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2008年8月10日 (日)

「『米国炭疽菌テロ事件』、犯人の自殺で幕」について考える

※これは、テロと分類するには事件の性質を考えると微妙ですが、全米を震撼とさせ一部でパニックを引き起こし、無関係の人を多数殺したということから、私は「テロ」と考えます。

※一部修正しました(8月17日)。


 
 昨日は小説を書き上げてから、原爆忌のことを書こうと思っていたが、ちょっと気になったので、先ず、こっちの方から書くことにした。小説については、今回アップ分の2/3以上を書き上げているので、今日中にはアップできるでしょう。しばしお待ちを・・・。
 この事件は、小説の方でもギルフォード教授に何度か触れさせるつもりで(一度目は終わっている)、今後もその予定ではあるが、内容が被るのを覚悟で(というか、こっちを読んでくれる人の方が多いか)ここに、私の簡単な推理というか意見を書いてみようと思う。

 さて、この事件は、9.11テロから間を置かずに起きたこと(最初にNBCに炭疽菌入り郵便物が届いたのは9月18日)、事件の特異性や、初めて死者を5人出して成功したバイオテロであること(オウムはバイオテロの方は完全に失敗している)、そして、犯人の自殺で幕を閉じるという、いかにも劇的な展開をしたため、すでに出ていた陰謀論に拍車をかけることにもなりそうだ。

 それで、私は陰謀論とは違った、オーソドックスな、クソ面白くも無いような、それでいて真っ当に思われる説明をしてみようと思う。但し、私はあながち見当違いではないだろうと思っている。

 まず、炭疽菌(たん-そ-きん)についてやや詳しい説明をしよう。

 炭疽菌は学名を「Bacillus anthracis」という。バチルスというのは細菌という意味ではなく、棍棒という意味で菌の形が棍棒のような形をしたいわゆる桿菌のことだ(丸いヤツは球菌という。って、そのまんまやん)。英語では「アンスラクス」。語源はギリシャ語のanthrax(木炭・石炭)からきているらしい。皮膚炭疽に罹った場合、幹部の中心部が炭のように黒くなるからである。
 日本語の炭疽菌の「炭疽」というのは、「炭」はやはり皮膚炭疽の特徴からで、「疽」は壊疽や人面疽で使われるように、悪性のデキモノのこと、つまり炭のようなデキモノという意味だろう。

 菌の名称からもわかるように、普通炭疽菌が起こす病気は皮膚に病変を作る皮膚炭疽で、これは放置すると致死率が急に上がるが、ちゃんと抗生物質で治療すれば、まず、恐れることはない病気だ。炭疽菌が起こすのは、このほかに感染生肉を食べて罹る「消化器炭疽」と芽胞状態の菌を吸い込んで罹る「吸入炭疽(いわゆる肺炭疽)」とがあるが、自然感染では非常に珍しい症例である。消化器炭疽、吸入炭疽の順に危険度が上がる。吸入炭疽に至っては、致死率90%と言われてきたが、この炭疽菌テロで、早いうちから正しい抗生物質で治療を行えば、救命率が格段に上がることがわかっている。
 この菌は特殊なものではなく、自然界に普通に存在する土壌細菌で、普通は家畜が罹る感染症である。時折放牧している家畜から人間に感染して罹るのが一般的だった。特に、吸入炭疽は、羊の毛についた菌が、刈った羊の毛から巻き上がった炭疽菌を吸っておきるのが普通だった。しかし、いつの頃か、この細菌が、生物兵器として脚光を浴びることとなった。何故か?

 それは、炭疽菌の特徴にある。それは、彼らが死にそうな状況に陥ると、普通の長さ10μm(マイクロメートル、1μm=1/1000mm)幅1μmの栄養型から1~2μmサイズの芽胞(がほう)という特殊な丸い形に変形するからである。詳しい説明は小説の方ですることとして、一旦芽胞になると、栄養も水分のないところでも生き延び、低温や高温にも耐えられるようになる。また、芽胞状態の間は生物として活動しないので抗生剤も効かなくなる。そして、再び生存できる環境になるまでじっと待つのである。そして、この過酷な状況でも死なない芽胞という状態になることが、生物兵器として注目されたのだ。芽胞状態のときは、生物としてではなくモノとして扱えるから、兵器に仕込みやすいし携帯するのにも便利だからだ。
 炭疽菌の研究は日本の731部隊が有名だが、米英や旧ソ連でも兵器としての研究に力を入れていた。英国のグリニャード島の大規模実験は有名である。おかげで、人が再び住めるようになるためには、大変な労力と年月がかかった。
 ソ連では1979年、研究員が換気口のフィルターを入れ忘れたために、風下に住む近隣の住民が吸入炭疽を発症し、60人(多分実際はこの数よりはるかに多いだろう)以上死亡するという、悲惨な事件が起きた。これが、スベルドロフクス事件である。
 米軍が731部隊幹部の戦争犯罪を問わないことの引き換えに731の資料を全部掻っ攫っていったことは、有名だが、そのノウハウが米軍の生物兵器研究にも生かされている。

