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5.出現 (4)神は疫病に関わらず

 某大学で、ある学生がやたらと自慢話をしていた。暇な主婦と寝て小遣いをもらったというのである。
「そのオバサンがさあ、オレを気に入って離してくれないのよ。またいい女であ~んなことやこ~んなこともしてくれて、おまけにお金をポンと10万置いていってくれてさぁ~」
その学生は学内でもかなりモテる男だったが、当人の軽さもあり、友人の男子学生達は話半分ウザさ全開で聞き流していた。しかし、収まらないのは彼と交流のある女性達であった。
「健二、ホントなの!?」
彼女らは彼と会うごとに各々問い詰めたが、結局皆うまい具合にかわされてしまった。その後はいつものパターンで朝を迎えることとなった。
 そんな中、とある巨大掲示板のウワサ話板に、あるスレッドが立った。友だちがオバサマに奉仕して、お金をもらったと自慢してるが本当だろうか、という内容だった。それは、健一の友人がやっかみ半分に立てたスレッドかもしれない。そのスレッドにはすぐに住人が食いついた。ほとんどが冷やかしだったが、書き込みの中には鋭い指摘をしたものもあった。しかし、最初は盛り上がったものの、そのスレッドは、すぐに飽きられいつの間にか板の上位から姿を消した。そして、速やかに膨大な過去ログの中に埋もれてしまったのである。

 さて、せっかくだからここで、性感染症について触れてみよう。

 微生物には、生物の営みを利用しているものが多い。日常生活において、食餌において、あるいは生殖において。特に完全な寄生生物であるウイルスは、取り付くべき生物が居なければ存在することすら出来ない。その上、レセプターの形状により、取り付くことが出来る生物(ホスト)に制限がある。また、増殖をホストに依存して生きるウイルスにとって、取り付いた個体如何によっても運命を左右される。かつて、人間の生殖行動と移動能力によって勢力を拡大した微生物がいる。梅毒トレポネ-マ(スピロヘータ・パリダ)だ。元は主に新大陸に存在する細菌(それまで旧大陸で発生がまったくなかった訳ではないらしい)だったが、侵略者が先住民に痘瘡(天然痘)ウイルスをばら撒いた代わりの土産に梅毒の病原体のお持ち帰りをした。人の飽くなき生殖行為により旧大陸でもそれは生息範囲をどんどん広げていった。それはシルクロードを渡って日本にも到着した。もちろん梅毒は今では手遅れにならない限り、薬で完治する感染症だ。しかし、日本でも性感染症に対する知識の低下により、水面下で感染者が増えているという。
 さらに80年代から新たなる性感染症が人類の間で猛威を振るい始めた。後天性免疫不全症、すなわちエイズ(HIV)である。1981年に最初の患者が確認され、1983年には、フランスのパスツール研究所でウイルスが同定された。しかし、HIVは、人類の欲望と移動能力を利用して瞬く間に地球上に広がっていった。

