予告編
※映画の予告編風に書いてみました。《 》内はト書きです。
《真っ赤な朝焼け空に男の独白》
思い出しましたぁ・・・。
私が子どもの頃・・・夏休みも終わる頃の、ことでした。
台風が近づいていて、私はなんとなく・・・ワクワクして、朝早く起きたとです。
そしたら、窓の外が異様に赤くて、私は、火事かと思って・・・驚いて、外に様子を見に行きました・・・。
外に出た私は、驚きました。
それは火事ではなくて、朝焼けやったとです。
空には台風の・・・厚い雲が、かかってましたが・・・、朝日の昇っているあたりの雲が途切れて・・・、山際から真っ赤な太陽が顔を出しとりました。
その太陽の光が、あたり一帯を赤く染めていたとです。
空も山も海も町並みも・・・。
そして私自身でさえ・・・。
あまりの不気味さに、私は怖くなって、家に戻ると布団に飛び込み、頭からタオルケットを被って震えていました。
あの時の、地獄の業火の中で悪魔が踊っているような、不気味な朝焼けの色・・・この赤さは、その時の色に似とります・・・。
朝焼色の悪魔
《場面変わって、朝の通勤通学風景。
《踏み切りに近い歩道。学友らしい中学生くらいの少年二人》
「勝太、さっきからすごい朝焼けやけど、雨になるんかねえ」
「朝焼け? 何言ってんだよ、雅之。青空だし、全然普通に晴れとるやん」
「だって、周り中全部真っ赤だよ?」
《電車が近づき警報が鳴り始める》
「赤い・・・。あっ!!」
《警報の音に触発されたかのように、雅之は急に何かに怯え始め、何者かに追いかけられるように人ごみをかき分け先に進んだ。驚いて勝太が後を追う。》
「雅之、待てって!」
「いやだ! おじさんが追いかけてくる!」
「急にどうしたとや!!」
「赤い! 赤い! ・・・怖いよ、助けて!!」
《雅之、いきなり遮断機をかいくぐり、線路に飛び出す》
「雅之ィ!! 危ない、特急電車が来よる!!」
《後を追おうとする勝太を止める謎の女》
「放してください! 雅之が死んでしまう!!」
「やめなさい。もう遅いわ。誰か、この子を押さえて! この子まで死んでしまうわ」
《勝太、近くにいた会社員らしき男達に押さえられる》
「放してください! 放せってば! 放せぇ~~~~!!」
《勝太の叫び声も空しく、雅之は電車の影に消える。軋んだ金属音とともに警笛が巨大な管楽器のように鳴り響き、鈍いブレーキ音を立てて電車が止まる。摩擦臭が漂ってくる》
「雅之! 雅之ぃぃぃぃ~~~~ッ!!」
《場面転換。K警察署。建物から女性が出てくる》
《玄関口で女、若い刑事に挨拶して門に向かう。門近くで、入って来た大型バイクとすれ違う。女、バイクを目で追う。男、バイクから降り、ヘルメットを取る。金髪で、細身だが身長が190近いイケメンの外国人。男は女に気付くとウインクをして、風の様に走って署に向かう。そこで、迎えに来た若い刑事を抱きしめる。刑事のうろたえる様がわかる。それを見て女、肩をすくめながら言う》
「変な外人!」
篠原由利子。人の顔に関してだけ、超常的な記憶力を持つ。職業、普通の会社員。 《37歳。身長168cm、特に美人ではないが、知的で凛々しい顔に少年っぽいスレンダーな体型》
《場面転換。警察署内。先ほどの白人男性が、刑事らしい男と話している》
「鈴木サン。どうして、あの男と接触をしていた少年がいるコトを言ってくれなかったのですか?」
アレクサンダー・ライアン・ギルフォード。イギリス人。バイオテロの専門家として日本政府から呼ばれるも、現在何故か九州で客員教授をしている。 《40歳。身長189cm、痩身だが鍛えた体格。金髪、グリーングレイの眼。ゲイであることは公表はしていないが隠してもいない》
「彼を殺したと言って出頭してきたのは、まだ14歳の中学生でした。しかも、誰かを庇っているのではないかという様子が伺われ、慎重に対応していたのです。」
「だけどその結果、容疑者が・・・?」