 炭疽菌は、ペニシリンのような古いタイプの抗生物質でも治療が出来るが、この炭疽菌テロではシブロシロキサシンという抗生物質が主に使われた。それ以外でも有効な抗生物質はあるのだが、CDCがシブロが有効であることを強調したため、人々はそれに殺到し、在庫切れというデマが飛び、ネットで法外な値段で買ってしまう人まで現れた。しかし、安易な抗生物質の多用は耐性菌を作るリスクを増やすだけである。特に、感染してもいないのに飲む必要はない。抗生物質はひとつの細菌のみ有効なのではなく、それぞれに得意な分野の細菌がある。感染もしていないのに飲むのは、腸内の善玉菌などにも影響し体調を崩すことにもなりかねない。
 ただし、今回はそうではなかったが、兵器としての炭疽菌にはそれこそ抗生物質に対する耐性菌も存在する。この場合、有効な抗生物質がかなり限定される。
 感染した場合は抗生物質だが、予防のためには副作用の少ない不活性ワクチンがある(但し、メチャクチャ痛いらしい。接種後はしばらく腕が上がらないそうな・・・)。湾岸戦争のときは米軍の兵士達はワクチンを摂取させられた。ワクチンは逆に感染してしまった場合には効かない。

 さて、前置きが長くなったので、炭疽菌についての続きは小説内のギルフォード先生に任せて、本題に移ろう。

 炭疽菌テロの真犯人が起訴前に自殺した。

 ―これは、いかにも陰謀めいた話だ。口封じ・・・とは思わなくても、納得のいかないと思う方が多いのではないだろうか。しかし、私は、FBIの見解はあらかた間違っていないと思う。新ワクチンの効果を知りたかったというテロの理由はちょっと疑問だが(あれくらいの感染者数で新ワクチンが試されるとはあまり考えられない)、多分そう結論できる理由があるのだろう。
 しかし、真犯人が死んでしまっては、菌の入手方法や事件を起こした動機など、全てが闇の中に消えてしまった。犯人としては最高の嫌がらせである。レベルとしては、掲示板に悪口を書いて先生に怒られたのを逆恨みして、あてつけに恨みつらみを書きなぐった挙句「停学は僕には重すぎる」とデカく書き置きして死んだ高校生と、あまり変わらないような気がするが。
 それは置いといても、追い詰められた犯人が自殺を図ることは珍しくない。まさにデッドオアアライブな気持ちになるのだろう。そういえば、「てるくはのる」ってヤツがいたなあ。いずれにしろ、自殺は自分の罪を償う上でい一番卑怯な逃避方法である。
 まあ、彼は結果罪の無い人を5人も殺しており、社会も大混乱させたので、終身刑か死刑はまぬがれなかっただろうが。

 先ず、何故犯人が9.11テロの直後に事件を起こしたか、だが、おそらく、この時期にやれば必ず、まず間違いなく同テロと関連付けられるだろうと思ったのだろう。実際、最初はその可能性は否定されなかったし(ただし、テロ専門家は初期から極右の犯行ではないかと考えていた。すなわちイスラム関係のテロとは考えていなかった)、日本でも未だにイスラムテロと思って疑わない方も居られるかもしれない。 

 そして、犯人は、テレビ局宛の郵便物に炭疽菌を仕込んで投函した。ターゲットはNBCとABCの二つのテレビ局。両方とも米国では大手のテレビ局だ。テロの標的としては充分な相手である。

 完全に封がしてある封筒から漏れ出た微量の炭疽菌芽胞から感染する・・・。それは、これまでの炭疽菌に対する常識を覆すものだった。たしかに1μmの芽胞なら、紙の繊維の間なら簡単に通過するだろう。しかし今までは、ある程度のまとまった菌を取り込まなければ感染発症しないと思われていた。
 そして、おそらくこれは犯人も予想していなかったのではないかと思う。 

