ある朝の通勤電車

　最近、西鉄に事故や故障が多い。ついには車内で何故か火花が散って、せっかく東京から観光に来ていた幼児に大やけどをさせてしまった。その日は朝に上り電車の最後部車両の異常により、ダイヤの乱れが生じ、朝からあちこちに踏み切り渋滞を引き起こしており、それが治まらぬまま車内で乗客にけがさせるという前代未聞の人身事故で、昼過ぎまで交通網に多大な支障を与えた。

　踏切の何メートルか先に電車がいても踏切は開かないようになっているのだと思うけど、こういう事故の時、出来るだけ踏切に引っかからないように停車させることは出来ないものかなと、素人は思うけど、無理なのかな？

　その３日後の夜、また車両トラブルで停止していた。これにもまたひっかかって、げっそりしたが、まあ、帰りを急ぐでもなしだったので、そこまで腹も立たなかったが、かなりグラグラした人もいたのではないだろうか。
　それまでも、踏切や信号のトラブルで一時的に普通になることも多く、それに飛び込み自殺や踏切内車両侵入の電車事故を加え、なんかしょっちゅう止まっているような気がする。

　まあ、個人的には長年お世話になっている私鉄だし、駅員さんもいい人多いし、嫌いではないが、最近ちょっとｇｄｇｄ過ぎる。

　しっかりしてちょ。

　さて、これからが本題である。

　木曜朝、いつもの電車に乗って、最前部車両まで通路を歩来ながら、それとなく乗客を見ていた。多いのは携帯片手で操作している人。あとは連れと話したり、本を読んだり何もせずに乗ってるだけだったり。で、例の化粧する恥知らずもチラホラ。しかし、その中でも究極の恥知らずを目撃して唖然とした。

　鏡を凝視しながらピンセットで眉毛を抜いていたバカ女がいた。もちろん抜き捨てである。

　汚ねぇだろ。それ、鼻くそほじってる親父と同次元だぞ。なんで10分早く起きて家でやんねえのか理解に苦しむ。
　まあ、嫌な気持ちになるんだから、乗客なんて見なきゃいいのだろうけど、視野に入ってしまうものはしかたない。目をつぶって歩くわけにもいかない。
　この時間来る電車は、前にも書いたようにボックス席なのでプライベート空間と勘違いしてそういう行為に及びやすいのだろうが、そこはあんたたちの部屋じゃない。最低限のマナーは守ってもらいたい。

　・・・って、言えたらいいなあ～。

　以前、熟年の女性が、駅のホームで化粧をしている若い女性を注意したら、そいつに逆恨みされて線路に突き落とされたという事件があった。他には車内での携帯電話通話を注意した中年男性が、やはり逆恨みされてその女から痴漢の濡れ衣を着せられたという事件もあった。何れにしても、仕掛けられた方は人生が終わりかねない陰険な仕返しである。うっかり注意も出来ない世の中である。

　さて、気を取り直して電車を乗り換え、件の女性専用車両のいつもの場所に乗った。女性専用といっても、どこかに掲載された写真みたくゆっくりしてはいない。この電車は始発であるが、すでに立っている乗客も多くいた。たぶん大橋駅あたりでは相当満員になるはずだ。
　途中、停車駅の下大利を発車する直前、若い男性二人が走ってきた。彼らは躊躇なく、女性専用に乗ってきた。その様子から、気付かずに乗って来たものと思われた。
「やっちまったな～」
　私はこそっとつぶやいた（ちょっとクール・ポコが頭をよぎったが）。しかし、先々週の出来事から若干不安もあったが、ちょっと様子を見てみようと思った。彼らは無事電車に乗れてほっとしていたようだが、すぐに車内の空気に気付いて周囲を見回した。
「あ、これ、女性専用？」
「そうみたいやね」
「しまったね。次の駅で乗り換えようね」
　二人は照れくさそうに言うと、気を取り直すように雑談を始めた。次の駅で、彼らはほぼ私と同時に降りていった。まさにそそくさと、前の車両に走って行った。

　なんか可愛かった。

　何となくにこにこしながら普通電車の乗り換えた。あの二人のおかげで、その前に見た嫌なものが浄化されたような気分である。

　その後、降車駅はすぐだから座らずにドアの前に立っているのだが、ふと近場の座席を見て、しまったと後悔した。台無しだと思った。

　残念なことに、おっさんが一所懸命に鼻毛を抜いているのを見てしまったとさ。

　とっぴんぱらりの、ぷう。