《鈴木、苦い顔をして答える》
「・・・事故で亡くなりました」
「それも、電車事故でです!」
《ギルフォード、その後小さく「Shit!」と言って続ける》
「もし、彼が感染していて、事故の際、彼の血液がエアロゾル化して撒き散らされていたら、どうなると思います!?」
《ギルフォード、去る》
「係長! よかとですか? あげなとに勝手にさせとって」
多美山穰巡査部長。K署刑事一課強行犯係。 《59歳。中背で若干中年太りしているが、がっしり型の体型。性格、実直。》
「彼は司法解剖をお願いしている勝山先生の代理だ。特にこの事件は彼らの方が専門かもしれないんだ。餅は餅屋に任せよう。それに・・・」
《と言いかけて、鈴木、言葉を濁す。多美山、すかさず尋ねる》
「それに、何ですか?」
「上の方から彼に協力しろという達しが来ているんだ」
《場面転換》
《取調室に少年二人と若い刑事、女性警官が座っている。刑事はギルフォードに抱きしめられてうろたえていた男》
「僕らに何か出来たでしょうか」
《背の高い方の少年が質問する。刑事、答える》
「たらればを言っても仕方がないけど、今の話を聞く限りではおそらく雅之君を救うことは出来なかったと思うよ。ギルフォードさんの口ぶりから、彼は何かの病気だったみたいだし。って、こんなことを言っても君らへの慰めにはならないね」
《刑事、情けない笑いを浮かべて言うが、その後、真剣な表情で続ける》
「だけど、どんな人にも歴史はあるんだよね。それに、死んでいい人間なんていないと僕は思ってる」
葛西純平。K署刑事一課強行犯係。 《29歳。身長178cm。童顔の新米刑事》
《場面転換。住宅地》
《部下と共に車の中でターゲットを見張っている男。運転席の部下らしき男、退屈そうに言う》
「今日で三日ですが、特に変ったところはありませんねえ。ふつうに会社と家と往復してるだけだし」
《男、部下の判断を一蹴する》
「いや、ヤツは必ず彼女と接触を持とうとするはずだ」
長沼間内法。公安警察。 《40歳。身長173cm。顔は良い方だが、鼻の下がちと長いのが難点。痩せ狼のように貧相に見えるが、武道の達人》
《場面展開、マンションの1室の玄関》
《由利子ともう一人女と犬一匹が、ギルフォードを玄関先から見送っている》
「ユリコ、よかったら今度の土曜に僕の研究室に見学に来てください。これ、名刺です。電話してください。待ってます。じゃ、ネ、みなさん!」
《ギルフォード、ばたばた走りながら帰っていく。犬、つまらなそうに寝そべる。彼の姿が見えなくなると、二人、顔を見合わせてクスリと笑う。女はっと気付いて言う》
「あ、ごはん作らなきゃ。由利ちゃん一緒に食べて帰ってね。二人の方が楽しいから」
「ありがとう。美葉の料理は美味しいから嬉しいなあ」
《女、キッチンに向かいながら嬉しそうに言う》
「んなこと言っても、あり合わせのものしかないけんね」
多田美葉。由利子の親友。 《37歳。身長152cm。美人と言うより可愛いというタイプ。背が低いのと胸が大きすぎるのが悩みの種》
《場面転換。Q大》
《大学構内を歩く葛西》
《場面変わって、とある研究室のドアをノックする葛西。軽快な足音がしてドアが開き、女性秘書が出迎える》
「K署の葛西様ですね。どうぞお入り下さい。教授がお待ちかねですわ」
《笑顔で言い、葛西を案内する》
鷹峰紗弥。ギルフォードの秘書。英語と日本語のバイリンガル。 《26歳。身長165cm。細身で、日本的な真っ直ぐで長い黒髪の、謎多き美女》
《教授室。パソコンの前でギルフォード・由利子・葛西が悩んでいる》
「このメールの文章、確かに不自然ですね。改行も変だけど、簡単な漢字まで平仮名になってたりしてますよ」
《と、葛西。その直後、由利子たちの後ろで大阪なまりの素っ頓狂な声がする》
「あれぇ~? ・・・えっと由利子さん・・・でしたっけ」
