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2007年3月 7日 (水)

Suite XVI(スウィート シックスティーン)レビュー

 ただいま発売中のストラングラーズのアルバム「Suite XVI」ですが、このブログでも販売促進に努めております。あまり必死になるのも却って引かれそうだけど、まあ、ファンのやることと思ってなまあたたかい目で見ていてくださいませ。

 さて、アルバムレビューであるが、その前に簡単に彼らについて説明をすることにしよう。なお、何曲かは試聴できるようにしているので、是非レビューを読みながら聴いて欲しい。

   ストラングラーズ日本公式サイト「狂人館」 http://www.stranglers.jp/

 ストラングラーズは、1974年に結成されてから、パンク/ニューウェーヴの波に乗りながらメキメキと頭角を現し、16年間不動のメンバーで活動を続けていた。他のパンクバンドが解散していく中、この息の長さは異例とも言えるものだった。
 1990年にギター兼ヴォーカルのヒュー・コーンウェルが脱退したあとも、新たにギターとヴォーカルを編入し、5人編成で活動をさらに16年続けた。そして、去年ヴォーカルが脱退、バンドは元の4人編成にもどり、原点に返った形になった。「Suite XVI」のXVIはローマ数字の16で、彼らの16枚目のアルバムということを記念してつけられたタイトルだが、奇しくも脱退した両ヴォーカリストの在籍年数をも示すこととなった。→バイオグラフィー
 タイトルの「Suite」はもちろん甘い(sweet)ではない。ただし、音的にsweetとかけている。このタイトルについてJJ自らが説明したものを私たちのインタビューから引用しよう。

「スゥィートシックスティーンというのを音だけで聞くと言葉のあやで複数の解釈が出来るんだ。まず良く聞くsweet 16があるね。この16歳というのは法的にセックスをしても許される歳でもある。それから「16」というのは16枚目のアルバムであり、また、フランス語ではla suiteというのは「続く」という意味がある。これは前作Norfolk Coastに続く作品という意味でもある。あとはもちろん組曲(suite)という意味に似合ったアルバムの作りにもなっているんだ。」

 このアルバムは、ストラングラーズの原点に戻った作品である。JJのヴォーカルも完全に復活し、11曲の内5曲をメインで歌っている(なお、日本盤ボーナストラックは2曲ともJJのヴォーカルである)。
 アルバム全体の印象は、かなりポップで前作より明るい感じがする。そのため最初ちょっと物足りない感じがしたが、その分聴きやすくなっており、より幅広い層に受け入れられるのではないかと思う。また聴き込んでいくうちに、色々な発見もあって面白い。
 内容は、正当派ロックンロールから初期パンクそのものがあるかと思えば、60年代っぽい曲あり、ワルツあり、、ウエスタン調ありと、バラエティーに富んでいるが、そのくせ全体的に良くまとまっている。ここがベテランのすごいところだ。この後一曲ごとに感想を書いていこう思うが、英語に関しては自信がないので歌詞の内容よりも曲に関して重点的に書くことにする。

 曲目は以下のとおり。

Unbroken;  Spectre of Love;  She's Slipping Away;  Summant Outanowt; 
Anything Can Happen;  See Me Coming;  Bless You (Save You, Spare You, Damn You);  
A Soldier's Diary;  Barbara (Shangri-La);  I Hate You;  Relentless. (全11曲)

日本盤ボーナストラック: Instead Of This (Live),  Death&Night&Blood (Live)

Unbroken -JJ
 のっけから正当派のロックンロールである。イントロの部分を聴くだけで、おお!ストラングラーズだ!と嬉しくなってくる。ギターソロで始まり、ボンとJJのベースギターが入りすかさずディヴのキーボードとジェットの軽快なドラムが入る。ツカミは上々だ。それで、正統派ロックで終わるかと思いきや、ものすごいカッコイイ間奏が入る(試聴曲はその直前で終わっているところがニクイね!)。その間奏でデデデデと地鳴りのように響いているのが、知る人が聴いてその健在さに涙する、JJの爆撃ベースだ。
 メインヴォーカルはJJだが、コーラス部分でバズが助っ人に入っている。このバズという男、スキンヘッドのごついヤツで下手するとネオナチと間違われそうな強面でだが、なかなかやさしい声をしている。
 タイトルの「Unbroken」の意味は「完全な」とか「くじけない」とか言う意味だが、これはJJが自分について書いた詩で、軽快な曲に比べてかなり重い内容の詩である。

