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2009年2月24日 (火)

映画『感染列島』を見てきました。

 まず、思ったより良い作品だったと思います。病院の様子とか防護服の様子とか改めて映像で見れて良かった。
 リアリティに関しては微妙でしたが、人のことは言えんがな( ´・ω・`)。

(以下、ネタバレも含みます。今から見ようと思っている方は、読まないほうがよろしいです)

※エボラウイルス関連はこちらが詳しいです。→エボラ出血熱のこと

 ただ、突っ込みどころも多かったです。挙げるとかなりの量になりますが、列記してみましょう。

  • 感染力が強く、瞬く間に日本中に何万もの感染者を出した疫病が、まったく海外に飛び火しなかった。

     少なくとも韓国や中国あたりには飛び火するのではないか。韓国あたりで「日本に天罰が下った」とかいう連中もいたようだが、本来なら日本に逼迫するほどの犠牲者が出るはずで、そんな余裕はないだろう。ついでに北朝鮮の金王朝も完全に崩壊、そこから流れた難民が、中国に集中してウイルスも移動、中国でもアウトブレイク。すごいことになりそうです。
     また、飛行機だと日本から12時間程でヨーロッパに、24時間以内に各国主要都市の多くに着きます。少なくともその何カ国かに感染者が入国していると思う。
     まあ、そこまで描こうとすると大変な大作になるので避けた可能性もあるが、不自然だと思う。
     
  • 東南アジアのアボンとかいう国(うろ覚えだったんでウィキペディア見たらあってました。あぼんって、まじか)で医療活動をしていた医師が感染して帰国。彼が持ち帰ったウイルスが、感染爆発を招くのだが。
     
     えれぇ長い顔のオッサンだなと思ってたら、嶋田久作だった(笑)。って、気づけよ。
     彼が日本でのインデックスケース(指針症例)になるのだろうが、空港に着くまでにあちこちで咳をしたり吐血しまくってたので、スーパー・スプレッダー(ばら撒き屋)でもある。特に駅で大量に吐血したために、そこに居た人の一部が感染。彼らが各地にウイルスを持ち込むことになった。
     しかし、あの状態でアボンに帰れたのが不思議。やはり入国は厳しくても出国は簡単なのかな。
     また、医師ならば、アウトブレイクしたところから帰国するとどういうリスクを伴うか想像がつくはずで、最低でも日本帰国中に症状が出たときに、保健所に届け出て隔離されるべきだった。すくなくとも、彼はこの病気の危険さや感染力を知っていたはずだ。いくら海外の貧しい国で働く立派な医師でも、このような感染症を持ち帰り日本国内に広めてしまった罪は重い。いや、それ以前に、アボンで疫病が流行っていることを帰国ついでに、何故WHOなり国連なりに訴えんのかと。
     因みに、飛行機の乗客一人がインフルエンザに罹っていたために、乗客とクルー全員が感染してしまったということがあった。なんで、発症後にこの医師が乗った飛行機の乗客やクルーに感染しなかったのかも疑問である。結果日本だけでない、文字通りパンデミック(世界的流行)になっていたはずである。
     
  • ちょうどいいとこで雨や雪が降りはじめて、ドラマを盛り上げてた。
     
     まあ演出上の話ですが、かなり気になったもので。気象はわたしも盛り上げに使うけど、映像であまり露骨だとリアリティがないわなと。そんだけ。
     
  • 復旧早すぎで不自然。せめてその描写は1年後くらいにすべきだった。 
     
     半年程度だと、まだワクチンも出来ているか出来ていても普及しているかどうかもわからん。抗体(血清)療法が有効だったとしても、制圧できるほど有効かもわからない。事実、最初に提案し自分で試そうとした小林医師は、同じ療法で助かった茜より病状が軽かった(ようにしか見えんかったのよ)のに、効果なく死んでしまった。
     また、暴動でインフラがかなり破壊されていて復旧もまだ完全ではないだろうし、人々の心の傷も事態が終息に向かった頃から顕在化し始めるものだが、そういう後遺症も描かれていない。とにかく明るいエンディング。時間がないにしても、何らかの表現方法があったはず。う~~~む、もったいない。
     