 ギルフォードは、自分が担当している公衆衛生学の講義においての最初の授業で、或いは依頼された講演をやる時、掴みとして話すことがある。それはこういうものであった。
「さて、講義に入る前に、少しお話をしましょう。皆さん、もちろん公衆衛生がどういうものかを知って、僕の講義を受けようと思ったんですよね?」
ギルフォードは壇上から学生や聴講生達を見回しながら言う。多くは、うんと頷いたが中には微妙な顔ををしている者たちも居る。
「あの、ひょっとして、僕目当ての人っておられます?」
「は~い」
広い講義室のあちこちから手が上がった。
「どうして? 僕がカッコイイから?」
会場からクスクス笑い声が漏れる。ひとりの女子学生が言った。
「先生の授業が面白いって聞いたからで~す」
「な~んだ、僕がカッコイイからじゃないの」
ギルフォードは落胆して見せたが、気を取り直したように言った。
「すみません、ガッカリしてはいけませんね。それは教える側にとって、サイコーの褒め言葉です」
その後、彼は例の最強の笑顔で講義室を見回し、続けた。
「では、まず公衆衛生について説明しましょう。ご存知の方は復習のつもりで聞いてください。『公衆衛生』って、なんだかわかりにくい言葉ですよね。これは、公衆トイレを清潔にするということではありません。いや、実はそういことも含まれるのですけれども。英語ではPublic Health(と言いながら黒板に書く)、すなわち、公共的に健康を守っていくことです。普通皆さんが受ける医療は個人の健康を維持するためのものですが、公衆衛生は社会全般の健康を維持していこうというものです。公衆衛生のためには、下水道や食品衛生管理のような公的機関の仕事だけでなく、みなさん個人で実行すべきこともたくさんあります。たとえば、外から帰ったら手を洗う、うがいをするということや、セキやクシャミをする時、口をハンカチやそれがないときは袖等で覆うとこも立派な公衆衛生への貢献となるわけです。
 ところでみなさん、女性が多いので質問しにくいのですが、SEXは好きですか?」
ここで、講義室内が一瞬静まり返り、その後ざわつき始める。この外国人の教授は一体なにを話し始めるのか?
「ああ、引かないでクダサイ。僕は壇上でセクハラしているのではありません。公衆衛生では大事なことなのです。まあ、保健体育の授業を受けていると思って聞いてください。HIV、エイズウイルスのことですね、が、これだけ世界中に広がってしまったのは、SEXを介して広がる感染症だったからです。かつて、同じように広がったものに梅毒があります。エイズは一時期ゲイだけが感染する病気だと思われていました。それは、ゲイの間では不特定多数とのSEXをすることが多かったからです。・・・誰です? え?ゲイの病気じゃなかったの?って顔をしてる人は?」
ここで、いつも数箇所から笑いが漏れる。
「しかし、今では男女間のSEXが世界的なエイズ感染の主な原因となっています。日本だって既に安全地帯ではありません。薬害エイズなんて、ゴンゴドウダンな事件も起こってますが、不用意なSEXによる感染がじわじわと増えています。ひょっとすると、ある時を境に、それは爆発的に増えるかもしれません。それで、僕からもお願いします。SEXは特定のパートナーと、そして、できるだけコンドームを・・・、だからみなさん、引かないでくださいってば」と、ギルフォードは顔を赤らめながら言う。「僕だって、ホントはこんな話するの、恥ずかしいんだから」
ここで、講義室全体に笑いが広がる。数箇所から女子学生の「かわい~」という声がする。
「特に男の方にお願いします。女性からはなかなかお願いし辛いことですから。昔、こんなコピーがありましたね。『愛しているなら0.1ミリ離れて』・・・あれ、何ミリだったかな、まあいいや、これはなかなか上手いコピーだと思います。それからあまり野暮なことも言いたくないんですが、もし、恋人以外とする時は、特に注意してコンドームは必ず使用してください。いいですね。
 何故、僕がこんな話をするかというと、以前、僕の親友がこの病気で亡くなったからです。彼女はノーマルでしたが、バイセクシャルのボーイフレンドから感染しました。僕は日に日に衰えていく彼女に、結局何も出来ませんでした。僕はこの病気の恐ろしさを目の当たりにしたのです」
ギルフォードの意外な話に講義室は、水を打ったように静かになったが、彼は話を続けた。
「それから、性行為とともに重要な感染源に麻薬常用者の注射針の使い回しがあります。まさか、ここにいる方でそのようなフラチモノはいないと思いますが、念のため注意しておきます。感染の広がりを元から封じることは、ます感染をしないことです。これはこれ以上HIVが地球上に広がらないようにするために必要なことなのです。自分は大丈夫だなんて、絶対に思わないでください。正しい知識を持つことは、エイズに限らず感染を防ぐのに有効です。そして、元々エイズは感染しにくい病気です」
