映画『20世紀少年』を見てきました。
おすぎがあっちこっちで「クズ映画」と吹いてまわってたので、ちょっと心配でしたが、何の何の、想像以上の出来でしたよ。あの手のマンガ原作ものの中では秀作ではないかと。うん。
まず、構成や演出上変えたところもありますが、基本的に原作にかなり忠実。キャラクターも原作によく似ていて(特に子ども時代。さらに特筆に価するのは最悪の双子ヤン・マー兄弟。まんまでした。ただ、主役のケンヂは、世紀末編では唐沢さんよりも見た目は爆笑問題の太田がそっくりなんだけど、主役は見た目だけじゃ選べないか)、しかも、構図までほぼ同じシーンもあり、原作ファンはそれだけでも見る価値があると思います。ここまで忠実に実写化してもらえたら、原作者としては、感無量だと思います。
まあ、難を言えば、時に画面が意味不明(演出や効果とはとても思えないって意味で)で荒い時や、昔の映画のフィルムが劣化したようにコマ送りのような効果(?)が気になりました。あと、黒木瞳じゃキリコには若すぎじゃねえか?(ユキジ役の常盤貴子も若杉建設だったし)ってのと、最後「血の大みそか」のロボット大回転もとい大爆発がほぼ小型核爆弾レベルだったってこと(都庁やらが吹っ飛んでた)。あれで生きてる(ネタバレ?)ケンヂやともだちは不死身のバケモノですがな。オッチョもあの位置だと危ないよな。ってゆうか、伏せろよと。う~ん、それから、羽田の爆発がちとチャチっぽかったかなと。国会議事堂の爆破は、まあリアルだったかな。爆破後の国会議事堂はわりと良い出来だと思った。
それから、最後の・・・というか2章へのつなぎのシーンで登場の成長したカンナ。いくらなんでも老けすぎでしょう。どう見ても20歳半ばにしか見えん。その時の彼女は16・7歳のはず。ともだち暦編でも20くらいだし、叔父をテロリストに仕立て上げられて社会を憎んでいるにしちゃあ、明るすぎかな。カンナには影がないと。でも、暗くて後味の悪かった「血の大みそか」のあとだったから、何となくほっとしたのも確かでした。
で、その「血の大みそか」の「巨大ロボット」のシーンは大迫力。あのハリボテのキャタピラ移動ロボが、細菌(映画では細菌に統一したっぽいです。2章でウイルスになっとるかも知れませんが)を撒き散らし、警官達をなぎ倒して進むシーンはかなり怖かったです。バイクの二人乗り兄ちゃんたち(オリエンタル・ラジオ)も血を吹いてぶっ倒れるけど、そのあたり映像はかなりリアルでしたが、ギル先生にも指摘させてます(小説館次回アップにて)が、感染症の場合ああやって感染の瞬間に即死することはないんですよね。潜伏期間があるし、それだから生物兵器の意味がある。だから、恐怖を煽るために一緒に強力な毒薬を仕込んでいるんじゃないかって勝手に解釈しました。毒で死ななかたった人も何れ疫病で倒れるとか。
映画自体は、昭和ノスタルジー物と、自分が子どものころ考えた与太話が次々と現実化していく恐怖の不条理物、”ともだち”の正体を突き止める推理物、カルトの恐ろしさ、怪獣物の迫力、そしてバイオハザード物、あらゆる要素が堪能できるって感じでした。
特に昭和の少年時代ですが、ケンヂたちと私は同年代(昭和34・5年生まれ)なので、原作の方を読んでいてもそうだったけど、もう懐かしすぎて・・・。
万博に行きたくて行けなかったとか(この件は第1章ではまだ描かれてない)、アポロ月着陸の時の映像とか(当時の私はそこまで宇宙に興味がなかったので、リアルでは見ていなかったと思います。でも、ニュース映像は覚えています。なんか、荒い映像で、宇宙飛行士に背景が透けて見えて、不思議な映像だと思った記憶があります)、少年雑誌の「地球滅亡特集」を見て大騒ぎするとか、秘密基地こそ作らなかったけど、あの頃の空気が満喫できました。子ども達も、当時のガキどもらしく、みんな小汚く薄汚い。でも、今の子を使ってるから、なんとなく垢抜けてんのね(笑)。それにしても、ドンキーの鼻水はリアルだったわ。しかも、子ども時代と大人時代の役者がもうクリソツ。他の子も大人時代と似た子を選んでましたが、一番似てましたね。
このマンガ、外国でも人気があるというけど、日本人しかわからない細かいネタがわからないと、なんか、単なる不条理物ではないのかな。ま、人気あるのはいいけれど。
で、これは映画にとって良い事か悪い事か、多分両方だと思うけど、いろんな有名人がカメオ出演しています。上にもちょっとオリラジとか書いたけど、ほかにタカトシとか、研ナオコ(役柄書かないけど似合いすぎて爆笑)、チョーさん役のゴリさん(竜雷太)、ピエール一文字役の竹中直人、友民党の宣伝タレントに山田花子と藤井隆、あと、藤井フミヤとか及川光博とかデーブ・スペクターとか遠藤憲一(けっこう重要な役)とか・・・。オファーした人もいるんだろうけど、本当にチョイ役で出てたタレントは、きっと出たがったんだろうな。
タレントではないけど、個人的には、キリコ(ケンヂの姉)の婚約者の名前が「諸星 壇」だったのに吹いた。原作では「諸星」としか出てなかったけど、下の名「ダン」だったのか。って、謎が謎を呼ぶシーンで笑わせてどーする(爆)。気持ちはすっごくわかるけど。
ま、映画館で見なくても、来年正月早々には第2部が上映されるだろうから、年末の特別ロードショウとして、第一部をやるかもしれん。その時まで待つのもいいけど、「血の大みそか」のシーンはテレビ画面じゃ堪能出来ないかもそれません(かえってチャチぃかも)。
まあ、とにかく私的には充分合格な映画でした。原作知らなくてもそれなりに見れるんじゃないかな。
それと、エンディングにかかる、唐沢寿明(主役のケンヂ役)歌うところの『ボブ・レノン』、なかなか良かったです。原作者が歌ってたのは、コミックスのおまけCDで聞いたことがあるけどね。あれ? どこにしまったっけ???