《声の主はいつの間にか後ろに立っていた研究生の如月》
「はい、由利子ですけど、何かわかりました?」
「これ、いわゆる『ねこ大好き』やないですか?」
「え?」
《由利子、メールを改めて見直して言う》
「ほんとだ! 何? これ、ひょっとして挑戦状?」
《ギルフォード、不思議そうに尋ねる》
「なんですか、『ねこ大好き』って?」
《如月、その質問に答える》
「縦読みのことですワ。英語ではアクロスティックとかいいまへんか?」
《由利子、メールの縦読みメッセージの行頭文字を書き抜き説明する》
「声に出して読んでみます。『げ ー 無 は は 自 ま つ て い ル 』『き み 二 こ レ が と メ ら れ ル か』。わかりました? 念のため、ちゃんと読んでみます。『ゲームは始まっている。君にこれが止められるか』」
《由利子、ギルフォードに向かって言う》
「どう? アレク、あなたへの挑戦状みたいに思えませんか?」
「確かに、そう受け取れます・・・。でも、どうして僕宛てに・・・」
《悩むギルフォードに葛西が言う》
「でも、彼らはあなたに挑戦してきたんです」
《場面転換。山の中にある広大な農場》
《男が子ども達と語らっている。子ども達、嬉しそうに男を見上げている。子ども達の一人が問う》
「長兄さまは、いつまでF支部におられるのですか?」
《長兄と呼ばれた男、微笑みながら答える》
「そうですね、今、こちらで大事な御用がありますから、しばらくは居ますよ」
《年長の子どもが顔を輝かせて言う》
「ではしばらくの間、僕たちは長兄さまと一緒に畑でご奉仕出来るんですね!」
《ほかの子らも喜んで歓声を上げる》
「わ~い」
《子ども達の反応に、長兄は満足げに笑って言う》
「ではお手伝いのご褒美に、たくさん美味しい野菜を持って帰ってくださいね」
「はい!」
「はぁい!」
「ありがとうございまぁす!」
《子ども達、口々に長兄にお礼を言い、ジャガイモの入ったかごを所定の場所に持って行く。その後母親達の元に走って行く。長兄はそれを見ながら笑顔で立ち上がり、背伸びをする。天気はすこぶる良い。長兄、遠くに女の姿を見つける》
《長兄と女、教団の前庭にある縁台に腰掛けて話している。その女は踏み切りで勝太が雅之の後を追うのを止めた女で、防護メガネとマスクをつけている。長兄、女に向かって冷ややかに言う》
「さて、ここ40年で人口は一体どれくらい増えた?30億から70億、倍以上だ。何故人が増えたか? それは、人が死ななくなったからだ。かつて感染症は死因のトップだった。しかし、公衆衛生やワクチン・抗生剤の発達から、死因は癌や脳卒中、心臓麻痺などの、老衰によるものが上位を占めるようになった。
環境破壊の原因は、人口の増加だ。今問題の地球温暖化はその結果にすぎない。我々の目的は、効率的な人類の間引き。エイズのように発症まで何年もかかるものではなく、インフルエンザのように一過性ではなく、永遠の人類の天敵として、『捕食者』として、アンドロメダウイルスのような強力な病原体をばら撒き、人類を減らし穢れた大地を浄化する。それこそが、我が神の思し召しだ。君もそれは理解しているはずだが」
「はい、もちろんです。でも・・・」
「では、遥音先生、要らぬ事に頭を悩ませずに研究室に戻り、新たなる展開に備えて研究を続けたまえ」
長兄(皇 祥護)。 碧珠善心教教主。 《34歳。身長172cm。痩身、細面の美男子。外面如菩薩内面如夜叉》
《長兄、そう言い放つと、席を立ちその場を去る。呆然としながら縁台に座っている女》
遥音涼子。 碧珠善心教会付属の病院のウイルス学者。 《36歳。身長158cm、中肉中背。美人だが、暗い影がある。外出時、マスクと防護メガネが手放せない)
《場面転換。とある公園》
《少年二人の前に、女が一人立っている。見守るように、刑事二人とと女性警官。女、顔色悪く、いかにも具合が悪そうな風情》
