カテゴリー「書籍・雑誌」の8件の記事

2018年4月 4日 (水)

『ゼロの激震』 安生正

【内容紹介(「BOOK」データベースより)】
 関東北部では、金精峠で土砂崩れが起こり、足尾町の人々が原因不明の死を遂げ、富岡で大火災が発生するなど大災害が頻発していた。
 そんな折、元大手ゼネコン技術者の木龍のもとに、突如奥立という男が現れる。
 すべてはマグマ活動にともなう火山性事象が原因であり、これ以上の被害を阻止すべく、東京湾第一発電所の建設に携わった木龍の力を借りたいという。
 だが、木龍の協力もむなしく秩父鉱山で大噴火が発生、やがてマグマは東京へと南下していく。
 このままでは関東が壊滅し、最悪の場合、日本、そして世界までもが滅んでしまう――。

 地球規模の未曾有の危機に元ゼネコン技術者、地質学者たちが挑むパニック・サスペンス巨編!

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 本屋の古本コーナーでなんとなく手にして、内容紹介を読んで『マグマが東京へ』の件(くだり)で映画『ボルケーノ』を思い出して失笑したが、元ゼネコン技術者が活躍するというのでパラパラ中見。面白そうなので購入しました。
 4日で読了。ツッコミどころはけっこうあったけど、とても面白かった。ボルケーノと違ってちゃんと科学的考証もしてあったし、何より作者が建設会社に勤務していただけあって、土木技術についてもリアリティがあります。
 その間、親父が倒れたりしたんで、もし一気に読めれば丸一日で読んでしまうだろう程の面白さです。これを書くのに本を見直したらまたつい読んでしまいます。300円はお買い得。つい、前作も尼で購入してしまいました。これはもう少し後で読む予定。

 アマゾンの書評では、説明部分が難解で読みづらかったというものが多かったけど、私は補助ですが、一応土木設計の仕事をやっているので、そんなに読みづらいとは思わなかったです。ただ、この話の要でもある東京湾第一発電所のマントル地熱発電『バベルシステム』の簡単なイラスト説明があればもっとイメージできたと思いました。

 さて、以下は本編のレビューですが、話の構成上ネタバレを含みます。これから読もうと思っている人は読んでから来てね。また、途中で本作を読みたくなった人は、その時点でこれを読むのを中止して小説読了後に続きを読んでください。やはり、ネタバレして読むと面白さが半減しますので。

 ゼロの激震 amazonで→購入
 あるいは各書店でお求めください。

 と、ステマもしてみる(笑)。

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2011年12月31日 (土)

『前へ!』~東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録

 彼らは、ただその言葉を胸に突き進んだ。一人でも多くの命を救うために――。

 曇ったゴーグルとマスクを投げ捨て、原発への放水に挑んだ自衛隊員がいた。ある隊員は「死ぬなら自分のような独身者が」と原発行きを志願した。国交省特殊部隊は、被災地を目指す救助隊のために、瓦礫と遺体で埋まる基幹道路と格闘し続けた。警視庁機動隊、ハイパーレスキュー隊……未曾有の危機に命を賭け対峙した者たちの記録。
(書籍紹介より)

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 今年も普通に明けた。そして、普通なことが色々あって普通に終わると思っていた。

 ところが、3.11である。
 あの日以来、日本が変わった。被災地はもちろん、そうでないところもそれなりに変わった。世界の日本人に対する評価も、原発に対する意識も変わった。
 人の偉大さ、愚かさ、強さ、弱さ、文明の儚さ脆さ、絶望の中、それでも生きようとする復興しようとする底力を目の当たりにした年になった。

 この本は、被災直後に命を張って被災地の救援や原発事故の収拾にあたった公務員たちの、不眠不休の戦いの記録である。この年の最後にふさわしいエントリーだと思う。

【追記】
 私が注文した時は、まだアマゾンには在庫していたが、現在中古品のみになっている。
 発行元の新潮社には、まだ在庫しているようだ。→ 「前へ!」

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Photo

 この本は、8月に発行されたものだが、私はその存在を知らなかった。

 最近、会社でこの本の一部をA4の小冊子にしたものが机に置いてあった。回覧で読めと言うことらしい。私は、(ま~た国交省のプロパガンダ記事か)と思ったものの手に取って数行読んでから、すぐにその冊子を閉じた。

(これは泣く。ここで読んではいけない)

 それで、持って帰って読むことにした。ところが、うっかりと電車の中で読んでしまい、案の定うるうるになってしまった。

 テーマがテーマなだけに面白かった、と書くことが憚られるが、読んでよかったと思った。それで、引用元の本を買って読むことにしたのである。

【注意】
 以下、レビューに入りますが、かなりネタバレ的になっております。 それでも、原本はもっと沢山のエピソードがありますので、是非一度、お読みになることをお勧めします。

