく悔しがってね、絶対に見つけてやるって。あいつが捕まったのは由利ちゃんのおかげ。今度も由利ちゃんはきっと見つけてくれる」
美葉は結城から目をそらすと、遠くを見るような目で言った。それを見て結城はせせら笑うように言った。
「馬鹿なことを。細身で見た感じ宝塚の男役みたいなやつだったが、ただの中年女だ。そんなヤツにこの僕が捕まるはずがないだろう?」
「自信過剰ね。あなたはきっと捕まるわ。最悪のテロリストとしてね」
美葉は天井を向いたままそう言うと、くすっと笑った。
「美葉、まさかおまえ・・・」
結城は美葉の顔をまじまじと見て言うと、ものすごい勢いで美葉に襲い掛かった。
「だめだ、おまえは誰にも渡さない」
「やめて。どきなさい。私、少し前にあなたに殺されかかったのよ。いい加減にして」
美葉は言い放った。しかし、こういう状態になった結城は歯止めが利かない。結城は美葉の両手を掴みベッドに押し付け押さえ込んで言った。
「おまえは僕のものだ。だっておまえに女の悦びを教えてやったのは僕なんだから。ほら。こうやって・・・」
彼はそういうと美葉の唇をむさぼり、彼女の口の中で結城の舌がのたうった。その間、結城の膝が美葉の股間を責めつけた。嫌悪感に身を震わせながら、美葉は耐えるしかなかった。キスに満足すると、結城はバスローブを脱ぎ床に投げ捨てると、美葉の下着を剥ぎ取り、タンクトップをめくりあげた。美葉の白い豊かな乳房がむき出しになり、結城はにっと笑った。そのまま右の乳房を口で含みながら、左の乳房をもてあそぶ。
「あっ・・・」
たまらず美葉が声を上げたが、その後は無言で耐え続けた。しばらくして、美葉の胸から顔を上げた結城が言った。
「美葉、そうやって耐える姿もイイって知ってた?」
美葉は、怒りと恥ずかしさで真っ赤になって顔を背けた。
「そういうところもいいんだよなあ・・・」
そう言いながら、結城は美葉の両足を持ち上げ広げた。美葉が悲鳴のような声を上げた。
「やめて!」
「でもさ、こっちは嫌がってないじゃない」
結城はにやりと笑いながら、美葉の身体を抱きすくめ、突き上げた。いきなりのことに美葉は悲鳴を上げたが、結城は頓着せずに何度も美葉の身体を突き上げた。
「いやっ、結城さ・・・、お願い、やめてぇ、やめ。。 あああっ」
美葉は懇願したが、結城はその声に興奮したのか彼女を責め続けた。
「ああっ、ああっ、苦しいよお、いやあ、由利ちゃん、由利ちゃん、助けてぇ」
「由利ちゃん、ゆっちゃん? そういうことか!!」
結城は美葉を抱いた手を離すと、彼女の頬を平手打ちして言った。
「この女!!」
結城は起き上がりながら美葉の身体を抱き上げ、目合ったまま向き合いに脚の上に座らせると、両手で彼女の顔を掴んで言った。
「やっぱりそうだったのか。とんだ倒錯者だったわけだ」
「違うわ、友情よ!」
切れた唇から流れる血を手で拭いながら、美葉が言った。
「へえ、女同士の熱~い友情ってわけか。そうだよな。あっちはノンケのようだから、そうやって誤魔化すしかないか。だが、友情だろうと愛情だろうと、おまえはあの女には渡さん」
結城はそういいながらまた、美葉を抱きすくめ口を塞いだ。その後首筋から胸まで唇を這わせると、また美葉の身体を抱き上げ、胸の上でたくれていたタンクトップを脱がせると、背を向けて座らせた。そして、左手で美葉の身体を抱きながら、胸に手を這わせ、右手で美葉の右足を持ち上げ陰部を探った。
「あ・・・、くっ・・・」
声を上げまいと耐える美葉の耳元で、結城が囁いた。
「いい考えがある。僕の仲間に・・・、おまえの由利ちゃんを攫ってこさせよう。それから・・・、おまえさんの目の前で息の根を止めてあげよう・・・・・ね。でさ・・・、篠原由利子の死体を前にしてさ、こんなことしようよ」
言葉の合間に荒い息が、美葉の耳元と首筋に何度もかかった。美葉はおぞましさに身震いしながら叫んだ。
「やめて! 由利ちゃんに何かしたら、許さない―――」
「立場をわきまえてよ。君は命令する立場にはいないんだから」
結城はくすくす笑いながら言うと、乱暴に美葉の身体を上下させた。美葉がウッと短い声を上げると、結城は喉の奥で嗤いながらまた耳元で囁いた。
「いい加減そうやって耐えるのはお止しよ・・・。愛しい由利ちゃんを守りたかったら、せいぜい僕を楽しませておくれ」
美葉は、結城の言動から恐れていたことを確信し愕然とした。
(この人は狂ってしまったんだ・・・。多分元には戻らない・・・)
「ああ・・・」
美葉は絶望し、気が遠くなるのがわかった。彼女の精神力は限界に来ていた。意識を失う直前に、どこかで聴いたことのある昔のフォークソングが頭をよぎった。
かごの鳥でも翼があれば、飛んでゆきたい青い空・・・
結城は崩れ落ちる美葉の身体を、背後から抱きしめた。
「愛しい美葉、もう行ってしまったのかい?」
結城の腕の中で気を失った美葉は、まるで人形のように愛らしかった。結城は彼女をさらに抱きしめ頬ずりをしながら言った。
「可哀想に、おまえもあの男と同じ背徳の徒だったんだな。重罪だよ。でも、僕がおまえを浄化してあげるから奈落に落ちることは無いよ。一緒に楽園に行こうね。僕はおまえを絶対に離さない。誰にも渡さない・・・。」
結城はまたくすくすと笑った。その後、結城はまた美葉に口づけすると、彼女の身体を静かに寝かせた。
「さあ美葉、綺麗にしてあげようね」
そして彼は、美葉の身体を丁寧に舐め始めた。結城はそうやって美葉の上を何度も這い回った。その狂気に満ちた姿は、まるで悪鬼のような禍々しさを漂わせていた。
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