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2006年6月 1日 (木)

虫の思い出

 小学校の頃、理科の授業で青虫を持っていくことになった。いわゆる鱗翅目の幼虫である(毛虫が持っていく範疇にあったかどうかは覚えてない)。

 私は蛾が嫌いだった。だったではない、今も苦手である。ただし、写真で見れるくらいは克服している。それでも、子どもの頃はモンシロチョウあたりならつかめるくらいの度量はあった。しかし、モンシロチョウ・キチョウ・アゲハチョウ以外、ヒカゲチョウあたりの眼模様が目立つようなシロモノは触覚が先太りであろうが、翅を閉じてとまろうが、全部私にとって「蛾」であった。
 いまでこそ、蝶が蛾のなかの特殊なグループを指すこと、外国では蝶と蛾の区別がない国があること(例えばフランス語は蝶も蛾も「パピヨン」である)、蝶と蛾の明解な区切りはないこと、蝶と蛾の一般的な見分け方があるが(蝶と蛾の違い)、どれも例外があることを知っている。すなわち、胴の太い蝶もいれば触覚先細りの蝶もいる、派手な蛾もいれば地味~な蝶もいる、昼間飛ぶ蛾もいれば蝶が夜明かりにつられてやってくることもある。見かけが蝶そっくりだけど、触角が糸のような蛾だっている。

 小学校に入り立ちの頃は、近所のお姉さんが二人迎えにきてくれていた。いつごろからか来なくなってしまったが。
 ある日の朝、私が準備を終え出て来たら、お姉さんたちの前にモンシロチョウがひらひらと飛んで来た。お姉さん達がきゃあきゃあ言いながら捕まえたら、なんと2匹いる。これはお得だってんで、一人一匹ずつ分けようとしたら、なんとお尻から緑色の何かがびろ~んと出てきた。「キャッ!」と叫んでお姉さんたちは蝶を離した。すると、彼らはモツを出したままどこかへ飛んでいってしまった。
 多分交尾しながらのランデブーだったんだろうが、それに夢中で小悪魔小学生がいるのに気がつかなかった蝶の不運であった。まあ、そういうときに周りが見えないのはヒトもチョウも同じかもしれないが、かわいそうだが彼らが子孫を残すことは不可能だっただろう。

 さて、話を冒頭にもどそう。

 小学何年だったか忘れたが、理科の授業に青虫を持って行くことになった。青虫は祖母が畑から取ってきてくれた。きれいな緑色の青虫が2匹いた。それで、フタ付きのガラス瓶にキャベツを入れて、意気揚々と持って行った。その日は朝から雨が降っていて肌寒かったと記憶している。梅雨時だったのかもしれない。
 授業は無事に終わったが、一体どんな授業内容だったか皆目覚えていない。蝶の一生あたりを習ったのかも知れないし、観察だけが目的だったかもしれない。
 学校が終わり、雨の中をとぼとぼと歩いて校門を出たところで、ふと青虫の様子が気になって、手さげ袋からビンを取り出した。元気にしてるかなあ・・・。
 ところが、ビンの中身を見て私は震え上がってしまった。

 なんと、一匹がもう一匹の仲間をさかんに食べていたのだ。

すでに半分くらいは食われていた。多分食草が違ったのだろう。今も覚えているが、今考えたらあれはどうみてもモンシロチョウの幼虫ではなかったのだ。後ろ側に突起がついていたし、多分スズメガの一種だったんだろうと思う。考えたら酷いことだ。「食べ物」のない狭い瓶の中で、腹を空かせた彼等の弱いほうが食われてしまった。文字通りのデスマッチである。生物の遺伝子の中にある生き残って子孫を残すという指令。彼等はそれに従っただけなのだ。
 いったい祖母はどこから彼らを取ってきたのだろう。取ってきたのならその虫がいた植物も一緒に採取するべきである。しかし、祖母の頭の中には青虫=モンシロチョウの幼虫=食草はキャベツという図式が成り立っていたに違いない。
 それまで大事にしていた青虫が、急におぞましいものになってしまった。もう手さげの中に入れたくなかったし、かといってそんな悲惨なものを手に持って、雨の中30分の道のりを歩く勇気もなかった。要するに一刻も早くそれからおさらばしたかったのだ。仕方がないので私は、近くの草むらに瓶ごと放置して逃げた。彼が瓶から出れるように一応フタは外しておいたが、無事成虫になれただろうか。

