絶体絶命
私はつり橋を歩いていた。そのつり橋は、とても距離が長くまた高いところにあり、木と縄で出来ているような粗末なもので、下を見るとはるか下に海が見え、足がすくんだ。海は凪いでいるが、こんな高さから落ちたら確実にコンクリート並みのショックを受け、命を落とすだろう。それでなくても私は泳げないのに・・・。
こんな橋は早く渡ってしまうに限る。そう思って足を速めようと思うが、足がすくんで思うように歩けない。それも渡っているのは私だけで、前後を見ても人っ子一人いない。とうとう私は橋の真ん中あたりでへたり込んでしまった。しかし、渡らないと、こんなところで立ち往生(へたっていたが)していると命に関わる。それで私はへたれこんだまま、ゆっくりとしかし必死で先に進んだ。
しかし、恐ろしいことに橋板がどんどんずれて足元がだんだんスカスカになっていった。真っ青な美しい海が、足の下に見える。私は血の気が引いた。
とにかく先に進むが端から橋板が落下していく。縄の手すりが唯一の命綱だ。助けを呼ぶか?しかし、どうやって?私は携帯電話も持ってないし、第一ここまでどうやって誰が助けに来るというのか?
ついに、足元の橋板が全部落ちてしまい、私は橋に、いや、もはや縄で出来た命綱に身体を絡ませ宙吊りになった。私の命は風前の灯であった。どうする?このままだと助かる方法はないし、もし誰かがレスキューを頼んでくれていても、来るまで持つかどうかわからない。とりあえず、ギリギリまであきらめずにここにしがみついているしかない。宙吊り状態の私の周りには何もなく、はるか下の海はそんな私の状況とはお構いなしに、青々と広がっていた。まるで宇宙から見た海のようだ。おまけに風と私の体重で綱は容赦なく揺れる。必死にしがみつくが、このままでは時間の問題だ。
ここまで来て、ようやく私は自分の置かれた状況が異常で不条理なことに気がついた。そもそもなんで私はこんなつり橋を渡っているのか。
「これは夢だ!!」
良かった、夢だ。しかし、一刻も早くこの夢から覚めないと、夢であってもこんな恐ろしい状態には一秒たりとも居たくない。
「目を覚ませ!」私は必死で目を開けようとしたが、夢の私の目は開いているので、これ以上開けようがない。こらぁ、夢見ている私! さっさと目を開けろ! 私は宙吊りでじたばたしながら心で念じた。
やっと目が覚めた。私はいつものロフトベッドの上で寝ており、猫たちも気持ち良さそうに寝ていた。ほっとしながらつぶやいた。
「夢でよかった。」
いや、あんなつり橋、現実にはありませんから。
先週のいつだったか忘れたが、こういう非常に怖い夢を見たのを思い出したので書いた。夢オチですみません。
悪夢を見ながら、それが夢とわかり無理矢理目を覚ますことが良くある。しかし、この夢に関しては、分析がかなり容易だと思う。それはともかく、思い出しただけで足の裏がズンとなる恐い夢であった。
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コメント
大した表現力ですね。
始めのうち本当の話かと固唾をのむ思いで読んでいました。
夢のお話でしたけれど、もしかしたら現実と思っているものも、夢に過ぎないのかもしれませんね。そんなに真剣に悩まなくても、醒めて見たら、自分はずっと極楽浄土で眠っていただけだったとか・・・
なんて考えを持つと、折角この世に生まれてきた値打ちが半減しますね。真剣に悩んでこその人生なのかも。
投稿: わこ | 2007年3月21日 (水) 09:52
わこさん
お褒めにあずかり光栄にございます。
それだけリアルな夢だったのかもしれません。
夢とわかるまでは、「いっそ手を離して楽になるか?」「いや、こんなところで終わるのはイヤだ。」「でも、多分このままどうにもならないどろう。いずれは力尽きるんだぞ。」「イヤだ、死にたくない。」
というすごい葛藤がありました。
で、夢と気が付いたのですが、どうせ夢なら手を離して落下を楽しめば良かったのではないかと、今ちょっと残念です。
でも手を離したら、そのまま奈落へ真っ逆さまに落ちて生還出来とかだったら恐いですね。
まあ、夢現(ゆめうつつ)という言葉もありますし、実際は私たちの一生など泡沫(うたかた)の夢にすぎないのかもしれません。だからこそ、一所懸命生きるべきなんでしょうけれど。
私が「生」に執着があることがよくわかる夢ではありました。
投稿: 黒木 燐 | 2007年3月22日 (木) 12:50