Spectre of Love -Baz
 直訳すると「愛の亡霊」とかなり陳腐なタイトルになってしまうが、タイトル通り、この曲は過ぎ去った愛について歌っている。ちょっと懐かしい感じがする日本人好みのメロディラインだ。そして、ここが聴かせ場と、ディヴの炎のキーボードがうねる。また男声コーラスの素晴らしさは相変わらず絶品である。これは、パンク時代からの伝統(笑)で、いつもコーラス部が綺麗にハモっており、聴いていて安心感がある。もちろんそれは曲にもよるけれど。 
 さびの部分が単にYou can’t deny it’s the spectre of loveの繰り返すのかと思いきや、He keeps the hawk and doveと続き、ちょっと意表をついているところがまた良い。また、この手の曲にありがちなフェードアウトをせずに、ビシッと曲を終えているのがまた良い。

She's Slipping Away -Baz
 これも60年代を思わせるようなノスタルジックな曲で、後半の目くるめくような輪唱的なコーラス部が美しい作品だ。しかし、その明るい曲調に反して、実はその歌詞の内容はホラーである。何度殺しても生き返ってくる女性の話で実話だそうだ。しかし、私もけっこう猟奇事件には詳しい方だが、この話は知らなかった。

 個人的にこのアルバムの中で、一番好きな曲である。

Summant Outanowt -JJ
 この奇妙なタイトルはヨークシャー地方の方言で、"something out of nothing"という意味だそうだ。「火のなかとこに大煙ばい」ってなもんか?(ちょっと違うなwww)
 この曲を聴いた往年のストラングラーズファンは、再び感涙にむせぶだろう。アップテンポで過激な曲調もさることながら、JJ完全復活というか、彼の凶暴なヴォーカルはパンク全盛時代の曲の再録と言っても信じてしまうかもしれない。これは「Unbroken」と共に、約30年の時空を一瞬にしてつないでしまう、私たちをあの熱い時代に戻し、元気を与えてくれる曲だ。疲れた私たちに、もう一度頑張ってみろ!と渇を入れてくれる曲だ。
 曲自体もなかなか面白く、過激な中にコミカルな軽快さも併せ持っている。間奏で、バネのような音や子どもがリコーダーをピーピー鳴らすようなどちらかというと不快な音が効果的に使われている。

Anything Can Happen -JJ
 前曲の荒々しさから一転して女性的なJJのヴォーカルが印象的なこの曲は、前作「NORFOLK COAST」収録の「I Don't Agree」に続くブッシュ批判の反戦歌である。その前のアルバム「COUP DE GRACE」でも「Known Only Unto God」という反戦歌と思われる曲を作っていた。一聴するとボサノヴァ調のムーディーな曲であるが、ブッシュを「(家の力で)兵役を逃れた弱虫の大馬鹿野郎」とこき下ろし、イラク戦争の泥沼化と無意味さを歌っている。結局苦しむのは戦争で何の利益も得ることのない、普通の人たちなのであり、無意味な戦争は涙と憎しみの連鎖を生むだけである。

See Me Coming -JJ
 これは、JJがサウンドトラックを担当したアニメ「巌窟王」のエンディングテーマ「You See Me Coming」のストラングラーズヴァージョンである(プロモはここの「TVCM」で見れます)。
 アニメヴァージョンに比べて電子音を抑え気味にしているが、特に歌詞等の変更はないように思われる。アニメでも大好評だっただけあって、かなりカッコイイ曲である。カラオケにあったので一度歌ってみたがかなり難しくて、JJのようなパンチの効いた歌い方が出来ず、お経のようになってしまった。何だかんだ言ってもやはりJJはプロなんだなあと感心したのであった・・・って失礼なファンだな、私(笑)。