「もう疲れた、わ・・・。もう、痛みも・・・ない・・・体が鉛・・・よう・・・」
《女、ふうっとため息をつく》
「だから、もうお仕舞い・・・。ここで・・・らせるわ・・・」
《女、少年の方に向かい、ゆっくりとナイフを持つ右手をかざす。多美山、叫ぶ》
「いかん! ジュンペイ、行けぇっ!!」
《合図と共に、葛西、少年たちの方へ猛然と走る。呆然とする少年の前にもう一人の小柄な少年が立ち、盾になろうとする。葛西、飛びかかって二人を抱き、その上に伏せる。葛西、多美山のほうを見る。多美山、女を止めようとするが、彼女がいきなり返した切っ先が指先を走る。女、笑いながら刃を自分の喉に向ける。止むを得ず女の前に仁王立ちになった多美山の後姿越しに血しぶきが上がる。葛西、絶叫する》
「多美さぁんッ!!」
《絶叫がエコーしながらフェイドアウト。場面変わる》
《元彼に捕らえられた美葉、車の中で拘束されている。男、得意げに話す》
「この前、浮浪者が4・5人ほど公園で死んだ事件があっただろ? あれは僕がやったのさ」
《美葉、目を大きく見開いて驚く》
「うそ・・・」
「残念ながら本当だよ。僕は、あの方に言われたとおりにウイルスを撒いたんだ。あの目障りで薄汚い浮浪者たちを掃除するために」
《美葉、男の言っていることが飲み込めずに訊く》
「どういうこと? それにあの方って?」
「あの方・・・、偉大なる長兄さまだよ。この地球の救世主様だ。ウイルスで、人間を環境破壊させないレベルまで減らすんだよ。そして、選ばれた人間だけが生き残れるんだ」
結城 俊。テロ組織『タナトスの大地』構成員。テロ実行犯。 《43歳。身長178cm。元は健康的な体格だったが、日常的に使う非合法の薬物のため、病的に痩せ始め、性格も荒みつつある》
《場面転換》
《感染症対策センター内、シャワー室。ギルフォード、シャワー室の壁に両手をつき、がっくりと下を向いている》
”よかった・・・”
《彼の口から弱弱しい言葉が漏れる》
”イヤだ・・・、あの時のように死ぬ思いは・・・。シンイチ、君と約束したのに・・・、本当は怖いんだ、俺は・・・。無様・・・だな・・・”
《画面引く。激しいシャワーの音に紛れて、嗚咽する声がかすかに聞こえる。ギルフォード、その状態のままじっと動かない》
《オーバーラップしつつ、場面転換》
《C川河川敷。若者達がパニックになっている。若者の一人が、橋台下にあるホームレスの掘っ立て小屋を乱暴にノックする。横で女性がそれを止めようとする。そこで、小屋の戸口が崩れ落ち、もうもうと土煙が立つ。それを避けうずくまった女性、ようやく顔を上げる。小屋の中に目をやった女性、悲鳴を上げる。中に無残に体表を食われた男の死体が転がり、その上に、異様にでかい虫が数匹乗り、赤く光る目をちろちろさせていた。
《場面転換》
《夜のギルフォード研究室。ギルフォードが緊迫した様子で携帯電話をかけている》
「ユリコ! どうしました? 返事をしてください!!」
《電話の向こうに呼びかけているギルフォードの傍に、細身で長身の黒人青年がコーヒーを手にして近寄ってくる》
「アレックス、彼女にネットとの接続を切るようにゆーてちょーよ」
「ユリコ! ネットから接続を切ってください。ジュン! そこにいますか? ジュン!!」
《その様子を見て紗弥が青年に尋ねる》
「何があったんですの?」
《青年、答える》
「由利子さんが開いたCD-Rに、不正プログラムが入っとるみてゃーだわ」
ジュリアス・アーサー・キング。アメリカ人。米国H大講師で専門はウイルス学。 《34歳。身長182cm、一見華奢に見えるが、フィールドで鍛えられているので意外と頑丈な体格。ブルーアイズ。日本語は堪能だが、何故か名古屋弁。ギルフォードのパートナーで、兄はCDCの研究員》
《由利子のパソコンのモニター画面が不吉なブルースクリーンになり左上端から白い文字で「Thanatos」という文字がズラズラと高速で流れ始める。葛西、報告する》