と、ここまで書いて、おすぎがこれをクソ映画と酷評した理由の一部がわかったような気がした。彼女は、ああいう風な少年少女時代をすごしてないんだよね、きっと。サンデーもマガジンも読まなかったんじゃないかな。月着陸に心をときめかせたこともなかったんだろうし、万博に行きたいとも特に思わなかったんだろうね。
原作自体は、途中ダレたし、最後も賛否両論あります。内容も子どもの妄想が現実化してしまった世界で、特に「ともだち暦編」(おそらく映画では第三部)は、あまりにも馬鹿馬鹿しい世界だ。子どもの考えた世界だからね。でも、そこに、この話の面白さもあるわけで、それだからこそ、この「20世紀少年」の世界が成り立つのでしょう。
思い切って3部作にしたとはいえ、20世紀少年~21世紀少年併せて全24巻の原作だから、はしょり気味な面もありましたが、これはしかたがないでしょう。いずれにしても、次章を楽しみにしたいと思います。
映画『20世紀少年』公式サイト
http://www.20thboys.com/index.html
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コメント
見たい映画ですね。予告編をテレビで見ていたら、次女が興味を持ち、一緒に行くかと話しています。
しかし、T-REXがいきなりテレビから流れてくるとビックリします。あれ「20世紀少年」じゃなくて「チルドレン・オブ・ザ・レボリューション」のイントロじゃないっけ?
投稿: drac-ob | 2008年9月13日 (土) 23:29
さすがに『諸星 弾』ぢゃないのね(爆)本編ではカタカナだけど、企画書は漢字だった。
ブックオフでさえ原作を大人買いする余裕が無いので、映画を先に実家で見る羽目になるかもしれん(^^;)
投稿: bergkatze | 2008年9月14日 (日) 00:27
良かったようですね。
私も見に行こうか、どうしようか悩んでいたところです。
おくりびとも良いかなあ・・・
グーグーだって猫であるも見たいなあ・・・
パンダフルライフも癒されそうだなあ・・・
と考えながら、一日に2本はきついかなあ・・とまだ悩んでいます。
昔は映画と言えば、2本立てだったんだけどねえ。
洋画も見たいのがあるので、もう少し悩みます。
投稿: しなさん | 2008年9月14日 (日) 12:27
drac-obさん、
予告編だったら、あれは、やっぱり「20世紀少年」で合ってますよ。
http://jp.youtube.com/watch?v=n3RVxtgyhHM&feature=related
原作読んでないと、わかりにくいところがあるかもしれませんが(私は読んでるので無意識に補充してるかもしれない)、未読でも面白かったって人も多いので、まあ、試しに観に行ってください。
投稿: 黒木 燐 | 2008年9月14日 (日) 15:32
bergkatzeさん
いっそ、原作を読まないで前知識ナシで映画を見るのもいいのではないでしょうか。
原作長いですから。
読み始めたら、無理してでも全巻買ってしまうかもしれませんよ。
投稿: 黒木 燐 | 2008年9月16日 (火) 02:07
しなさん
「20世紀少年」は、見る人によってホント賛否両論に分かれるようですから、是非!と言う感じではお勧めできません。
『グーグーだって猫である』は、内容は映画オリジナルのようですから、原作ファンの場合見たらがっかりするかもしれませんし、猫の活躍を期待してもがっかりするかも。なんか、アシスタントの恋愛ネタが主になるみたいですよ。キョンキョンが好きなら、見に行って損はないと思います。
投稿: 黒木 燐 | 2008年9月16日 (火) 02:14