Bless You (Save You, Spare You, Damn You)   -Baz
 この曲はワルツで、特にキーボードとギターソロが美しいナンバーなのだが、なんとこれは、黒死病(Black Death:ペスト)について歌ったものらしい。美しい曲に対して重苦しい歌詞をつけるのはストラングラーズの常套手段である。歌詞も読んで見るとかなりエグイが、そういう予備知識について何も考えずに聴くと、なかなかのめりこんで聴けると思う。
 まあ、致死率の高い感染症ともなれば、あとは死のみが救いだろう。特に治療法もろくになかった中世に於いては。余談だが、魔女狩りの煽りで猫を殺しすぎたのも、このパンデミックの重要な原因であった。
 特筆すると、ストラングラーズの曲にはワルツがけっこうある。2・3挙げると、最初に彼らのアルバムに登場したワルツは、3rdアルバム「Black and White」の中の「OutsidebTokyo」である。大ヒットした「Golden Brown」もまた、変則的ではあるがワルツであった。そして、彼らのライヴで彼らの登場前に流れるテーマ曲とも言える曲「Waltz in Black」も忘れてはならない。
 

A Soldier's Diary -Baz
 これは、第一次大戦でも特に悲惨だったパッシェンデールの戦いを生き抜いた兵士について歌った曲であり、珍しくこのアルバム2曲目の反戦歌である。テーマは悲惨な出来事であるが、曲はアップテンポで軽快であり、ユーモラスでさえある。途中、やけっぱちのような「ヘヘッ!」という笑いが入るが、それが却って空しさを強調する。
 JJは、我々(イギリス)は戦時中だと言った。しかし、自衛隊を派遣しているからには日本だって本当は戦時中なのであり、イラクやアフガン等の民間人たちの死は決して無関係ではないのである。

Barbara (Shangri-La) -Baz
 これは、バズが初恋の女性について書いた曲であるらしい。初恋・・・、なんと甘く切ない言葉であることか。それにふさわしく、情熱的で流れるような曲だ。I can almost hear you calling me, I can almost hear you calling, callingのところが特に印象的である。けっこうキャッチーで、耳当たりの良い曲でもあり、重い歌詞の多いアルバムであるが、その中で清涼剤のような曲である。

I Hate You -JJ
 これは、JJがある二人の人物に対して書いた曲である。ウエスタン調の曲で、JJが皮肉たっぷりユーモラスに歌っている。ちよっと「ローハイド」を連想させる曲調である。私も最初この曲はアメリカを皮肉っているんではないかと思っていたが、ちょっと違ったようだ。途中間奏にハープ(ハーモニカ)が入るが、これはバズが吹いているらしい。最後の電話でわめいているようなダメ押しが笑える。そこまでするか?(笑)
 ところで、始めてストラングラーズを聴いた方は、一曲ごとに印象の違うJJのヴォーカルの変化に驚いたかもしれない。これがJJ・バーネル七色のヴォーカルである(笑)。

Relentless -Baz
 これは、時間について歌った曲。時間は誰の上でも平等で冷酷に過ぎ去るものである。王様であろうが乞食であろうがワーキングプアであろうが幸せであろうが不幸であろうが、時はT軸に沿って刻々と過ぎ、決して後戻りは出来ない。三次元に住む我々にはどうしようもない次元なのだ。
 この曲は、実は私のイチオシのナンバーである。これぞストラングラーズの真骨頂とも言うべき曲なのである。JJのベースもディブのキーボードもジェットのドラムもそしてバズのギターとヴォーカルも一気に突っ走っていく。コーラス部も相変わらず綺麗にハモっているし、短いながら間奏も盛り上がり、否が応でも気分が高揚していく。この曲もちょっとウエスタン調であり、鐘の音がますます緊張感を高める。終わりもフェイドアウトせずにバシッと終わるので気持ちもスッキリだ。
 車に乗るならば、是非夜これを聞きながらハイウェイを飛ばして欲しい。カレシカノジョを隣に乗っけているならなお宜しいかもしれない(笑)。しかし、くれぐれも事故らないように。 

