テレビ番組は正しいことを伝えているか
この話題で引っ張って恐縮だが、この際勢いで書くことにする。
あるある捏造の件で関西テレビとキー局のフジテレビに2800件もの苦情や意見が届いたらしい(結局苦情は1万件を超えたようである)が、その多くが「信じていたのに裏切られた」というようなものだったそうだ。多くの人が疑いを全く持たずあの番組を見て、いろいろ実践していたということだ。まあ、だからこそ、高視聴率をとることが出来、トータルで10年も続いていたのだろう(途中放送終了したが、間髪を入れず「発掘!あるある大事典II」が始まった。しかもその第1回放送が「春の芸能人血液型SP」というふざけた企画だった)。
この番組「発掘!あるある大事典」(1996/10/27~2004/3/28)「発掘!あるある大事典II」(2004/4/4~2007/1/14)は、もともとNHKの「ためしてガッテン!」(1995/4/5~)のパクリ番組である。その「あるある」をパクッたのはTBSの「スパスパ人間学」(1999/4/14~2003/3/5))という、やはり健康というかダイエットネタがウリのバラエティー番組だ。今回の不祥事で、「あるある」も打ち切りが決まったようで、結局元祖が生き残ったのは当然と言えば当然か。とりあえず、残る問題児は「おもいッきりテレビ」だが、これもいい加減な情報のカタマリのくせに、しぶとく生き残りそうだ。
今回の件で図らずも証明されたことは、「オバサマたちは味方につけると強力だが、敵に回すとすっげぇ怖い」ということか。この事態を鑑みて、「おもいッ●りテレビ」もちったあマトモに健康情報の元を調べるようになるかな。まあ、みのさんは「朝ズバ」で、自分の番組は大丈夫と胸を張っていたようだが・・・。おいおい、アンタんトコこそ(以下略)。
ところで、この「あるある大事典」「あるある大事典II」は、健康情報番組のような印象が強いが実はもっと幅の広い生活情報番組であった。そして、健康ネタやダイエットネタ以外では、けっこう良質な情報も放送していたらしい(らしいと言うのは、初期の頃こそ楽しみで見ていたが、途中からつまらなくなって見なくなったからだ)。ところが健康やダイエットネタになるととたんにダメダメ大事典になってしまうのだ。この点からしても、そういう業界が如何に魑魅魍魎の跋扈するような世界か想像できる。
そろそろ、本題に移ろう。
この手の番組の(視聴率稼ぎ故の)捏造ややらせは、今回問題になった番組のこの放送分(2007年1月7日)だけなのだろうか。今まで放送分は信用に足るものなのか。あいにくこれらのサイト(発掘?あるあるトンデモ大実験・教養ドキュメントファンクラブ)を読むと、そうではなかったと言わざるを得ない(あるあるトンデモ大実験のほうは、「おもいッきり」の方の検証もあるから参考までに。最近サイドバー表示に時間がかかってるけど)。
一時期の血液型性格診断ネタ番組の乱発で、相次ぐ苦情を受けたBPO(放送倫理・番組向上機構)の「放送と青少年に関する委員会」が、「『血液型を扱う番組』に対する要望」を公表し放送局への回答要請を行った。当然「あるある2」初回の「春の芸能人血液型SP」にも回答要請が行われた。
それに対する「あるある」サイドの答えはこれだった。
他の局からの回答も、ここで読むことが出来る。
『脳力探検! ホムクル!! ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント!』 TBS
19:00~20:50(04/6/5放送分)
http://www.bpo.gr.jp/youth/answer/answer_42.html『月曜エンタぁテイメント~心と体の血液型大診断』(05/2/14放送)に関するテレビ東京からの回答
http://www.bpo.gr.jp/youth/giji/giji_0504.html#getu
これらのテレビ側の回答を見ると、とりあえず問題点を社内で話し合い改善すべきトコロは改善するようなことを書いているが、「このほうが視聴率が取れるんじゃい」みたいな心の声が聞こえていまいち納得出来ない。多分何故そんな批判が出ているのかわかってないのだろう。BPOから何を言われようが、罰則があるわけではない。なにより視聴率さえ取れればいいのだ。
とはいえ、あまり批判が多くBPOからもクレームがついたせいか、最近は血液型関連の特に目立った番組はないように思える。しかし、今まで最もらしく科学的らしく特集され刷り込まれた血液型ごとのステロタイプな性格像は、多くの日本人に消えない偏見を植え付けたのは間違いない。それに、今こそ下火になっているが、ブームが再燃して、またぞろくだらない類型論が垂れ流されるにちがいない。
これは、星座と違ってたった4種類しかないというため、わかりやすいのと、やはり「科学の衣」を着ているため、科学的に証明されていると錯覚させやすいからだろう。。
これについては、ここでも「信じるものは救われるか」というエントリーで書いている。