 犯人にとって、ターゲットやその周囲以外の人が感染することは、想定外だったのではないか。実際、犯人の持ち出した炭疽菌ならば、もっと多くの人を殺そうとすれば出来たのだ。地下鉄の通風孔に撒けば、多くの人が感染をして、犠牲者の数は数百人にのぼったかもしれない。それでなくても、それだけ軽くて舞い上がり撒き散らしやすく加工された兵器レベルの炭疽菌だ。あらゆる公共の交通機関の床にばら撒いておけば、これまた数多くの犠牲者が出たことだろう。それは乗客の靴や衣類についてありとあらゆる場所にばら撒かれる。そして、感染源の特定も分散され、捜査に時間がかかると共に、狙われた街は、しばらく機能を停止するだろう。炭疽菌除去に時間がかかるからだ。そして、全住人達は抗生物質を飲み続けねばならない。その日数は60日。芽胞に抗生物質が効かないため炭疽菌暴露後50日以上すぎて発症した人がいるためだ。
 それをせずに、郵便物に仕込んだということは、不特定多数を狙ったテロというよりも、要人を狙った暗殺に近いテロのやりかたである。

 芽胞状態の炭疽菌は、1~2μmと小さいが、このサイズだからこそ、肺胞にたどり着き吸入炭疽を起こさせる。しかし、普通、芽胞の周りは電位を帯びていて、ひとつひとつの芽胞はくっつきやすくなっている。その電位を取り払って、芽胞のひとつひとつを分離させ、さらさらの状態にする方法に成功した機関があった。それを見つけたのはメリーランド州の米国陸軍基地、フォート・デトリックのパトリック博士、1960年代のことである。
 テロに使われた炭疽菌はエイムズ株と言う、わりと一般的な菌株だったが、そういう加工がされていることから、米軍から持ち出された可能性が強くなった。その技術は米国の極秘技術とされ、他国には一切知られていないからである。 

 そして、犯人はダシェル上院議員あてに炭疽菌を仕込んだ手紙を送った。ダシェルの事務所では郵便物から白い粉が出てきたため通報、オフィスやビルの数箇所から炭疽菌が検出され、当該ビルを含む3棟が閉鎖され、米軍による除菌作業が行われた。CDCは、そこまでする必要はないだろうと米軍のやり方を批判したが、炭疽菌についてはそれくらい用心しないと安心できないことは、米軍が一番知っていた。芽胞は軽く広範囲に飛散し、わずかに生き残った芽胞から感染する可能性があるのだ。
 送られてきた手紙には、炭疽菌と共に、いかにもイスラム系のテロリスト然とした、ステロタイプな短い声明文が同封されていた。その後、レーヒー上院議員宛に4通目の炭疽菌入り郵便物が送られた。

 そして、それらの郵便物が今までの炭疽菌に対する常識を覆す大事件に発展した。その郵便物を集配していた郵便局員から炭疽菌感染者が出て、死亡者まで出てしまったのだ。
 手紙から漏れ出した微量の炭疽菌の芽胞が、局内で撒き散らされ、それをほんのわずか吸い込んだり肌に触れたたりした人に、吸入炭疽や皮膚炭疽を起こさせたのである。さらに不思議だったのは、死者の内2人の女性は郵便・メディア・政府何れの関係者でもなかったことである。二人とも、件の炭疽菌に暴露されるようなリスクは微塵も無かった。結局、封筒からもれた炭疽菌芽胞が彼女ら宛の郵便物に偶然付着し、不幸にもそれを吸い込んだのだろうと結論された。そのわずかな芽胞・・・ひょっとしたら1・2個の・・・から感染して死に至ったのである。さすが生物兵器と言うか、信じられない感染力である。 

 危機管理意識は日本の比ではないアメリカである。炭疽菌テロに対するマニュアルはもちろんあった。しかし、それは、広範囲に炭疽菌がばら撒かれた場合を想定したものだった。まさか郵便物に仕込んで送るなどという、地味なテロ手段は考えもしなかったのだろう。マニュアル社会は想定外の出来事に弱い。9.11では乗っ取られた旅客機が高層ビルに特攻するし、2001年のアメリカは想定外のことだらけでとんでもない厄年だったといえよう。