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2011年1月16日 (日)

ブックレビュー『村崎百郎の本』

41gbkltjgyl__sl500_aa300__2※注意:このエントリーには「キチガイ」やそれに類する単語が多く使われますが、これは、この話には不可欠な単語であり、重要なキーワードでもあるからです。ご了承のうえお読みください。

■なんか長い前置き

2010年7月23日の夜。

「さて、ブログ(このブログね)の更新をしようかな、小説の続きを書こうかな?」
 明日は土日。休み前の解放感にひたりながら、パソコンの電源を入れた。しかし、ネットを開いた私の目に真っ先に目に飛び込んできたのは、信じられないニュースだった。

『作家の村崎百郎さん、自宅で刺される』

 うそっ。

 急いでそのニュースをクリックする。まさか・・・。そんな馬鹿な!! 間違いであってくれ・・・。

 しかし、事実は無情だった。メッタ刺しでほぼ即死状態だったという・・・。

 

 犯人は統合失調症の男で、殺害理由は村崎さんの著作に騙されたということらしい。住所を2ちゃんねるで知り、明確な殺意をもって、途中柳刃包丁を購入し、殺害に向かったという。

 そいつが真正の精神病患者だったことは、犯人の名前が伏せられたままで、その後の報道がほとんどなかったことでもうかがえる。

 しかし、ちょっと待て。

 ここや他所で何度も書いたが、住所を調べることができて、その住所にたどり着くことが出来、凶器もちゃんと選んで購入出来、刺殺完了後警察に自分で通報出来るような輩がなんで罪を問われないのか。少なくとも、心神喪失状態ではないだろう。むしろ、至って冷静だった。こんなのに計画的に殺されて、仕方ない、運が悪かったなんて自然災害のように終わらせられては、被害者・ご遺族を含め、たまったものではないと思う。

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2008年1月27日 (日)

「くるねこ」ゲット!

Kuruneko_2_2  ちょっと前に、ココで書いた「くるねこ」本をやっと手に入れた。会社近郊の本屋には全然売ってなくて、仕方がないからamazonに注文した。まあ、ついでに3冊欲しかった本を買った。結局高くついたが(笑)、結局買って読むだろう本だから問題はない。

 手にしてみると、想像以上に厚い。写真もいっぱいだし描き下ろし漫画もある。すごろくもついている(笑)。

 ただ、マンガの一コマがブログよりかなり小さくて、文字も手書きの分小さくなっていて、目が悪い私にはちと読みにくかった。次号からの改良を期待したい。

 内容は、ブログでは描きあがったものからアップしてあった(もちろん時系列の説明はしてあった)ものが時代の古い順、すなわち、古参猫の話からほぼ時代に沿って掲載してあったので、ああ、なるほどこういう順番だよね、うんうん、と改めて納得でした。しかし、もんさんの話が最初にあって、ああ、本屋で買って電車で読まなくてよかったとほっとした。先住猫のにゃさんが死んでくるさんとまだ子どものもんさんが大泣きをするシーンがあり、涙なくして読めないからだ。何回読んでもあのシーンは泣ける。
 くるさんのマンガは猫が可愛い。しかし、登場する人物も特徴があっていい味を出している。特に怖い顔の「猫の先生」(かかりつけの獣医さん)。飼い主にはすぐ怒るくせに、動物に対してはすごく優しい。いや、うちのかかりつけの犬猫病院の先生も同じ。飼い主には怖いのに、動物には猫なで声。まあ、そういう先生の方が信用できるかもね。逆だと目も当てられん。

 で、面白いから皆さん売り上げにご協力くださいね。「くるねこ」2巻が、無事に出ますように。

※表紙のもんさん(左下)にかかっている本の腰巻を外すと・・・。あ~ら、もんさんが大変身!

