『20世紀少年最終章 ぼくらの旗』を見てきました。(注意:ネタバレあり)
2時間40分(160分)の大作で堂々完結です。興行成績も良かったようですね。
今回、ちょっと長すぎたように感じました。10分の尺くらいカットしてテンポを持たせたほうが良かったかも。
まあ、160分とはいえ最初の『これまでのお話』で10分くらい、それとエンドロール後の10分間を省いたら2時間20分くらいかな。
それでも、最終章エピソードの多くを回想シーン+言葉の説明で消化しなければならなかったのですが、まあ、元の話が長いしカットできない部分なので、苦肉の策でしょう。それから、エンドロール後の10分、あの話は必要ではあったけれど、その後原作どおりコイズミと神様で締めて欲しかったです。2ちゃんねるの映画作品・映画人板にあった『20世紀・・・』ネタバレスレの1にこんなのがあって、「そうやった、そうやった」と大笑いしました。
- 1 :名無シネマ@上映中:2009/09/06(日) 12:53:29 ID:8z7IMO8C
- 俺、映画館で見た映画の中で、エンディングあんなに
静かになったの初めてだったんだ。
いや、感動はしたんだ。
ただ、全員無言で出て行ったんだ・・・・
公開後ひと月以上経ってるんで、まあ、流石に人がほとんど入ってなかったってせいもあるけど、ほんと、映画終わった後、あんなにどうしたら良いかわからなかったことは無かったです。音も無くただ黒字に手書きで「おしまい」って何よ~~~。エンドロールのコンサートで盛り上がっていただけに、この盛り下がりはどうしてくれるって感じでした。
終わって電気がついて、横の妹とKちゃんを見たら、やっぱり戸惑ってぼうっとしてました。母は・・・どう思ったかわからん。
まあ、あれはケンヂが自分の気持ちに決着をつけるためのシーンなので必要、というか、この話のキモでもあるので無いといけないんだけどさ、また現実世界に戻って小泉の「ボーリングブーム来ないねえ」と『神様』の「ふん! だからまだまだ死ねないんだよ!」と言うセリフと、その後の小泉響子のストライクでバシッと決めて欲しかったですね!
さて、ここから文章を『である調』に変えます。
正義の味方のポジションであったケンヂが、実は『ともだち』の生みの親だったという設定は、アニメ『海のトリトン』の最終回「実はトリトン族がポセイドン族を侵略したことが争いの原因だった」に匹敵する。少年時代、ケンヂはつい誘惑に負けてジジババの店からガムの当たり景品である宇宙特捜隊のバッジを万引きしてしまった。運悪くそれがともだちに濡れ衣を着せることになったのだ。もちろん、ケンヂにはそんなつもりは微塵も無かったのだけれども。
もちろん濡れ衣を着せられた後のともだちの生い立ちは同情すべきことであるし、こどもケンヂのやったことはサイテーである。だが、ケンヂがついやってしまったという気持ちはわかるし、勇気が無くて本当のことを言えなかったというのもすごくわかる。でも、彼はその場であやまらねばならなかった。
実は私も小学校の頃、あるマンガの最終回がどうしても見たくて、でも、それがどうしても持ち主に言えなくて、持ち主の級友が席を外した隙に机から雑誌を出して、ざざっと読んでたら見つかって怒られたことがある。もちろん結末が知りたかっただけで、読んだらすぐに返すつもりで、盗るつもりは毛頭無かったので、謝って終わったが、子どもには抗えない衝動と言うものがあるのだ。(流石に店のものを取ろうと思ったことはないが、幼児期に一度、お祭りでいつのまにか買ったはずのないおもちゃを持っていて、母が慌てて返しに行ったことがあるらしい)
まあ、妙なカミングアウトをしてしまったが、ケンヂの万引は、そういう衝動から魔が差したもので、昨今の万引クソガキのような、ゲーム感覚や小遣い稼ぎではなかったのだ。しかし、窃盗であることには間違いない。しかも、そのせいで級友が濡れ衣を着せられてしまったのだ。その罪は決して軽くない。
だから、この物語は勧善懲悪の近未来SFではない。自分が子どもの頃考えた世界滅亡のヨタ話が現実に起こっていく怖さと、自分がテロリストに仕上げられていく怖さ、そして、とどのつまり、黒幕である真のテロリストである「ともだち」を作ったのは自分がやらかしてしまった犯罪が原因だとわかった時の恐怖と後悔。まさに究極のホラーである。
もしこれが自分の身に起きたことだったら、自分がテロリストになるより怖い後悔の波が荒れ狂う大海原の中、死んだ方がましだと思うだろう。なぜなら、人類を億単位で殺したのは自分の責任だからだ。そういう意味では、復讐としてこれほど効果あるものはあるまい。
だが、恐いのはそれが『ともだち』の復讐だったからではない。彼の真意は本当にケンヂと遊びたかったからなのだ。リアル世界を舞台としたごっこ遊びだったのだ。濡れ衣を着せられてもなお失せないケンヂへの思慕、それはむしろ、それを否定するが如く募る一方だっただろう。いや、それ以上に自分が罪をかぶることによって、ケンヂと秘密の共有をしたとすら考えていたかもしれない。それは、ケンヂの姉との間にカンナという娘を儲けたことからも、その歪んだ友情を察することができる。
