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2007年1月 6日 (土)

サダム・フセイン

 フセイン処刑について書いたら、なんか妙にこの記事へのアクセスが増えた(といっても、目立っただけでそこまで多大なアクセスがあったわけじゃないけど)。アクセス解析を見るとどうやら、処刑画像を求めて検索してきたらしいことがわかった。なんか情けなくなった・・・。

 彼の死に際は立派だったようだ。武士道なら「あっぱれな最後」と敵方からも賞賛されただろう。
 死刑時の映像を撮り流した者は、死を前に取り乱すフセインの姿を公表し彼を貶めようとしたのだろう。しかし、意に反し、彼は最後までイラク大統領として堂々と死に赴いた。

 そして彼は冷酷な独裁者から殉教者となった。

Shaheedsaddam35  わざわざフセインの追悼をやるほど彼に傾倒しているわけではないが、正直にいうと捕らえられた後の彼はまるで哲学者のようで、すごく人間として魅力的に思えた。まあ、そういう人だからこそ、農民の身分から大統領になれたのだろう。ただ、策に長じているとか金儲けが上手いから程度ではなく、カリスマ性があったればこそ、得ることのできた身分だと思う。

 彼の死刑を通して、イラク戦争について、あるいは死刑というものについて改めて考えてみたい。

 リバーベンドさんのブログ「バグダード・バーニング」2006年12月31日(日)の記事によれば、現地ではフセインの死刑に対しての反応は重く、少なくともお祭り騒ぎではなかったようだ。

  リンチ(私刑)...

 BBCが報道しているようなお祝い騒ぎはまったくない。 少しの地域を除いて通りには人影も見えない。 さてCNNはどうか。CNNのジャーナリストたちよ、怠慢に恥を知るがいい。処刑についての話を書くのであれば、最低限最期の言葉くらい正確にしてほしいものだわ。あなたがたの記事は世界中で読まれていて、参照されるものとして将来にわたって歴史に残るのよ。世界最大のネットワークなんだから、マシな翻訳者を雇うくらいのことぐらいできるでしょ。以下の記事によれば、サッダームの最期の言葉は「ムクタダ・アッ=サドル」だとムニール・ハッダードは主張しているようだけど、それは間違いよ。少なくとも、テレビで映していたそのところを見さえすれば、誰にだってそれがわかるわ。
 「目撃者であるイラク人裁判官のムニール・ハッダードによれば、死刑執行人のひとりがフセインに対して、元独裁者であるあなたがイラクを破壊したのだと言ったところ、それがきっかけになって部屋にいた何人かの政府の役人が参加した口論に火がついた。
 そしてフセインの首の周りにロープが締められたとき、死刑執行人のひとりが“ムクタダ・アッ=サドル万歳”と叫んだとハッダードは言う。強力な反米のシーア派の宗教指導者のことである。
 ハッダードの説明によれば、スンニであるフセインは死ぬ直前に、バカにした調子で“ムクタダ・アッ=サドル”と最期の言葉を発した。」
 リークされたビデオでは、「ムクタダ・アッ=サドル万歳」と大声で言ったのは死刑執行人ではなかった。どう、これがマーリキー政権のもうひとつの救いようのない下劣さよ。彼らは自分たちに好都合な野次馬たちを処刑の場に居合わさせていたのよ。マーリキーは、彼らは「裁判の証人たち」だと主張したけど、彼らは明らかに野次るための人間だった。サダムの首の周りに輪縄が巻きつけられるとすぐに、彼らは唱和し始めた。「モハンマドと彼の家族の上に神のご加護あれ...」その他うまく聞き取れなかったけれど(でもとても組織的だった)、続いて「ムクタダ、ムクタダ、ムクタダ!」と。彼らのひとりがサッダームに大声で叫んだ。「地獄へ行け…」 (アラビア語で)。サッダームは軽蔑して下を向いて言った。「ヒヤ ハイル マルジャラー…?」 「それがおまえの男らしさか?」というような意味だ。
 少しは心ある者が野次る者に叫んだ「頼むよ、お願いだ、この男は処刑されようとしているんだ!」わずかに静かになり、そしてサッダームは立って言った「アシュハドゥ アッラー イラーハ イッラッラー、ワ アシュハドゥ アンナ ムハンマダン ラスールッラー…」これは「アッラー以外に神はなく、モハンマドは神の使徒であることを証言します」という意味だ。これらはイスラーム教徒(スンニ派もシーア派も同様に)が死に際して言うべき言葉だ。もう一度とてもはっきりとこれを繰り返したけれど、言い終わる前に彼は殺された。

 だから、CNNは間違っているわ。彼の最期の言葉は、馬鹿にした調子の「ムクタダ・アッ=サドル」ではなかった。ただの想像なんだから誰か訂正しなくてはだめよ。(あなた方、この記事を書いた6人の人たちに言ってるのよ!)
 あるいはまた、間違った情報を彼らに与えたのは裁判官のほうだったということができるかもしれない。 イラク上訴法廷の判事、処刑命令を承認した判事団の一人ということになる。アメリカが後見している判事団は絶対に嘘をつかないと誰もが思ってるんだから-それでCNNの混乱を説明できるわね。