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2007年4月23日 (月)

朽ちていった命~放射線被曝とはどういうものか

※福島第一原発事故関連で来られた方へ

 大内さんの症状は、特殊な状況においての致死量をはるかに超えた、主に中性子線による被曝によるものなので、この症状が原発事故による被曝にそのまま当てはまるものではありません。過剰反応しないようにしてください。
 放射能は怖いです。しかし、必要以上にあるいは間違った恐れ方はせずに、正しい知識を持った上で恐れてください。風評に踊らされたり発信したりしないように気を付けてください。

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 震災から1年経った今でも、この記事へのアクセスが絶えません。もっとも1年前に比べるとかなり少なくなっていますが。
 上にも書いていることとつながりますが、ふくいちの事故とこのJCOの臨界事故はまったく性質の違ったものです。今回の原発事故は規模も深刻さもJCOの比ではないくらい大きいですが、それでも今のところ重度の被曝者や(被曝が直接原因と思われる)死者も出ていませんし、これから致死量の放射性物質を撒き散らすに至る確率もかなり低いと思います。まだ予断は許されませんが、これを読んでいたずらに怖がらないようにしてください。(2012年3月11日) 

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朽ちていった命-被曝治療83日間の記録-

 これは、2001年5月に放送されたNHKスペシャル「被曝治療83日間の記録~東海村臨界事故~」の書籍化されたものの文庫版である。

 1999年9月30日午前10時35分。茨城県東海村の核燃料加工施設「ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所」内でサイレンが鳴り響いた。放射線が出たことを知らせるエリアモニターのサイレンだった。

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2007年3月29日 (木)

超能力番組を10倍楽しむ本

Chounouryokuhyoushi_1  楽工社 1700円(税別)

 捏造をやっていたの『あるある』だけじゃない! 超能力番組のビデオを徹底検証、超能力者のトリック暴きはもちろん、テレビ局が仕掛けたトリックも見破る。あの高視聴率番組がやっているヤラセの決定的証拠も押さえた!
「ああもう、テレビなんか信じられない!」

     対象年齢:小学校高学年以上

*****

 今でこそ私は、超能力やスピリチュアル等のいわゆるトンデモに懐疑的だが、20歳過ぎまではけっこう信用していた。一時期悪いことが重なり、その上うちの猫がばたばた病気になり何匹か死んでしまったということが続いたとき、占い師に視てもらったこともあった。良く当たると有名な「天神の母」に視てもらうため、終電ギリギリまで並んだこともある。
 「天神の母」の場合は良心的で、1人1000円か2000円(うろ覚えなので確かではないが、だいたいこれくらいだった)で、視てもらうということだけでカウンセリングの効果になったと思うが、これが悪質なカルト系の団体だったら、けっこう危なかったかもしれない。まあ、当時から貧乏でそういうのに貢ぐ財産もなかったので、変な壷やら買わされるような目には遭わずに済んだ。

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2006年7月21日 (金)

夏の災厄

夏の災厄(篠田節子著)

(書き足したのでもう一度上げます。)

 これは、以前ここに書いた日テレのドラマ「ウイルスパニック2006」の元となった小説である。

 面白い!読んでいて引き込まれる。日テレのドラマなんて目じゃない。2ちゃんねるのカキコに「激安大バーゲン的糞つまらんドラマにされていた…orz 。ワクテカしながら読んだ小説が… 。」っていうのがあったが、納得した。まあ、昨今のテレビ2時間ドラマにしては、よいほうの出来だという評価には変わりはないが。

 小説のほうは、きれいな看護婦も、可愛い少年も、カコイイDJも出てこない。主役は名前と看護婦という設定だけが同じでまったくの別人である。ヒーローの出てこないパニック小説といわれるだけあって、出てくるのは普通のおじちゃんおばちゃんである。子育てを終え看護婦に復帰した50過ぎの太ったおばちゃん・うだつの上がらない市役所の職員・アカの上にホモのレッテルを貼られたはぐれ医者・夜間診療所の事務員をやっているヒモ男。主に活躍するのはこの四人であるが、他にもそこらへんにいるようなおじちゃんおばちゃんが大量に登場する。ほとんど日テレドラマの役者のイメージは影響なく読めたが、小役人小西だけは、何故か終始ドラマの八嶋智人のイメージで読んでしまった。

 作者の篠田さんは、役所勤めの経験がおありだそうで、役所の融通のなさや行政と住民の安全の間の板ばさみになる役人たちの苦労がよく表現されていた。読んでいて何度も歯がゆい思いをさせられてしまったが、現実に同じようなバイオハザードがおこっても同じような状態になるのだろう。否、小説だからこそスッキリしないまでも主人公たちの決死の調査や行動により、病原体の正体が割れそれなりの解決を見たが、現実はもっと悲惨な結果に終わるのではないかと思う。そんなに熱心な役人も医者もいないだろうと思うからだ。
 それにしても、普通のおじちゃんおばちゃんがこれほどカッコイイ活躍をする小説も少ないだろう。

