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2008年4月11日 (金)

ある朝の出来事

 これは、かれこれ5年以上前のことだ。季節は肌寒かった記憶があるので秋か冬だったと思う。

 私はその朝も、いつものようにひとバス停分歩いたところのバス停でバスを待っていた(『バス』という単語が反復したが、表現上仕方がないのでご容赦願いたい)。
 私はバス停のポール(標識柱)のすぐ横に立っていた。すると何かすごい音がしてポール越しに何かがぽ~んと飛んで道路の真ん中に落ちた。私にはそれが何かわからなかったが、車道の真ん中にあるのは邪魔だろうと思い、ちょうどその車線に車がいなかったので、車道までそれを取りに行った。子どものスニーカーだった。(なんで?)と思いつつ、歩道に戻ろうとそっちを見た時、男の子が倒れているのが見えた。
 

「どうした! 大丈夫か?」
私は何がなんだかわからないが、驚いてとにかく子どもの方に駆け寄った。子どもは上半身を起こしたが、鼻血がだらだら流れて、大泣きをしている。あっちゃ~~~、事故に居合わせてしまったかな? そう思ったが、ちょうどポールの陰で死角になっていたので、何が起こったのかさっぱりわからない。しかし、子どもはまだ若干車道の内側に居る。またぶつかられてはかなわんので、動かして大丈夫か心配ではあったが、「もう少し、こっちに来んね?」と、子どもを少し歩道側に寄せた。落ち着いて周囲を良く見ると、彼をはねたらしき白い軽トラの横に運転手がぼーっと立っていた。その後ろには、その日はちょうどゴミ出し日だったので、町内会の係りのおじさんたちも数名いた。一緒にバスを待っていたらしい、サラリーマンの若い男性が119番か110番に電話している。そうこうしているうちに、私の乗るバスが来たので、おじさんたちにくれぐれも後をお願いして会社に向かった。気になったが事故の瞬間を見ていないし、仕事があるので仕方がない。

 それからしばらく経った、そんなことなどさっぱり忘れてしまっていた頃の朝のこと。

 私は相変わらずいつものバス停で、イヤーフォンで音楽を聴きながらバスを待っていた。そこへ、何故か小学生の男女がやってきて、私の前に並んで何か言っている。私は何がなんだかわからずに、きょとんとしていたら、あきらめて行ってしまった。しばらくしてから事故のことを思い出した。私は全くその男の子を覚えていないが、多分彼がその時のお礼を言いにきたんだろう。せっかく来たのに悪いことをした。しかし、反面なんとなく嬉しかった。朝の空気がさらに清清しく感じられた。

 

 ところが、その日の夕方、会社から、大リストラの話があったのである。朝の清清しさを台無しにされた夕暮れであった。

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徒然くさ」カテゴリの記事

コメント

交通事故ですか。
ああいうのはホントに一瞬のことで、
怖いですね。
でも、その子がなにもなかったようなら
ほんとうによかったです。
しかし、その後のリストラとは・・・
一体何があったのですか?
もし差し支えなければお聞きしたいのですが。

投稿: MM21 | 2008年4月11日 (金) 21:27

MM21さん

交通事故は怖いです。本当に一瞬の油断から起きる、一瞬の出来事です。
今日も帰りに横断歩道を渡ろうとしたら、チャリがいきなり突っ込んできて、ぶつかりそうになりました。その時は私だけではなく、学生達も何人か渡っており、けっこう人密度が高かったのですが、その隙間を縫って通り抜けようとしたようです。人垣に突っ込まなかったことが奇跡でした。無謀運転の現行犯で捕まえて110番してやればよかった。

リストラの件ですが、5年ほど前の12月頃だったかな、今の会社が人員整理のため、希望退職者を募ったのです。希望者がいない場合は、不本意だが肩を叩かせてもらうと。今のうちなら給料も3月分まで払うからと。おいおい、繁忙期に人を減らすなんて気でも違ったかと思いました。その時は何人か希望退職者が出て、私は肩を叩かれずに済みましたし、止めた人の分残業代も稼がせてもらいました。しかし、給料はずっと据え置きです。その後交通費やボーナスも大幅カットされ、残業代も20時間でカットになったから、むしろ年収はずいぶんと下がったなorz。前の会社から比べると、100万くらい下がったです

まあ、それでも、定期収入があるだけマシなんですが、小説は、実はその現実逃避だったりするわけです。
会社首になっても(バイトとはいえ)オファーのある由利子がうらやましいです。

投稿: 黒木 燐 | 2008年4月12日 (土) 07:43

このエントリーに刺激されて、ダダーっと書いてしまいました。
ってあれ? TBしたのに..うまく届かなかったようです。
あとでもう一度やってみよ。

>せっかく来たのに悪いことをした。

大丈夫ですよ。その坊やにとっては、そのときはちょっぴり残念な気持ちになったかもしれないけど、近くにいた大人の人たちに助けてもらえたことと、自分でお礼を言いに行けたことは、坊やの長い人生において絶対に大きな力になると思います。

某所で私の背後霊が、燐さんの日頃の行いを云々と失礼なイタズラ書きしておりましたが、深く深く謝罪し、訂正しなさいと言っておきます>背後霊に

投稿: 猫だぬき | 2008年4月12日 (土) 13:54

猫だぬきさん

トラックバックありがとうございます。久々のトラバです。
トラバスパム防止の為最近承認制にしていますので、すぐに公開させていただきました。

>近くにいた大人の人たちに助けてもらえたことと、自分でお礼を言いに行けたことは、坊やの長い人生において絶対に大きな力になると思います。

そうですね。そうあればいいと思います。
しかし、文中で驚いて言った男言葉、ほんとにそういう風に言ったんですよ。オッサンやん


投稿: 黒木 燐 | 2008年4月12日 (土) 18:18

>「どうした! 大丈夫か?」

これのことですよね?
昔の青春ものドラマとか、スポ根漫画とか、
太陽にほえろとかが頭をよぎりました(笑)

投稿: 猫だぬき | 2008年4月12日 (土) 18:48

猫だぬきさん

私は普段からどっちかってと男言葉なので、とっさにでもこんな風に言ってしまいます。
でも、最近「秘書の紗弥さんごっこ」ていって、お嬢様言葉で思考するのがマイブームになってまして、これを一旦はじめるとなかなか止められなくなくなるのですわ。

投稿: 黒木 燐 | 2008年4月13日 (日) 09:29

書かせるだけ書かせといて、返事が遅れてすみません。
現実逃避、私もしまくってます。
しかし、小説を書くのはどちらかというと昇華という
行為に近いような気がするのですが。


投稿: MM21 | 2008年4月14日 (月) 23:16

MM21さん

>小説を書くのはどちらかというと昇華という
>行為に近いような気がするのですが。

う~みゅ、人によっては昇華・行為・現実の延長etc.と様々なのかもしれません。
どこかの親殺しのように、小説だけでは飽きたらず、行動を起こしてしまうのもいるみたいだし・・・。まあ、彼の場合ひょっとしたら、実は小説ではなくシナリオを書いていたのかも知れませんが・・・。

投稿: 黒木 燐 | 2008年4月16日 (水) 12:26

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黒木燐さんの「ある朝の出来事」というエントリーを読んで思い出したこと。思い出したといっても、遠い記憶の彼方から蘇ったというようなものではなく、普段からちょこちょこと、事あるごとに思い出すふたつの記憶...小学1年生のある日、友達と遊んだ帰りに公園の中を...... [続きを読む]

受信: 2008年4月12日 (土) 12:54

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