「男の画像が消えて、ブルースクリーンに”Thanatos”という文字が次々と出て来て画面を埋めています」
「画像が消えて、青い画面に文字がどんどん出ているらしいですよ」
《ギルフォード、ジュリアスに説明する。ジュリアスは額に手を当てながら答える》
「そりゃあまずいがね。電源を落とした方がええて」
《ギルフォード、すぐにジュリアスのアドバイスを伝える》
「ジュン! 強制終了して下さい」
《ジュリアス、その様子を見ながら手に持ったコーヒーを一口すすって言う》
「まあ、もうおせーかもしれにゃーもんだで、いっそどうなるかあんばいを見るって言うのはどうかねー」
「馬鹿言わないでください」
《ギルフォード、あきれ気味に言う》
「後でユリコから殺されますよ」
《場面転換》
《葛西、隔離病室のガラス窓にすがって取り乱しながら泣いている。ギルフォード、葛西に近づく》
「落ち着きなさい、ジュン!」
《静かだが鋭い声と共に、ギルフォード、葛西の頬を打つ。ぱん!という乾いた音。》
「見なさい! これが、テロリストのしでかしたことです」
《ギルフォード、葛西の襟首を掴み、無理やり病室の方に彼の顔を向けて言う》
「目に焼き付けておきなさい、タミヤマさんの姿を・・・! 僕たちの・・・、君の戦う敵は、人に対してこんな残酷な仕打ちをするウイルスを、平気でばら撒くことが出来る連中なんです。彼らはウイルスを操作し培養出来る能力と、それを躊躇せず使用出来る冷酷さを持っているんです」
《場面転換》
《テレビの画面。記者会見のような場面。記者、質問する》
「知事、あの、ウイルス発生があまりにも突飛だと思えるのですが、これは人の手で撒かれたという可能性はないのですか?」
《知事、質問の内容を確認する》
「人の手で撒かれたと言うと?」
「はい。ベタですが、バイオハザード・・・。例えばどこかの研究所から漏れたとか、テロとか・・・」
「どこかからウイルスが漏れたということについては、どこのウイルスを扱う機関からもそういう報告は受けておりません。が、それ以前に、まったくの新種で、しかもⅠ類に相当する危険なウイルスを扱っている機関は、日本中どこにもありません。それからテロに関してですが、もしテロなら実行前かそのあと、或いは両方に何らかのメッセージが発せられるはずですが、今のところ、何のアクションもありません」
《知事、一息つく》
「ただし」
《森の内、さらに続ける》
「テロは許される行為ではありません。もし、これがバイオテロだった場合、私たちは断固として戦い、かならずそれを封じ込めます」
森の内誠。 F県知事。 《60歳。中背だが若干太り気味。ちょっとエキセントリックな面もあるが、県政は真摯である》
《テレビの画面を見つめながら、一瞬ゾッとするような笑みを浮かべる長兄こと祥護。だが、すぐにそれはいつもの魅力的な笑顔に変わる》
《場面転換》
《夕方の駅。人ごみの中をフラフラ歩いていた男、倒れ、苦しみ始める。その周囲から人の波が引き、あち こちで悲鳴が上がる。男は血を吐きながらのたうち、最後に弓なりにひきつけて絶命した。倒れた男の身体の周囲にじわじわと血だまりが広がっていく。倒れた男の近くにいた会社員らしき男、目の周囲を拭い、その手を見る。掌に少量の血がついている。駅周辺にパトカーや消防車・救急車が集まり、防護服を着た男たちがホームへの階段を駆け上がっていく。
《オーバーラップして、冒頭の朝焼けに戻る》
一人の男の妄想と野望から、未曾有のウイルステロが始まった。勝つのは人類かウイルスか。
笑いと涙、感動と恐怖、そしてこっそりと子ネタが贅沢に詰まった、一部限定で話題のご当地バイオテロ小説、密かに絶賛連載中!!
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