 そして、政府とCDCの対応は全て後手に回り、声明を出した端からそれを覆す事件が起きた。それまで「アメリカはひとつ」というフレーズを繰り返し、テロに屈しないと一致団結して政府に追従し、異を唱えようものなら容赦なく「非国民」扱いしてきた米国民から不満が出始め、政府のやり方を避難する傾向にシフトして行った。せっかくまとまった米国の一枚岩は、この炭疽菌テロによってどんどんヒビが入っていったのである。

 政府とCDCが対応に追われている間に、積極的な対応をしていったのが、米陸軍である。CDCは純粋な研究機関だが、米軍は過去に生物兵器の研究をしていた経験もあり、炭疽菌に対するノウハウもある。しかし、それだけではなかったのだ。
 使われた炭疽菌はエイムズ株という菌種で、これは、特別なものではなく自然界でもよく見かける一般的な炭疽菌だ。しかし、それは、先に書いたように、兵器用に撒き散らしやすく加工されたものだった。そして、それが出来るのは米軍だけである。果たして米軍はいつ頃からそれに気がついていたのか。CDCが使われた炭疽菌を調べたいから、分離した菌を譲ってくれと珍しくプライドを捨てて頼んだ時も、米軍は頑として譲らなかったという。米軍とCDCが犬猿の仲であるせいもあろうが、やはり、何かあったのだと勘ぐってしまう。
 米軍は、一体いつ頃から、問題の炭疽菌が自分らのところから流出したものだと気がついていたのかわからないが、出来ることなら誰にも気づいて欲しくないと切に思ったことだろう。そこらへんの田舎研究所から盗まれたならまだわかるが、よりによって天下の米軍がら漏れたのである。大変不名誉なことで、軍の管理責任を問うべきあってはならない不祥事である。

 容疑者のアイビンズ博士は、一体何故、こんな事件を引き起こしたのだろう。
 報道どおりにワクチンの効果を試したかったのなら、もう少し派手に撒き散らしても良さそうなものだが、何故、手紙に潜ませるような地味な手段を取ったのだろうか。
 私はもうひとつの可能性である「生物兵器への感心を高めたかったため」というのが正解ではないかと思う。炭疽菌への恐怖から、結果、彼の新ワクチンに世間の感心が集まると考えたのではないか。それで、9.11テロの恐怖が生々しい時期に実行されたのだろう。あわよくば、アルカイダに罪をなすりつけようと考えて。
 その犯人が、フォートデトリックに勤務していたのなら、持ち出しは比較的簡単だったのではないかと思う。まあ、そこの研究者とはいえ、危険な病原体を自由に持ち出せるのもどうかと思うが、部外者が持ち出すより簡単だということだ。もし、彼が研究所ともめた後ならば、米軍に対しての嫌がらせという線も出てくるが(彼の性格なら有りうる)、それならなお、彼が持ち出せたことの問題は大きい。
 それでも、アイビンズ博士が手紙作戦にしたのは、やはり無関係な人の犠牲を避け、確実にターゲットに炭疽菌を届けることの出来る方法を選んだのだと思いたい。

 で、私が炭疽菌テロ米国自演説を疑う理由を以下にあげてみる。

  • なぜ、すぐに米軍のものとわかる兵器級の炭疽菌を使ったか。自作自演なら、普通、自分が疑われる要因は避けるはずではないか。
     
  • なぜ、早い段階で、アルカイダのテロとは無関係と声明をだしたのか。さっさとアルカイダに責任をおっかぶせればよかったのではないか。
     
  • 短期間に2度に渡って、敵から本土を襲撃されるなんて、「強いアメリカ」としては国辱モノではないかと思うが、あえてそんな恥ずかしいレッテルを貼られてまで、炭疽菌テロを自演する必要があるのか。アルカイダに対する敵対心や復讐心は9.11テロで充分浸透したはずである。
     
  • 何故、7年経った今頃になって「犯人」の口封じをする必要があるのか。ケネディ暗殺事件のように、早い段階でスケープゴードを仕立て、消してしまえばとっくの昔に「真実は闇の中」に埋もれてしまい、枕を高くして眠れるのではないのか。あとは、勝手に謎が謎を呼び、色々な人が謎解きをするのを笑ってみていれば良いだろう。
     
  • 愛国法は、炭疽菌テロがあろうがなかろうが、採決されただろう。それよりも、政府の対応の悪さから、「アメリカ、戦争中の日本みたいだけど大丈夫か」な状態が緩和された。まったく逆効果。自演なのに後々の対応がまったくダメだったなんて、アホでしょ(まあ、ブッシュはアホですが)。