  • 松岡と仁志教授が海外渡航規制の厳しい中、アボンに行った。
     
     そこらへんの経緯(どういうルートで許可を得たか)はよく覚えていないのですが、なんとなく非合法っぽかったと思うのですが、いずれにしてもよく許可が下りたなと。だって、一番のホットゾーンに勤務する医師ですぜ。無許可ならよく出国出来たなと。
     
  • アボンの疫病が流行っている島で冷凍工場内に潜んでいた発症者たちが松岡を襲う。

     まあ、助けを求めているんだろうけど、ゾンビが襲っているようにしか見えなかった。それはいいんだけど(いいのか?)、あんなに感染者に囲まれ、触れられマスクが外れかかった状態なのに、松岡は感染しなかった。すごい。小林医師は、逃走中の感染者にぶつかっただけで感染してしまったのだけど。
     
  • 病院内で、看護師のおネエさんが娘にケイタイメール。
     
     まあ、親子の情愛を見せる感動シーンなのだけど、いいのか、院内で携帯電話使用。それに、携帯電話がウイルスで汚染されてないかと終始心配した。そのせいかどうかわからないが、安藤以外のスタッフでは彼女だけ感染して死亡(でも、製作者の術中にハマって涙でたけどorz)。安藤医師は、最初に患者の血を顔面に浴びて感染して死亡。お約束である。
     
  • 素人考えだけど、鳥インフルとはいえ、病状が劇症過ぎないかと(最初の方では鳥インフルと考えられていた)。
     
     他の感染症は疑わなかったのかな。あれで出血熱を疑うのは素人ってことですかそうですか。
     しかし新型とはいえ、インフルエンザの変異ウイルスなら何がしかの抗体に反応するんじゃないかなと。まあ、確かにウイルスが見つからない限り、未知のウイルスと想定するのは危険かも。
     
        ・・・はっ( ̄Д ̄;; ヤヴァイ。気がつかなかったことにしよう。
      
     いずれにしても、治療法がないのは一緒だから形勢は変わらないけどね、もっと早くインフルじゃないことだけでもわかれば、養鶏場のオーナーは自殺しなくて済んだ。
     
  •  で、どう収集をつけるかと思ったら、回復者の血液を輸血し抗体を取り込むという方法で乗り切った。

     これについては上の方も触れたが。
     映画で小林医師が言ったように、1995年に再びエボラ出血熱がザイールを襲ったとき、ムエンベ博士たちが一か八かで行った療法だ。このときも、抗体だけを取り出す設備がなかったため、輸血で行われ、8人のうち7人が回復した。血液をそのまま輸血することは、抗体だけでなく他の病気までもらってしまう可能性があり、非常にリスキーなものだが、デッドオアアライブな状態では、有無を言っていられない。
     で、映画内でもそれが成功し、その治療法でその後の治療がなんとかなったような感じだった。
     しかし、茜ほどの末期状態だった場合回復は無理だと思うし、輸血してすぐに結果が現れるのもリアルではない。要はワクチンと同じで、抗体が有効になるにはある程度の時間が必要なのだ。
     
  • 小林医師、綺麗に死にすぎ。
     
     安藤医師役の佐藤浩市や茜役の夏緒ちゃんまでが、血を吐きながらのたうって周囲血だらけにして苦しんでいたのに、壇れいときたら・・・。まあ、人によっては症状も違ったりするんで、まあ・・・いっか。
     
  • ブレイム・ウイルスって、どんだけ自虐的なんだよTBS
     
     ブレイム(blame)の意味は、『神の裁き』(おそらくキリスト教的意味で、元々の意味は非難とか責任)らしいが。いかにも天罰的な名称で、お隣の国が喜びそうな名前である。まあ、誰ともなく呼び始めたっていう通称らしいけど、結局、通称が正式名になってしまったようだ。って、いいのか?普通発生地の名前をつけるだろう。ってことは、アボンウイルスか。あまりにも2ちゃん的ですが。
     それと、普通ブレイムなんて名前が操作無しでつくとはあまり思えないんですよ。誰かがテレビか何かの媒体を使って言ったのが広まったのかな?普通なら『いずみ野病』とか言われるんじゃないかな。
     疫病は天罰とは関係ない。そこのトコ間違えないようにしないと、エイズの時みたいに、罹った人間の罪と受け取られ罹って当然みたいな風潮になりかねない危険がある。 