さて、このことからわかるように、このような基本がバラエティのような番組の場合、例え実験したように見せかけても、実は結果ありきであることがほとんどなのだ。そういう方針ならば、例えサンプルが100であろうが1000であろうがその実験結果に意味はない。何らかのバイアスがかかっているからである。実際科学者達のやっている実験は、多くのサンプルを取り、なおかつ対照群の結果も取って、出来るだけ実験者のバイアスがかからないように慎重に行われなければならない。そのため、実験者にはどちらが対象群かわからないようにせねばならない。それでも満足な結果が出ないことが多いのだ。10人以下の人数でたった一週間や二週間で結果が出るような事は有り得ない。あれは実験ではなく単なるデモンストレーションである。
この前から騒がれている不二家事件のように、今度は「あるある大事典」が槍玉に挙げられるだろう(すでに「あるあるI」までさかのぼって、「レタスで快眠」(98年10月放送)の回でも捏造が発見されている)。マスコミもそろそろ新しいネタがほしいところだろう。そして今更のように番組の数々のヤラセや捏造が発覚するだろう。すでに、もう「あるある大事典」関連の本も本屋から撤去され始めており、逆に批判本が売れているようである。鷺さん(教養ドキュメントファンクラブ)が以前出版された「また『あるある』にダマされた」の売れ行きも急に伸びたようだ。みんながもう少し懐疑心を持ってテレビを見ていたら今回のような騒動は起こらなかっただろうし、番組もⅡを待たずに終わっていただろう。
それにしても、「あるある」の落ちぶれかたのすさまじさはどうだ?「小公女」のセイラ・クルーなんて目じゃないくらいの転落ぶりである。よくもまあ、ここまで手のひらを返せるものだと感心する。しかし、相変わらず弱った雄鶏(オンドリ)をよってたかってつつき殺すようなマスコミには反吐が出そうである。
結局、捏造発覚で「あるある」は打ち切りとなった。1社提供だった花王が捏造発覚を受け提供を降りたからだ。しかし、本当に花王はシロなのか。
下にソース元を上げているが、花王側の言い分は「広告主として日ごろから信頼性のある番組であることを要望しており、今回のことは極めて遺憾だ」ということで、これがスポンサーを降りた理由だとしている。しかし、「あるある大事典」という番組が花王製品の売り上げ増に協力してきたことは事実だろう。実際、ダイエットネタの時など、ヘル●ア緑茶だのエ■ナクッキングオイルだののCMを節操ないほど露骨に流していたのは事実だ。そして、普通よりかなりお高いその緑茶が、未だ飲料コーナーにそれなりの量が売ってあるということは、けっこう売れているということだ。実際番組は花王製品の売り上げに貢献してきたのは間違いないだろう。
1社提供である花王が番組制作にまったく関与していないとは思えないし、もしそうだとしても、自社提供の番組を見て、そのいい加減さにまったく気づかずに、いままで「信頼性のある番組」と信じていたとすれば、そういう会社の開発した製品は信用に足らないと言わざるをえない。降板は「捏造に遺憾」というよりも、火の粉が飛び火するのを恐れたというのが本音だろう。
■ヘルシアやエコナの問題点
http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=584
http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=472
それからキー局であるフジテレビだが、番組に人気があって看板番組としてかなり力を入れていたのではないかと思う。関西テレビという、地方のテレビ局のしでかしたことと、まったく他人事のような顔をしているが、自局のアナウンサーを出しているし、レギュラーも有名ドコロを多く起用させていた(まあ、これがフジテレビの力かどうかはわからないが)。それが、見事な手のひら返しを見せてくれた。まさに「レ・ミゼラブル」「ああ無情」である。しかし、放映していた限り、彼らにまったく責任がないとはいえないだろう。双方とも見事な尻尾切りだ。
余談だが、「レギュラー」といえば「あるある探検隊」だ。彼らのネタがこれからこれまでどおり使えるかどうか、他人事ながら非常に心配である。西川君が気絶したまんま目が覚めなかったらどうしよう(笑)。
また話が本題からそれてしまったので、そろそろまとめよう。
テレビ番組はまず、神様であるスポンサー次第でスタンスが変わってしまうものなのである。では、視聴者が神様であるNHKの場合はどうかというと、それでも、いろいろなしがらみや某所の検閲等で、規制されてしまうようだ。酷い時には製作者の意図次第でトンデモ番組を作ってしまうこともある。「奇跡の詩人」という番組について記憶している人もいるだろう。また、テーマによってもそれは変わってくるだろう。映像だって写し方やカットや状況によって同じことをまったく違うものにしてしまうことが出来るので、情報操作は意外と簡単なようだ。