 容疑者自殺で事件の幕は閉じ、犯人のテロを起こした動機や、菌の入手方法、そして彼の犯行における細かい記録等が全て本人によって闇に葬られる結果となってしまった。FBIは、これにて捜査を諦めず、出来る限り真相究明に努力して欲しい。

 容疑者は、近所の人達からはボランティアに参加するような温厚で誠実な研究者として知られていた。典型的な「え?あの人が??」なパターンである。しかし、裏の性格は実の兄弟からも愛想をつかされるほどの、執念深く尊大で、反面精神病歴があるほど精神的に不安定だった。そんなのに危険な生物兵器の研究をさせんなよと言いたいが、まあ、科学者ってなたまにどこか壊れた人間がいるからなあ。

 長々と書いたが、結論として、私はこの事件が国家の絡んだ壮大な陰謀ではなく、個人(あるいは個人レベルの少人数グループ)で計画された単独犯罪だと思う。もし、真犯人がアイビンズ博士でないとしてもだ。このテロの規模から、菌さえ手に入れることができたなら、充分に1人でも行える犯行だからであり、上に列記したように、国家の考える陰謀のレベルからすると、あまりにもお粗末だからである。
 しかし、犯行に使われた菌の出所がわかってさえ、真犯人にたどり着くのに6年もかかったということは、FBIが最初見当違いな人を追っていたとはいえ、この手の軍の機密が絡むような事件を追う難しさがよくわかる。そして、それ故に、事実から乖離したさまざまな憶測が飛び交うのである。

 私は政府の陰謀よりも、軍の研究者が、いとも簡単に兵器レベルの炭疽菌を持ち出すことが出来、実際にそれを使用し、5人の無関係な何の罪もない人たちが殺されてしまったこと。これが何よりも問題であり、恐ろしいことだと思うのである。まさに、Fact is stranger than fiction.(事実は小説より奇なり)である。

◆参考図書◆
  バイオテロと医師たち (集英社新書):最上 丈二
  日本はテロを防げるか (ちくま新書):宮坂 直史

■当ブログ参考エントリー
 バイオテロについてはこちらにも詳しく書いています。対談形式なので読みやすいと思います。

生物兵器とバイオテロ(前篇)
http://kuroki-rin.cocolog-nifty.com/heaven_or_hell/2017/05/post-a369.html

生物兵器とバイオテロ(後編)
http://kuroki-rin.cocolog-nifty.com/heaven_or_hell/2017/05/post-763d.html

     生物兵器概要(古い記事ですが)

 なお、一部文章中で、アイビンズ博士を犯人として書いていますが、彼が犯人と確定したとは考えていません。黒に限りなく近いグレーとは思っていますが。FBIは彼を犯人と確定してしまいましたが、容疑者が自殺してしまったからには、もっと慎重に捜査すべきだと思います(なお、これについては、「犯人」を「容疑者」に書き換えました)。
 これに関してはスパイクさんの、 

アイビンス単独犯説についての疑問点
http://spikemilrev.com/news/2008/8/9-1.html

を参考にしてください。

 また、いくつかの不備な点を書き足し(赤字)、不適切と思われる記述を訂正しました。

◆ブログソース

MEPHISTより
米「炭疽菌事件」、疑惑の男性自殺
 米を震撼させた炭疽菌事件の科学者が自殺
   解明されぬ深い「闇」 
   http://shadow99.blog116.fc2.com/blog-entry-823.html

※このサイト「MEPHIST(「メフィスト」と読む)」は、事件のソースのみ、きっちり集めてアップしてある、大変役に立つサイトです。

◆ニュースソース

米炭疽菌事件で関与疑惑 ワクチン研究者自殺か
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008080202000256.html

【ニューヨーク=加藤美喜】二〇〇一年の米中枢同時テロ後に発生した炭疽(たんそ)菌事件で、米連邦捜査局(FBI)が容疑者として近く起訴する見通しだった研究者が死亡していたことが一日、分かった。自殺と見られている。同日付のロサンゼルス・タイムズ紙が報じた。

 同紙によると、死亡したのは米メリーランド州フォートデトリックにある陸軍感染症医学研究所のブルース・アイビンズ博士(62)。先月二十九日、鎮静剤の多量服用により死亡した。博士は同研究所で十八年間、炭疽菌のワクチン開発などに携わっていた。

 事件では、中枢同時テロ直後の〇一年九月下旬以降、フロリダ州の報道機関やワシントンDCの上院議員事務所などに炭疽菌入りの郵便物が送付され、郵便局員や病院職員など五人が死亡した。