 ムワーファク・アッ=ルバーイは「サッダームは弱々しく怯えていた」と言った。 ルバーイは違う私刑を見たらしい。なぜなら、リークされたビデオによれば、彼は全く怯えていなかったもの。彼の声は震えてなどいなくて、黒い覆面を被るのを拒否した。 彼は、運命を享受しているように見え、野次られている時には相変わらず挑戦的に見えた。 (昨年、アメリカ人に家を襲われたときにムフスィン・アブドゥル・ハミードの見せた有名なヒステリー発作と対照的だわね。)

 全文は「バグダード・バーニング」2006年12月31日の記事をご覧下さい。このブログには、イラクの現状がつぶさに書き記してあります。是非、他の記事もご覧になってください。

 ■★阿修羅♪に転載されている記事

「物静かな読書家でジョークが好き」、 看護師が語る獄中でのフセイン元大統領 - 米国 (最後までイラクの大統領だった)
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/560.html

ドジャイル住民がフセイン埋葬地を弔問 [イラク情勢ニュース]
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/619.html

【ビデオと写真】サダム・フセイン大統領の埋葬
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/669.html

サダム・フセインとラムズフェルドの会談記録(日本語版) [イラク情勢ニュース]
http://www.asyura2.com/0502/war69/msg/865.html

 以上の記事を読んだあとは、サダム・フセインという男の印象がずいぶん変わったと思う。果たして彼の死刑判決は妥当なものだったか、また、早急に処刑する必要があったのか。
 イラク政府としては、フセインをいつまでも生かしておくことが恐ろしかったのだろう。アメリカもフセインの口から余計なことがばれるのを恐れていたにちがいない。しかし、あせって処刑したのは完全な失策だった。
 はっきりいえることは、いまや殉教者となったフセインは、彼が望もうと望むまいとこれから聖戦のシンボルとして有効利用されるだろうということだ。かつてフセインについて快く思っていなかった私が、つい感銘を受けてしまったフセインの死である。イスラム教徒であれば、なおさらだろうと思う。

 サダム・フセイン元イラク大統領の処刑は、イラクをますます泥沼に向かわせるターニングポイントとなるだろう。米国は藪をつついて蛇を出しまくっている。まあ、突っついた奴も藪(Bush)なんだけどね。

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コメント

またまた古いものにコメントしてスミマセン…
リンク先の記事も含めて、興味深く読ませていただきました。
フセイン氏の印象、ちょっと変わりますねぇ。こういうのを読むと。
東条英機の遺書を始めて読んだときにも感じた、後ろめたいような居心地の悪いような、複雑な気持ちになってしまいました。

仰る通り、彼はこれから「聖戦のシンボル」とされそうですね。
ただでさえ宗教や部族による対立が激しいところに加えて、
フセイン派と反フセイン派という思想対立が生まれそうで…

戦争責任者としての東条氏を批判する人たちと、逆に人柄や時代背景を理由に同情する人たちがいる日本のように、イラクもまた、長きに渡って「歴史の評価」で国論が二分されるのではないかと思うと、とても他人事とは思えなくて、ため息が出てしまいます。

投稿: 猫だぬき | 2007年1月29日 (月) 09:48

猫だぬきさん

人というものは、わずかにいる特殊な人たち以外は、どんな人も個人的につきあってみると、普通の人・・・生身の血の通った人だと実感するんですよね。例えそれがアドルフ=ヒットラーであったとしても。
フセインが身内のおじさんとかおじいさんとかだったら、きっと大好きになったかも、とすら思いました(父じゃないところが微妙)。

しかし、メソポヤミア文明の発祥地、日本より遙か昔から高い文化を誇っていた場所が、一部の思い上がった人たちのせいで破壊され尽くす様は、本当に諸行無常な思いがします。

投稿: 黒木 燐 | 2007年2月 1日 (木) 17:55

「わずかにいる特殊な人たち」と「普通の人」。果たしてジョンイル君はどちらに属しているのだろう?? …とか、一瞬思ってしまったんですが、それより今、「じょんいる」と入力して変換したら、一発で「正日」と出てビックリしました。5~6年前のパソコン(というかIME)でも一発で出たかなぁ??

>一部の思い上がった人たちのせいで破壊され尽くす様は、
>本当に諸行無常な思いがします。

「諸行無常」なんて難しい言葉は私にはピンと来ません。
「怒り心頭」とかならピンと来るし同意もできるんですが…

投稿: 猫だぬき | 2007年2月 2日 (金) 13:05

猫だぬきさん

「怒り心頭」をぶち抜けると「諸行無常」の心境になります。
というか、人類の歴史が創造と破壊の連続なわけで、そういう意味で書いたワケです。

投稿: 黒木 燐 | 2007年2月 2日 (金) 13:16

ああ… なるほど… 
深いですね。
深くて悲しくて愛おしいものですね。
人の世は。

投稿: 猫だぬき | 2007年2月 3日 (土) 10:26

猫だぬきさん

そうです。
そして、芥の中に時折輝くものがあり、
その美しいものを守りたいと思うのです。

って、後半アニメ「デビルマン」のエンディングテーマみたくなったにゃ。

投稿: 黒木 燐 | 2007年2月 6日 (火) 12:44

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