     

 思いついただけでこれだけある。他にも、ガス欠の車はどうしたの、とか、帰りはどうやって帰ったの、とかこまいコトも色々あるけどこれくらいにしておこう。まあ、自分が今書いている小説も突っ込みドコロ満載なんですけど(自分でも変な箇所とかわかるから、人にはもっとわかるだろうなと)、それは棚に上げさせてもらいました。

 さて、映画自体はTBS制作のオリジナルであるらしい。見ていて参考にしているなと思ったのは、篠田節子の「夏の災厄」、映画「アウトブレイク」、ブレストン「ホットゾーン」、あとエボラについて書かれたローリー・ギャレットやエド・レジスの本当たり? あと、専門家の方に色々アドバイス受けてるんでしょうね。羨ましい・・。

 東南アジアのある国が感染源で、そこに主人公達が行くというのは「夏の災厄」を思い起こさせた。オマージュかもしれないけど。ウイルスは悪いヤツか?という仁志教授の意見には同意。ウイルスvs人間ってのも生存競争の一環ですな。
 それから、(形態からすると)ブレイム・ウイルスがエボラやマールブルグと同じフィロ・ウイルス科であり(最近の電子顕微鏡はウイルスを殺さなくても見れるのかな?って、生きとったらアブナイやろ)、そのウイルスが東南アジアのコウモリから分離されたというのも、ツウがニヤリとするところであろう。エボラやマールブルグウイルスの宿主がコウモリだろうということは、以前から言われていたし、サルは発症したが幸い人には病原性を持たなかったが空気感染する疑いのあるエボラ・レストンは、フィリピン産のカニクイザルから発見された。ここら辺はブレストンの「ホット・ゾーン」に詳しく書かれてある。だから、そこらへんの国に、人に病原性を持ち空気感染する出血熱ウイルスがいる可能性がないとは言えないのだ。但し、エボラなら抗体検査ですぐにわかると思うから、やっぱ新種なんでしょうね。しかし、宿主発見時の仁志教授、コウモリの羽根を広げてわははは・・・って怖すぎ。

 特筆すべきは、カンニング竹山と爆笑田中がなかなか良いキャラを演じていたということだ。お笑い侮りがたし。田中は相方の太田に「こいつはウイルス役だから」とか言われてましたが、なんの、しっかりと父親役をこなしてました。竹山は、フリーのウイルスハンターでブレイム・ウイルスを一人で地道に発見したのに、手柄を国に横取りされた形で国の機関に取り込まれるという、かっこいいんだか情けないんだかわからない役で、キャラから外れてなくてなかなかよろしい。

 しかし、思ったより良かったとか言いながら、こんなに文句ばかり書いてしまいました。まあ、そうこう言いながらも見ている時はけっこう必死で見ていました。また、こうやって疑問点を検証出来るという、機会も与えてくれたし、結果的に良かったと思います。

 しなさん、誘ってくれてありがとう。 

感染列島公式サイト
http://kansen-rettou.jp/

 いまさらですが、便乗します。

   こちらもよろしく。
   http://kuroki-rin.cocolog-nifty.com/novel/

     ウイルスパニック小説です。

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コメント

いや~燐さんが色々参考に(?)なったようで良かった、良かった。

なんだかんだとあるでしょうが、まぁ私の意見としては、妻夫木はいくつになっても可愛いなっと・・・

あぁ~ 
おばさん発言~

投稿: しなさん | 2009年2月24日 (火) 20:32

しなさん

土曜はどうも。楽しかったです。

ところで、私は妻夫木の顔を覚えられません。
映画「どろろ」もちゃんと見たのに、何ででしょう?
私は最近、長瀬智也がかわいいと思います。
「ゴチになります」の再放送で、彼のお馬鹿な面を見てからです。昨今お馬鹿キャラが受けるのが判る様な気がしました。

お互い、中身まですっかりオバサン化しちゃいましたね(笑)。

投稿: 黒木 燐 | 2009年2月25日 (水) 12:38

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