日本盤ボーナストラック
Instead Of This (Live),  Death&Night&Blood (Live)
 これは両方ともJJのヴォーカルで、2005年12月に行われたライヴを音源とする。
 「Intsead Of This」は、1990年にリリースされたアルバム「10」からのシングルカット「96Tears」で、ヒューの「Poisonality」と共に発表された曲である。ラテン系の曲調と、JJのけだるいボーカルがアンニュイである。
 そして、「Death&Night&Blood」である。これは古いファンが聴いたら卒倒しそうになるのではないかと思う。私も久々にライブヴァージョンを聴いて鳥肌が立った(ついでに凶暴な気分にもなった。すっかり気分はパンクスである(笑))。これは3rdアルバム「BLACK and WHITE」の中の曲で、タイトルからピンと来る人もいると思うが、三島由紀夫へのオマージュ曲である。アルバムよりスピードアップしている分、演奏時間は2分30秒ほどと短いが、迫力は充分である。

 以上、ざっと説明してみた。是非この際買って聴いてほしいと思う。その際は、夜、音の良いヘッドフォンでボリュームを上げ気味にして、若干低音を強調して聴いて欲しい。出来たら一巡ではなく最低三回くらい聴いてほしいと思う。

 なお、このレビューを書くに当たって、この前の私たちのインタビューに加えて、ビートレッグとロッキンオンのインタビューも参考にいたしました。

※試聴曲は、掲載にあたりレーベルとアーティストから許可をいただいています。
 無断使用は固くお断りいたします。
 なお、もし、サイトで使いたいという方は、メールをください。許可が出次第データをお送りします。

 現在協力してくださっているサイト
   ナカガワケイスケ Official Site

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コメント

こんにちは。
Rockin'onとDollを見ました。
あーーー、びっくりした。。。
てか。。。一体いつからストラングラーズは
日本であのような大きな扱いを受けているんですか?
Dollでは表紙の裏一面が新譜の広告。
しかもJJのインタビューは雑誌の一番最初の記事ですよ。
前のアルバムがリリースされた時に日本にいませんでしたが
十数年前のバンドの日本での扱われかた(?)を考えると
なんだか不思議な感じがします。
それともレコード会社のマーケティングが素晴らしいのかな?

ところで、来日の可能性はあるんですか?
どんな情報でもいいので、教えて!
書けない情報なら、個人的にメールで教えてください。
よろしくお願いしますっ!!

投稿: Sanftekuss | 2007年3月 7日 (水) 13:28

Sanftekussさん

う~~~む、ポールも好きな私としては複雑ですが、やっぱりポールが辞めてJJがまた前面に出てきたせいでしょうねえ。それと日本盤リリースとたまたまJJが空手来日したためのインタビューラッシュと重なったと。
前作「ノーフォークコースト」も日本での反応はまあ、悪くなかったんですけどね。けっこういろんなサイトで褒めてましたし。あれはレコード会社がもう少しヤル気を出していたらまた結果が違ったように思います。今回の「サイドアウトレコーズ」さんは、かなり面倒見の良いレーベルで、我々とも頻繁に連絡を取ってくださるし、プロモーションにも熱心で、大手ではないけれど、本当に良いレーベルに当たったと思います。
一昨年来日した時も、数誌からインタビューを受けていたので、やはりいくつかの雑誌にインタビューが載りました。
ただ、扱いに於いては今回は破格ではありますね。

来日についてはまだなんとも言えませんが、それより今はジェットの病状が心配です。

投稿: 黒木 燐 | 2007年3月 9日 (金) 01:41

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