私だって、たまたまこういうひねくれたスタンスであったから、今回は騙され組になることなく、こういうエラそうなことを書けるのだが、今までだってけっこうトンデモを鵜呑みにしたことが何回もある。また若い頃ではあるが、善意の寄付と信じてハンカチなどを買ったことも何度かある。今思えば、それは「統一協会」や「オウム」あたりのカルトの資金源になってしまったかもしれず、悔しい限りである。
私は番組にもよるが、多少ならヤラセも仕込みも演出も構わないと思う。というか、それなしでは番組制作は無理だろう。それにバカ正直に作られても面白みのないものが出来るだけである。しかし、でっち上げや捏造・改竄をすることとソレは別物である。特に曲がりなりにも「科学的データ」を扱う番組でそれは致命傷である。
今回の事件を教訓に、「あるある大事典」だけでなく、すべての類似番組や健康情報を垂れ流すコーナーを徹底的に検証してほしいと思う。「あるある」だけに全部責任を被せずに、製作者各自が自省してもう少しまともな番組を作ってほしいと思う。
また、テレビを視聴する人たちも、この教訓を生かして、何でも鵜呑みをせずに極力自分で考えるように心がけてくれたらいいと思う。
しかし現実は、また同じことを何度も繰り返すのだろう。とにかく、踊らされてひとつのベクトルに走るのだけは気をつけてほしい。ただし、当然だが避難勧告が出ているような時だけは別だ。その時は速やかに指示に従って、急いで、しかしあせらずに避難場所に行くようにしてください。
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***アーカイブス***
■「あるある」関西テレビ 捏造だけでなく「盗用」会見
http://www.j-cast.com/2007/01/22005049.html
■「あるある」スポンサーの花王が降板
http://www.nikkansports.com/entertainment/f-et-tp0-20070122-145731.html
花王は22日、関西テレビの情報番組「発掘!あるある大事典2」で実験データの捏造(ねつぞう)が発覚した問題で、スポンサーを降りる方針を決めた。
同社は「広告主として日ごろから信頼性のある番組であることを要望しており、今回のことは極めて遺憾だ」としている。
花王は96年10月に同番組の前身である「発掘!あるある大事典」が始まってから、単独スポンサーとして番組を支えてきた。
[2007年1月22日12時47分]
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コメント
こんにちは。TBありがとうございました。
とっても嬉しかったです~♪^^
みんな自分がカワイイからね~それは仕方がないことなんだけど、あまりにもゲンキンで情もなにも皆無?番組、商品の業者、スポンサー‥みんながボロ儲け(本、ネタ素材、そして番組によってはオリジナルアイデア商品、関連スポンサー商品などなど)してきたってことでしょう。
これは不祥事なんかではなくて、耐震偽装と一緒の巨悪から雑魚まで全員の詐欺犯罪行為なんじゃないかな~。番組だけが打ち切りでおわり‥みたいな事件じゃないです。業者だって前もって放送内容を教えてもらって準備してたって言うからこれは市場混乱の予防だけじゃないような。それなりの謝礼や接待もあったんじゃないのかな?^^無い方が想像できないっす。(爆)
すべての癒着は‥犯罪の温床ですね。
投稿: ココロ | 2007年1月31日 (水) 13:41
ココロさん
レス遅れてすみません。
儲けた挙句に下っ端のせいにして一件落着。
そして大物は生き残っていくという、何処でも同じような構造ですね。
結局番組打ち切り、芋づる式捏造発覚、ちったぁ揉めるけどいずれ飽きられて沈静化、また似たようないい加減な番組が出来て・・・ってな感じでしょうか。
あと、MのMんた氏とH木氏をどーにかして欲しいですね。
特にあの壷売り偽占い師H木。あるあるついでに彼女についてもバクロしたら、アパ問題も柳沢発言も霞むくらい大騒ぎになるでしょうに。
それをしないのは、彼女がやっぱり金の力で中枢に食らいついているからかな。
結局下々の者は、程度の差こそあれ、踊らされ続けるだけなんでしょうね。出来るだけそうならないためには、多方面からの情報を得るように努めるべきでしょう。
投稿: 黒木 燐 | 2007年2月 2日 (金) 09:41
こんばんは。H氏は絶対にお金の力ですよね。だってこれもお金がらみのヤおチョウ疑惑のアサしょうリュウをめっちゃ可愛がっているでしょ。お金の臭いプンプン。本当に情報チェックを怠ると酷い目にあいそうですね。くわばらくわばら。
投稿: ココロ | 2007年2月 4日 (日) 00:28
ココロさん
変な変換は検索防止ですか(笑)。
H氏もたいがいですが、E原氏(伏せ字になっとらんな。)もいい加減消えて欲しいですワ。
ここ↓で、またえらいこと書かれてますが、激しく同意。
http://www.shakaihakun.com/data/vol061/main02.html
投稿: 黒木 燐 | 2007年2月 6日 (火) 12:48