ここで、ギルフォードは一息いれる。
「エマージングウイルス、すなわち新興感染症といいますが、多くは新しく出てきたものではありません。それらは昔からあったものが、ヒトの進出により人間界に出現してしまったのです。しかし、もともと存在していた微生物が変異してヒトに激しい病原性を持つようになったものもあります。エイズもそのひとつです。
 エイズに関しては、もともとサル由来のウイルスだったのものが、ヒトに病原性を持つものに、比較的最近変異したものです。しかし、普通ならば、それはアフリカの風土病として、特に脚光も浴びずに細々と人から人へ渡り歩きながら、静かに暮らしていくはずでした。それが、現代の交通機関の発達とアフリカの急速な近代化のために、アフリカから飛び出し、ものすごい勢いで世界中に広がりました。梅毒の時とは比べものにならないスピードです。それは、エイズの潜伏期間がとても長いので、感染に気づくまでに病気を広げてしまうことも関係しています。
 アメリカで1981年に初めてエイズ患者が見つかってから、20世紀末までのわずか20年ほどの間に、世界中で少なくとも3400万人が感染し、1200万人が亡くなっています。最初にエイズウイルスが確認されたのが、1983年、その後、医療関係者たちはこの厄介な感染症を制圧しようと必死で戦いましたが、HIVは非常に変異しやすいRNAウイルス、しかも、レトロウイルスのためその戦いは未だに続いています。ただし、その努力の結果、感染者の存命期間をかなり延ばすことが出来るようになっています。しかし、完治することはありませんから、一生薬を飲んでいかねばなりません。貧しい国では治療薬の入手が難しく、未だ、感染すれば死を免れない恐ろしい病気です」
ここで、またギルフォードは講義室を見回した。
「気をつけて欲しいのは、感染症は生物が生きる残るためのせめぎ合い、つまり、弱肉強食の一環であって、決して神様の鉄槌ではないということです。善人も悪人も、道徳者であれ不道徳者であれ、病原体にさらされた場合感染するリスクは平等です。善人が死に悪人が生き残ることも、その逆もあります。
 しかし、病気が流行ると、必ず天の怒りだとか勝手に解釈する人たちが出てきます。エイズがそうでした。アメリカでは、最初、同性愛患者に多く見られたため、それを神罰とみなした当時の大統領・・・ぶっちゃけていうとロナルド・レーガンですが・・・の判断で国の対策が送れ、エイズ患者を大量に発生させてしまいました。皆さんには信じられないことでしょうけれども、これは事実です。彼はキリスト教原理主義者、いわゆるキリスト教ファンダメンダリストの支持によって大統領の座に就き、彼自身も熱心な反同性愛主義者でした。彼にとって、同性愛という罪深い行為が神によって罰せられることは当然の摂理だったのです。日本のように昔から同性愛に寛容だった国では考えられないことでしょう。さらに悪いことに、ファンダメンダリストであるレーガンの感染症についての知識は、非常にお粗末なもので・・・言ってしまえば完全に間違っていました。エイズを麻疹(ましん)つまり、はしかのようなもの・・・かかっても自然治癒する何の心配もないものだと思ってたらしいのです。もちろん、それも間違いで麻疹はワクチンが開発されるまでは、特に子どもにとって怖いウイルスでした。今でも発展途上国ではワクチンが行き渡らずに、高い死亡率を誇っている病気です。そういえば、近年ある大学で流行って問題になったことがありますね。病気制圧の為に休校にしたのに、学生が自宅待機せず出歩いて感染を広げたというお粗末な顛末もありました。これでは新型インフルエンザが発生した時のことが思いやられますね。
 麻疹を例にあげたように、アフリカ等の医療や公衆衛生の立ち遅れた国、いや、立ち遅れざるを得ない状況の国では、耐性菌の問題を含め、未だに感染症が深刻な問題になっています。これも重要なことですので、日を改めてまた詳しくお話しましょう。
 さて、レーガンはエイズに対しての強固な対策を立てるべき立場にありました。それができるのは彼だけでした。しかし、彼は、彼の間違った認識からそれを放置しました。それが今の結果です。もちろんエイズの流行はアメリカだけの責任ではありませんが、このことから、正しい知識を持つことが如何に大事かということがわかりましたね? 僕の講義では、これからも正しい知識、いわゆる『知識のワクチン』を伝授していきます。エイズだけでなく(笑)、インフルエンザなどが流行った時に、出来るだけ感染しないように役立つ知識です」
講義室のあちこちで拍手が起こる。ギルフォードはウインクをしながら続けた。
「さて、僕も今はフリーです。一名様のみ受付ますので、よろしく。では、今から講義に入ります」