 感染力も致死率も治癒後の重篤な障害率も高い謎の感染症が流行り、半ば隔離された町で、どのようなことがおこるかという内容もリアルで空恐ろしいものがあった。まず、差別だ。感染源の不法投棄場があったため、病気の流行った昭川市は孤立し、特に住民内でも特に感染者が多く風土病のように扱われた窪山地区の住民は徹底的に差別される。住民間の対立がおこる。住民たちはすさみ、呪い師や新興宗教が幅を利かせ、後遺症の脳障害を治すための祈祷が行われる。脳炎に感染しない、万一罹っても完治するという触れ込みの安いニセ薬が何万という価格で取引され、悪徳業者の温床となる。行政に見捨てられた後遺症患者を抱える家族の心中が相次ぐ。生き地獄である。
 そして行政は脳炎の流行地が都心から離れているため、昭川市で病気を封じ込めようとする。そして自衛隊を出動させ、感染源のコジュケイの一掃作戦を展開する。そのおかげでいったん終息を見せた脳炎だが、真の感染源を知らずに放置したため、再発生させてしまう・・・。鵜川は富士病院の辰巳医師が731部隊の受け皿である国立予防衛生研究所出身だということを知って、辰巳の起こしたバイオテロを疑うが・・・。

 あまり書くとネタバレになるので、普通のおじちゃんおばちゃん達の大活躍は本を読んで堪能してもらうとして、いくつか私なりに気になったりなるほどと思ったりしたことを書いていこう。

 まず、脳炎の媒介動物が蚊であったことから、当時から推奨されてきた「多自然型川づくり」で施工された川がもとの三面張り護岸(私は、側溝川と呼んでいる)に改修され、草は刈られあるいは枯れさせられ、木々は伐採される。そんなことをしたら余計大変なことになろうもん、蚊は不法投棄のタイヤやポイ捨てのカン・ビン等のちょっとした水たまりでも増えるんだぞ。三面張り直線護岸にしたら、住む生物も限られて生物層が一変して、汚染に強い害虫だらけになるぞ・・・。
 そこら辺の描写も、脳炎の後遺症患者を抱える家族の悲惨さとともにリアルに伝わった。恐ろしいかったのはそういった後遺症の残った患者まで「完治」とされ、行政から見捨てられたということである。大いにあり得る話で薄ら寒くなってしまった。

 それから、予防注射やワクチンについて、現代の私たちがいかにその恩恵を受けて、今の清潔で健康な暮らしを得、また、その恩について忘れているかについて改めて思った。ワクチンがあったからこそ痘瘡ウイルスは殲滅され、世界中で天然痘の恐怖に怯えない生活が出来るのだ。
 私も無駄な予防注射はしないことにしているが、それはこの国に住んでいるからそういう選択も出来るのだ。発展途上国では、ありふれた感染症で簡単に子供が死んでいるのだ。しかし、もし、この異常な清潔志向のこの国に、未知の病原体によるパンデミックが起こったら、どのようなことになるか。日本国中が、この小説の昭川市のようなことになるのは想像に難くない。
 冒頭部分で辰巳医師が、インフルエンザの予防接種を阻止しようとする母親たちに怒りをぶちまけるシーンがある。

 「みなワクチンのありがたさを忘れている。ほんの少し前まではインフルエンザで老人や子供がばたばたと死んでいた。豊かさと平和ボケで疫病の恐ろしさを忘れている。ワクチンは命がけで医師たちが作り出したものだ。その恩恵を享受しておきながら、少しの副作用でワクチンを悪者扱いする。

 真の疫病はエイズなんて(病気の進行において)問題にならない。弱いものからどんどん死んでいく。老人。子供。そしていずれは働き盛りの人間まで。病院は一杯になり収容不能になる。毎日そこかしこの家から棺桶が出される。感染した年寄りは家を追い出され路上で死ぬ。ウイルスにはほとんど特効薬はない。とくに新興ウイルスの場合は。あるのは対症療法とワクチンであらかじめ免疫をつけることのみ。

 たまたまこの70年間ほど大規模な疫病が発生してないだけだ・・・。」

 そう、この小説から約10年後致死率10%のサーズという感染症がアジアで猛威をふるい、今世界は新型の鳥インフルエンザの発生に恐々としている。

 ところで、ドラマの感想で「何故ネットを利用しなかったのだろう」と書いたが、この話は1994年の話で、今のように猫も杓子もネットをする時代ではなかった。それでもインターネットは普及し始めており、鵜川医師はこの病気の情報は主にネットで収集していた。そういうことでドラマにはそういうアイディアが出なかったのだろう。