おそらく『ともだち』には、リアルに何千何億の人を殺したという意識は無かっただろう。まさにそれはゲーム上での死であり、古今未曾有のジェノサイドでありながら、まったく匂いのしない『死』である。そして、触覚の無い『死』である。それを考えると『ともだち』がケンヂたちの前に姿を現した時の言葉、
「最後には君を『いい者(良い者)』にしてあげただろう?」
という言葉には、戦慄さえ覚える。
最後までお面(覆面)を外せなかった男は、最後まで現実を直視することは無かった。おそらく自分の死が決定的になった瞬間すら。だが生き残ったケンヂは一生それを十字架にして生きねばならないのだ。
ケンヂはバーチャルアトラクションに入らざると得なかった。そこで、自らに決着をつけ、今後生き続けるために。例えそれがバーチャルで自己満足であろうとも。
さて、映画でのともだちの正体は、原作と少し違っている。まあ、ともだちと戦った仲間の中にいるということ、それが原作と同じ名で呼ばれていたことは一緒だが、原作ではホンモノのともだちは死に、途中からニセともだちに入れ替っているが、映画では終始ともだちは同じ人だった。まあ、基本設定は同じと思っていいと思うが。
ヨシツネともだちかもという映画ヴァージョン独特のフェイクは、要らない設定だった様に思う。まあ、違うとは思っていたが(何より体型が違う)、設定的にそれはそれで面白かったのかもしれない。しかし、原作を読んでヨシツネの頑張りを知っている読者にとっては、ヨシツネ=ともだち設定は耐えられないことである。だから万一そうだったら設定改悪にがっかりしただろうし、監督に抗議のメールや手紙が届きまくったにちがいない。
この映画の他での楽しみは、原作マンガのキャラと映画の役者がよく似ているということと、昭和を懐かしむこと、そして有名人のカメオ出演であると思う。
マンガキャラに特にクリソツだったのは、最終章ではコンチだ。もう、マンガキャラがそのまま三次元に現れたんじゃないかってくらい似ていた。流石、ものまねバトルで何度もMVPを取った山寺宏一だけのことはある。カメオ出演では、なんでこんなところにロンブーのあつしがおるねん、てなかんじで、けっこうお笑いタレントが出ていた。
総評は、この長い原作漫画をよく3部作にまとめたものだと思う。原作のイメージを全く損なわず、それどころかまるで漫画の描き起こしのような世界に仕上げてくれた。突っ込みどころも多かったが、総体的には満足度95%の秀作だと思う。5%マイナス分は、やはり最終章の終わり方だ。
思い起こせば懐かしい昭和30年後半~40年前半の世界だが、まだまだ敗戦の影を色濃く残し、貧しくて臭くて毒々しくてろくでもない、しかし、輝く未来の21世紀を夢見た時代だった。
実際迎えた21世紀は日常の延長でしかなく、夢見た世界とはかなりのズレが生じている。しかし、コンピュータん発達による情報処理とインターネットや携帯電話等の通信技術だけ格段に進んだ便利な世界でもある。当然現実的に発達しやすいものは発達し、物理的に難しかったり不可能に近いこと(例えばチューブで空間を縦横無尽に走る道路、超小型原子炉、光速あるいは超光速航法やタイムマシンなど)は、実現の影すらみあたらない。
日常に繋がらない未来は無い。
20世紀少年という物語は、非日常が一人の男の妄想から現実化してしまった、日常から切り離されたディストピア(アンチユートピア)な世界なのである。
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コメント
下の子と一緒に見に行く約束をしていますが、未だに果たしていません。テキは今月誕生日なので、再度執拗な攻撃が始まることが予測されます。
この間テレビで2週連続でやってたけど、まとめて見ないとちょっと判り辛いかなって気がします。
浦沢直樹って、話がどんどん広がっていって収拾がつかないところありますよね(誰かのblogにもその傾向があると言わないで!お願い、わかっちゃいるけどとまらないのよ)。今、モーニングで連載しているコウモリのマンガも西洋史かよ、といいたくなるようなストーリー展開。下山事件からユダまで、挙句にゃ忍者ハットリ君かよ!
投稿: drac-ob | 2009年10月 6日 (火) 22:58
成績ってなに?
投稿: BlogPetのぽち子 | 2009年10月 8日 (木) 14:40
drac-obさん、こんばんは。
映画、行くなら急がないと終わってしまいますよ。
私は原作を好きなんで、面白く見れたけど、どんなもんでしょ。
話が広がって収拾つかなくなるのは、私も似たようなものですが、浦沢直樹センセと比べるのもおこがましい気がします。
収拾つかなくなるといえば、永井豪センセがいますが、浦沢さんは放りっぱなしにせずちゃんと収拾をつけてくださいますから。
ビリーバットはまだ未読ですが、「さぞやながい話になるだろうねえ。by西原理恵子」。
面白そうですけどね。
投稿: 黒木 燐 | 2009年10月 9日 (金) 01:25
>ぽち子
面倒くさ・・・もとい、難解なので、今回は宇井木辺出亜さんにお答えいただきましょう。
成績
・スポーツにおける評価の指標のこと。
・営業職の挙げた成果のこと。
・学校における学習など活動成果についての評価のこと
・成績評価を参照
・試験における点数のこと。
投稿: 黒木 燐 | 2009年10月 9日 (金) 01:36