 余談だが、ギルフォードの恋人募集には今のところ誰の応募もないようだ。常に横に美人秘書が控えているせいか、彼の性癖が有名だからか、それとも冗談を見抜かれているのかは定かではない。

 さて、本筋に戻ろう。

「長兄さまぁ~、こんなにおおきなジャガイモが採れましたよ」
「とれました~」
子ども達が嬉しそうに立派なジャガイモを沢山入れたかごを運んできた。ここは教団の所有する土地の中にある菜園である。菜園と呼ぶにはあまりにも広大な農地で、無農薬なのが自慢の作物が沢山作られていた。教団の収入の一つである。教主は信者達と共に、畑仕事に汗を流していた。皆と同じように教団のマークの入った作業着を着ている。教主といえども例外ではない。
「おやおや、大きくて美味しそうなおいもですね」
教主は、子ども達の目の高さにかがみ、にこにこと笑いながら言った。
「あなた方はお母さまのお手伝いに来たのですか?」 
「はい!」
子ども達は声を揃えて返事をした。
「みなさん良い子で、私はとてもうれしく思いますよ」
というと、教主はそれぞれの子ども達の頭をなでてやった。
「うわぁ!」
子ども達は顔を見合わせ、その後嬉しそうに笑った。子どもの一人が尋ねた。
「長兄さまは、いつまでF支部におられるのですか?」
「そうですね、今、こちらで大事な御用がありますから、しばらくは居ますよ」
と教主が答えると、年長の子どもが顔を輝かせて言った。
「ではしばらくの間、僕たちは長兄さまと一緒に畑でご奉仕出来るんですね!」
「わ~い」
と、他の子ども達も大はしゃぎだ。子ども達の反応に、教主は満足げに笑って言った。
「ではご褒美に、たくさん美味しい野菜を持って帰ってくださいね」
「はい!」
「はぁい!」
「ありがとうございまぁす!」
子ども達は、口々に教主にお礼を言うと、ジャガイモの入ったかごを所定の場所に持って行き、その後母親達の元に走って行った。教主はそれを見ながら笑顔で立ち上がり、背伸びをした。良い天気である。昼になる頃には暑いくらいになるだろう。昼前に作業を終え、残りは夕方からだな、信者達にもそう伝えておこう・・・。そう思って菜園を見回すと、休憩所・・・と言ってもかなり大きなものであるが・・・の前庭に設置してある縁台に座っている女性の姿を見つけた。マスクと花粉対策用のサングラスをつけた女、遥音涼子である。教主はにこやかに笑いながら涼子に近づいていった。涼子もそれに気がついて立ち上がった。それを見て教主は手で座るよう指示しながら、大きめの声で言った。
「そのまま座っていてください。そこでお話しましょう」
教主はゆっくりと涼子に向かって歩き、前庭まで来ると言った。
「やあ、ドクター、どうしました?」
「ご奉仕を中断させて申し訳ありません」
涼子は教主に頭を下げながら言った。
「いえいえ、そろそろ休憩をしようと思ってたところです。お気になさらずに」
そう言うと、涼子の傍に腰を下ろしながら尋ねた。
「まだ、そういう格好をしなければ、病原体が怖くて外出できないのですか?」
「はい、ウイルス学者の癖に、ふがいない話ですが」
「それで、ご用件は?」
「はい、秋山美千代さんのことで・・・」
「ああ、あの愚かな母親か。今頃はせっせとウイルスの拡散に努めていることだろう」
教主は口調を変え、冷ややかに言った。
