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2006年12月18日 (月)

教育基本法を比較してみる。

※加筆しました。

 今更ではあるが、現行教育基本法と「教育基本法改正案」の比較(06年4月27日作成)を見ながら、両者の比較をちょっとしてみた。

 まず、第一印象だが、「改正」案のほうは現行法にくらべて文章が若干情緒的な気がする。また現行法は1条~10条までで、わりとさらりと、しかし要点は抑えて書いてあると思う。「改正」案はそれを1章から4章に分け、条も18条まで増やし、さらに箇条書きで事細かに指示しているようだ。

【参考】教育基本法案について(文部科学省のHP)より。両方ともPDF

 
 とりあえず、前文についてコピペし、比較してみよう。文字色太字とアンダーラインは私。なお、青文字が違っている部分である

 ■現行法

前文

 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、
個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を普及徹底しなければならない。
 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

 ■改正案

前文

我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

 なんつっか、いきなり「たゆまぬ努力」と来た。現行法は「われら」と、民主主義を取り戻したばかりって感じで、ナショナリズムを感じさせないよう気を遣ったのではないかという書き方になっている。「改正」案では、その気遣いもなくしっかりと「日本国民」と強調してある。ここで疑問なのだけれど、こういう法律って在日外国人には関係ないものなのだろうか。
 「建設して」が「築いてきた」となっているのは、やはり終戦直後と戦後60年を経た現在の違いだろう。「真理と平和」が「真理と正義」と変えられているのがちょいと気になる。また、「個性豊かな」が削除されている。個性は優先されないらしいい。

 次に「教育の目的」について見てみよう。

 ■現行法

(教育の目的)第1条

教育は、人格の完成をめざし、平和な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 ■改正案

第1章 教育の目的及び理念
(教育の目的)第一条

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 改正案で削除された「個人の価値」という部分は次の二条の2

「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。 」

に、別表記されている。「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。 」という下の句がついているところがミソ。

 学校教育に関しては、現行法は5行程度に書かれているのだが、「改正」案では大学・私学・教員・家庭教育・幼児教育・社会教育等々かなり細かく書かれており、「改正」に際して如何に力を入れたかったが良くわかる。
 長いので、一部宗教教育について抜き出してみよう。

 ■現行法

(宗教教育)第9条 

宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。

 ■改正案

宗教教育)第十五条

1 宗教に関する寛容の態度宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。

 ごらんのように、「宗教に関する一般的な教養」というのが付加されているが、宗教に関する一般的な教養とはいったい何なのか、私にはわからない。そも、自分の宗派に於いてなのか、宗教全般についてなのか。全般についてなら、一般教養ってのは無理でないかい?私はせいぜいイスラム教徒は豚、ヒンドゥー教徒には牛を食わせちゃなんねぇ、カルトで言えば「ものみの塔」の信者は輸血をしない、あたりくらいしか思いつかない。そういうわけで、何故わざわざこれが付加されているかが理解できない。

 引っかかるのは、最後の補則である。

 ■現行法

(補則)第11条 

この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。

 ■改正案

第4章 法令の制定 (補則) 第十八条

この法律に規定する諸条項を実施するため必要な法令が制定されなければならない。

 これに関しては、ずいぶん短くなっており、「必要がある場合には、適当な」が「必要な」の一言で終わらされている。「必要な法令が制定されなければならない」、すなわち、諸事項を実施させるための法令が必ず出来ると言うことである。一見大して変わらないように見えるが、実はここが「改正」案のキモだと思われる。
 全体的に読んでみても、細かいな、くらいでそう問題なさそうに思われるが、これらを守らせることを理由に、またトンデモナイ法案が出来る可能性があるのだ。なんか、まるで悪徳商法の契約書を連想させられるが、要注意である。

 そして、この、 「制定されなければならない、必要な法令」にひっかかるものが以下の二つだ。

1.

 ■現行法

(義務教育)第4条 

国民は、その保護する子女に、9年の普通教育を受けさせる義務を負う。

 ■改正案

第2章 教育の実施に関する基本 (義務教育)第五条

国民は、その保護するに、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

 「9年の」が、「別に法律で定めるところにより」に変えられている。9年の義務教育を変えるんだ。

2.

 ■現行法

教育行政)第10条

1 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものる。

 ■改正案

第3章 教育行政 (教育行政) 第十六条

1 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものあり教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

 「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」が「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」に取って代えられている。ひでぇ・・・。

 
 私は前にも書いたけど、今の行儀の悪い連中(老若男女関係なく)を見るたびに、もっと法律を厳しくすればいいのにと思う。
 しかし、よく考えたら、路上の喫煙もツバ吐きも自転車やバイクのひどい乗り方も、携帯電話の使用の制限も、その他色々も、法で規制されているものが多い。ただ、見て見ぬふりをしているだけだ。注意しないから、やめない、減らない。あまりも悪質な場合は検挙してもいいだろう。特にチャリやバイクの危険走行や暴走族の騒音や道路の劣化を早める改造車が、なぜ堂々と公道を走っているのか理解出来ない。