 FBIは同研究所関係者の関与を疑い、捜査を続けていた。事件は開発したワクチンの効果を試すために起こしたのではないかと見られているという。FBIに事情聴取を受けた博士の兄は同紙に対し、博士がFBIの捜査で精神的に参っていたと証言した。

東京新聞

自殺した米研究者、炭疽菌事件の指紋とDNA一致
 2008年08月05日 17:45 発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2426489/3186425

【8月5日 AFP】2001年に米国で炭疽(たんそ)菌入りの郵便物が政府関係者や記者らに送りつけられた事件で、起訴を目前に自殺した研究者のDNAが、炭疽菌事件の事件で採取していた指紋のものと一致した。米NBC Newsが4日、報じた。

 自殺したのは、メリーランド(Maryland)州フォート・デトリック(Fort Detrick)にある米政府の生物兵器研究所で炭疽菌関連の研究を行っていたブルース・イビンズ(Bruce Ivins)博士(死亡当時62)。

 米連邦捜査局(FBI)による最新科学技術を用いた調査の結果、事件で送りつけられた郵便物の指紋と、イビンズ氏の研究室にある炭疽菌入りのフラスコから採取した指紋のDNAとが一致した。

 ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙が匿名情報として伝えたところによると、イビンズ氏の他にも10人あまりが該当するフラスコに触れた可能性があるとしている。

 一方、炭疽菌事件でメリーランド州内の3か所の郵便局から発送された封筒のうちの1通は、イビンズ氏が偽名で借りていた私書箱からのものだったという。また、事件当時、イビンズ氏が研究所で長時間、残業をしていた事実も指摘している。

 NBC Newsによると、米法務省は4日中にも事件について公表する見通しだ。炭疽菌事件では5人が犠牲となっている。(c)AFP

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コメント

自分のサイトに、この事件がアメリカでどう報じられているかを書きました。下記のURLにアクセスしてみてください。
http://spikemilrev.com/news/2008/8/9-1.html

投稿: 田中昭成 | 2008年8月11日 (月) 18:58

田中昭成さん、こんばんは。

スパイクさんですよね。
実は、すでに昼間その記事は読んでいました。

このエントリーの目的は、アイビンズ氏が犯人であることの検証ではなく、この炭疽菌テロ事件が国家的な陰謀でない個人の犯行でも充分成り立つという証明をしたかったのです。
ですから、私はアイビンズ氏が犯人確定だとは思ってないのです。ですから、文中に「もしアイビンズ氏が犯人でなくても」という言葉をいれたのです。

どうやらFBIはアイビンズ氏を犯人と断定してしまったようですが、そこらへん、妙に事件を強制終了させたがっているように勘ぐってしまいます。

死んでしまって彼の口から事件について永遠に聞けなくなったからには、彼は容疑者以上のものにはならないのではないかと思います。しかし、死人に口なしだからこそ、慎重に事件を検証し、結論は急ぐべきではないと思います。でなければ、もし、真犯人がほかに居た場合或いは単独犯でなく仲間が居た場合、彼らがほくそ笑む結果になるとともに、再発防止の対策も徹底することが出来ないと思います。

フォートデトリック内でのアイビンズ氏の立場がいまいちわからなかったので、そこら辺の検証は憶測でしか出来ませんでした。
問題の炭疽菌は、犯人(アイビンズ氏or第三の人間)が、陸軍所有の菌を、何らかの工作をして持ち出したものだろうと思っていて、犯人が作ったものとは考えていませんでした。

読み直すと何ヶ所か不備な点を書き直し或いは書き足をしたくなったので、その時田中さんの記事も参考にさせていただきたいと思います。

余裕があれば、今度、国家的陰謀の可能性も検証してみたいと思います。

投稿: 黒木 燐 | 2008年8月12日 (火) 00:52

確かに、結論を出すタイミングは早すぎたと思います。それで、マスコミが疑問点をあげているのだと思います。変人を犯人にして済ませるのでは、考え方が安直すぎますから。

投稿: 田中昭成 | 2008年8月13日 (水) 11:14

田中昭成さん

そういうことでしょうね。
そういうまっとうな疑問をマスコミが提示することが出来るあたり、アメリカという国がまだ正常運転だというような気がします。
重要なことなのですから、洗いなおす勢いでしっかりと調べてほしいですね。

投稿: 黒木 燐 | 2008年8月15日 (金) 03:37

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