「そのことですが、あのウイルスはいったん野に放たれると、散発的に発症者を出しながら、蟲に隠れてじわじわと自然に広がって行きます。止める方法はワクチンしかありません。私には、あの可哀想な母親にわざわざあのようなことをさせて、感染者を増やす意味はないと思います。彼女は・・・、息子の遺体に取りすがって泣いていました。おそらく感染は確実でしょう。何故、残り少ない命をせめて病院で終わらせてあげるよう・・・・」
「残り少ないからこそ、彼女に自由を与えたのだよ」教主は涼子の言葉を遮って言った。「彼女は本来家庭に収まっているような器ではなかった。彼女に使命を与えたのは、自由にも目標が必要だったからだよ。まあ、たしかに悪戯心もあったがね」
「長兄さま?」
「私は、信者の息子が感染しているらしいという報告を聞いたとき、これを利用しない手はないと思った。そして思ったとおり、彼女は今、私の意向どおりに動いている」
「でも、あまりにも痛々しくて・・・」
「一人の女性から意図的に、どれだけの感染者を増やすことが出来るか、君は医者として知りたくないか?」
「それは、医学的見地とは違います。ただの興味でしかありません。あの731部隊と同じです」
「これはこれは! 何人もの信者を使って人体実験を繰り返した、君らしくない言い様だな」
教主のその言葉に涼子はギクリとし、うつむいてしまった。
「それは、信者の皆さんが承知の上の実験でした。それに、できるだけ動物で安全を確認した上で行ったのです」
「それでも、幾人かは死んでしまった。そうだろう?」
涼子はうつむいたまま頷いた。
「しかし、我々の目的はもっと崇高な・・・」
涼子は愕然としながらも言った。
「いや、あまり変らないな、多分ね」
教主は皮肉な笑みを浮かべて言った。
「さて、ここ40年で人口は一体どれくらい増えた?30億から70億、倍以上だ。何故人が増えたか? それは、人が死ななくなったからだ。かつて感染症は死因のトップだった。しかし、公衆衛生やワクチン・抗生剤の発達から、死因は癌や脳卒中、心臓麻痺などの、老衰によるものが上位を占めるようになった。
 環境破壊の原因は、人口の増加だ。今問題の地球温暖化はその結果にすぎない。我々の目的は、効率的な人類の間引き。エイズのように発症まで何年もかかるものではなく、インフルエンザのように一過性ではなく、永遠の人類の天敵として、『捕食者』として、アンドロメダウイルスのような強力な病原体をばら撒き、人類を減らし穢れた大地を浄化する。それこそが、我が神の思し召しだ。君もそれは理解しているはずだが」
「はい、もちろんです。でも・・・」
「では、要らぬ事に頭を悩ませずに研究室に戻り、新たなる展開に備えて研究を続けたまえ」
そういわれると言い返しようがなく、涼子は黙って頷いた。
「では、私もそろそろ畑に戻ってもう一仕事するとしようか」
教主は立ち上がると、再び背伸びをして涼子に背を向け去って行った。涼子はしばらく座って考えていた。前の教主、いえ、教祖さまの教えはすばらしかった。現教主の教えも確かにそれを踏襲しており、遜色ないものだ。しかし、何かが歪んでいるような気がする。教祖さまも人口増加に憂えておられた。しかし、教祖さまであれば、無理やり破滅を演出するなどという考えはなかっただろう。しかし、涼子には教主に逆らえない理由があった。涼子は半ば呆然としながら長い間縁台に座っていた。

    (教授の授業参考資料:ローリー・ギャレット「崩壊の予兆」下巻) 

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