 教育基本法に関しても、そのように言えるのではないか。敢えて変えたり、それを守らせる法律を新たに作ったりするよりも、読む限り、現行法(今のところだが)の範囲で充分用途に耐えるものと判断出来ると思う。
 それを無理矢理変えようとするから、何かあるのではないか(実際あるのだろうが)と余計に勘ぐられるのだ。何故、今になって焦って変えようとするのか。それも、多くの人の反対を押し切ってだ。

 かつてのゆとり教育は、結局、学校で学ぶべき事柄を減らしただけで、その反面塾通いは野放しだった。ゆとりの使い方を間違っている。だいたい、子どもの寝るべき時間にまだ町をふらついたり、電車で我慢できずにジャンクフードを食べたりする子など、日常茶飯事に見る。それでは健康な子どもは育たんよなあと、しみじみ思う。9時、遅くとも10時過ぎたら子どもは寝ろと。

 それが悪法でない限り、悪いのは法律ではない。それを使い切れない人間の方に問題があるのだ。

 今回の改正教育基本法が、悪法にならないことを祈るばかりである。
 

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コメント

燐さんこんばんは。
その宗教は何か?
それはもちろん‥あんな宗教もコンナ宗教もあるでよ。(苦笑)

>必要がある場合には
これでは命令することはできましぇんから~~~。(爆)

投稿: ココロ | 2006年12月19日 (火) 01:00

はじめまして。
「宗教に関する一般的な教養」ですが、これはその次の項にある「(国公立校は)特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」(現行法と同じ)に対応しているのではないでしょうか。つまり、「特定」は駄目だが、「一般」の一環としてなら生徒を靖国神社に連れて行ってもいいじゃないかとか……。いずれにせよ、現行法よりもいろいろ細かく書かれている分だけ、これからやろうとしていることの伏線だらけではないかという気がします。
ところで、このブログのフォントはすごく読みやすくていいですね。

投稿: ヤマボウシ | 2006年12月19日 (火) 02:54

ココロさん、こんにちは。

やっぱあんな宗教やこんな宗教の為ですかねえ。
宗教対立をまねきそうですが・・・。

比較してみると、かなり孔だらけで、これはどうにでもなるなって印象でした。しかし、ちょいとオリジナルに付け加えるだけで、あら不思議、とってもきな臭くなりました、って感じです。くわばらくわばら。

投稿: 黒木 燐 | 2006年12月20日 (水) 12:44

ヤマボウシさん、はじめまして。

なるほど、逆に一般と表現して焦点をぼかしているわけですね。
「一般」の一環としてなら生徒を平和会館に連れて行ってもいいじゃないか、エル・カンターレのアニメを見せてもいいじゃないか、と。

>これからやろうとしていることの伏線だらけではないかという気がします。

そんな感じですね。それも読者にバレバレのド下手な伏線です。最近の金田一少年の事件簿よりひでぇ伏線(あ、このマンガのマンガ家さんも「幸福」信者で有名ですね)。

>ところで、このブログのフォントはすごく読みやすくていいですね。

そうですね。以前私の文章は長文にしては読みやすいと褒められたことがありますが、ここのフォントの影響も大きいと思います。

投稿: 黒木 燐 | 2006年12月20日 (水) 12:53

元駐レバノン大使(=元政府高官)・天木直人氏が「法改正によって行政にあらたな権限が付与されたとたん、行政は我々の眼の届かないところで行政裁量という名の強権を発動し、おびただしい政令、省令、通達、要領をつくって国民を規制することができるのだ。この段階ではメディアはほとんど報道しなくなる。我々には何も見えないのだ。それが危険なのである」と述べています。まさに黒木さん(わたしも)の心配にお墨付きが付いたようなものでしょう。

投稿: ヤマボウシ | 2006年12月20日 (水) 22:26

ヤマボウシさん

天木さん、がんばっておられますね。
彼のような勇気ある告発者がもっと出てきてくれたら、日本も良い方向にシフトしそうな気がします。今のようにほとんど根腐れ状態では、庶民は苦しくなるばかりです。

まったく天木さんのおっしゃるとおりですね。
法律のための法律がどんどん出来ていき、あまりにも細かく縛り始めると、なんでこんな規則が?みたいな訳のわからないものまで作られてしまいます。校則みたいに、スカート丈は膝上ちょうど1cmにすることとか、髪の色は黒以外不可で、地毛が茶色なら染めなければいけないとか、弁当は必ず日の丸弁当にすることとか(笑)。絶対領域の幅は15cmに限るとか、アホ毛はかならずひと束作ることとか・・・、あれ?

冗談はともかく、いやな世の中になりそうです・・・。

解説
アホ毛:萌えキャラの髪で、一房あるいは数房乱れた髪
絶対領域:ニーハイソックスから出た太股の生足部分
参考
http://stp.cocolog-nifty.com/blog/2004/04/post_4.html

投稿: 黒木 燐 | 2006年12月21日 (木) 13:02

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