 もうひとつ、ドラマで疑問に思ったオカモノアラガイ(カタツムリと同じ陸貝)とコジュケイの関係である。これもやはり小説では詳しく書かれていた。小説のほうでは登場人物はなかなか気付かなかったが、読むほうはだいたいわかるので、ネタバレにならないと思うのですこし書いてみよう。
 ドラマではオカモノアラガイが燐光を放っていたが、小説ではそのほかにもうひとつ特徴をあげていた。「触角」が「肥大」して「別の生き物のように」せわしく「動いていた」という点だ。この特徴からこの寄生虫が思い出された。「レウコクロリディウム」というオカモノアラガイを中間宿主とする寄生虫だが、これが恐ろしいことに、オカモノアラガイに寄生すると目(触覚)を芋虫状に肥大化させ、カラフルでオサレなシマシマにしてしまう。そして、オカモノアラガイを操縦し、木などの目立つところに移動させ、カラフル目をせわしく動かさせて最終宿主である鳥の気を引き、自らを食わせようと操るのだ(参考:写真はクリックすると拡大。動画あり。閲覧注意)。この新型脳炎ウイルスは、この寄生虫と同じような操作をオカモノアラガイにするらしい。おまけに夜行性の鳥の気も引くように身体を発光させる。
 しかし、コジュケイが最終宿主ならば、死んでしまっては意味がない。あなただってせっかく越してきた家が、1週間かそこらで潰れたら困るだろう。ウイルスが外来産なので、感染しても死なない鳥がウイルスの故郷であるインドネシアのどこかにいるのだろう。ひょっとしたら、熱帯雨林のなかにひっそりと暮らしていた未知の鳥が、森林伐採のため絶滅し、宿主を失ったウイルスが人里まで迷い出して来たのかもしれない・・・。

 最後に、堂本看護婦のこの言葉で締めようと思う。民間療法や新興宗教に飛びつく主婦のことを小西が「一般市民ていうか、主婦ってやっぱり馬鹿なんですか。」と言ったことに対しての答えだ。

「こんなことがなければ、みんなちゃんとした常識を持っていて、正しい判断が出来るのよ。考えてごらんなさい。なんだかわからないまま、得体の知れない病気で、家族や知人が倒れていくのよ。そんなものを目のあたりにしていたら、今まで身につけたいろいろな常識が、みんな疑わしいものになってしまう。合理的な考え方が出来なくなると思わない?」

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2006年2月11日 (土)

「人類の月面着陸はあったんだ論」と学会レポート

たろ論オドロンでろでろばぁ、たろ論オドロンでろでろばぁ
ろくに調べずでろでろばぁ、書いて出たのはなんだらばぁ
TVを鵜呑みに本を書き、無知を晒したの誰だらばぁ

それは、
第14回日本トンデモ本大賞受賞作
人類の月面着陸は無かったろう論by副島隆彦 だぁ!

2togakkai  そして、これから紹介する本「人類の月面着陸はあったんだ論」は、上記の本を含めいわゆる「ムーンホークス説」(人類は実は月面着陸なんかしていないと主張するトンデモ説)を、証拠をあげながら素人でもわかりやすく論破したものだ。

 この本は発行されているのを知ってすぐ、読みたくて本屋を探したけど見つからなかった。ネットでなら簡単に手に入るけど、中身をちゃんと見てから買いたかったのだ。だが、最近たまたま時間つぶしに寄った本屋でこれを見つけ(どうやら2刷目が入ったらしい)、内容を確認後即購入した。で、発行(2005年12月15日)からちょいとばかし時間が経ったが、面白かったので紹介することにした。

 で、何故今さら、こんな「アポロ月着陸疑惑」のような老舗のトンデモが、いまどき21世紀の日本を騒がしたかというと、テレ朝系のバラエティ番組これマジ!?」で特集され話題となり鵜呑みにする人が続出したからだ。そして、遂に副島隆彦という学者さんがこの説に取り付かれて上記の「人類の月面着陸はなかったろう論」略して「たろ論」を出版してしまった。まあ、この人といい、某プラズマ大好き教授(驚いたことにアポロ疑惑を肯定。副島さんの専門は科学ではないが、この人はレッキとした物理学者)といい、アタマのイイヒトが必ずしも正しいことを言うとは限らないという標本みたいだが、この間違いだらけで思い込みの溢れる「たろ論」は、出版する前に自分のサイトで発表して、さんざ批判や間違いの指摘をされた。そのせいで意地になったのか老害が進んだのか、よせばいいのに本まで出してしまった。
 しかし、このおっさん、ほとんど調べないで思い込みだけで1冊の本を書いてしまったらしい。私だってこれを何度も検索しながらいろいろ調べて書いているのに、なんで便利な検索サイトすら利用しないのだろう。まあ、そんなことをしたら、本(たろ論)自体恥ずかしくて出せなかっただろうけど。

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