 今なら、生き残りに「佐川君」という名をつけて無事成長を見届けたかも・・・、いや、無理だ。ワクテカで観察していたら、出てきたのが特に苦手なスズメガだったら、卒倒モノである。

 ここ2・3日、日中の暑さは尋常ではなかったが、もうすぐ梅雨がきて本格的な夏を迎える。夏は虫たちの季節だ。ここしばらくはなかったが、蛾が室内に紛れ込み、一人会場大パニックになることはよくある。今年も無事に夏をすごせますように。

「りん・し・もく」と読む。蝶や蛾。最近はチョウ目と表記しているところも多い。しかしながら、蝶が蛾の特殊形態であるならガ目とすべきだと思うが、「がもく」では様にならないような気もする。とりあえず、このブログでは「鱗翅目」で統一しようとおもう。

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コメント

なんだか今夜、悪夢にうなされそうな予感のする記事ですが…

鱗翅目 ← 読めないっっ これ普通の人、要ふりがな(笑)

蛾と蝶、私は生まれたときから同一視していました。
きっと、ほんとはフランス人なんだと思います。

蛾も蝶もゴキもカナブンもコウモリも、
飛びモンは全て「むし」です。
前世でえらい目に遭わされたんだと思います。

>今なら、生き残りに「佐川君」という名をつけて

やっぱりフランス人やめた!
青虫に襲われる夢みたくないし(笑)

投稿: 猫だぬき | 2006年6月 2日 (金) 11:36

猫だぬきさん

>鱗翅目

読みと説明を最後に追加しました。

因みに私は前世で、お酒と蛾で大変な目にあったんだと思います。

>>今なら、生き残りに「佐川君」という名をつけて

>やっぱりフランス人やめた!
青虫に襲われる夢みたくないし(笑)

「佐川君」でソレがわかるなんて、流石ですね。

投稿: 黒木 燐 | 2006年6月 2日 (金) 15:44

それはトラウマになりそうな光景でしたね~。
私もそんなの見たら、速攻で青虫を捨てて逃げ帰ります。(^^)

昔は通学路にキャベツ畑があって、良く青虫を捕まえて
いましたが、家にもって帰ると気持ち悪がられてました。
すぐに捨てに行かされてましたので、さなぎになって、
蝶になる瞬間の観察など出来ませんでした・・。

投稿: wanwanmaru | 2006年6月 2日 (金) 23:09

>鱗翅目

ご丁寧な解説付きでありがとうございます。ひとつ勉強になりました。
今朝、犬の散歩で公園に行ったら、ツツジの葉の上に、長さ3センチほどの青虫がいました。ツツジに青虫?と思ったら、隣にクチナシの木があったので、たぶん、私に手を振るために出てきたんだと思います。朝から愛想の良い青虫君、なんだか燐さんに見えて見えて、仕方ありませんでした。

>「佐川君」でソレがわかるなんて、流石ですね。

ここらへんが、B型かなぁ~と自分で思います。
ってまだ引っ張るか、血液型。

投稿: 猫だぬき | 2006年6月 3日 (土) 10:17

wanwanmaruさん、

やっぱ、ムシ関係は家族、特に女性陣が嫌がりますね。私は蛾関係以外ならだいたい大丈夫です。蝶も触らなければ大丈夫。とはいえ、怖くないけど、ゲジとか大きなクモとか、あと、うにょうにょしたのは触りたくないです。
脊椎動物だったらほぼ全部大丈夫です。ヘビもカエルも平気です。

私も羽化現場にリアルで立ち会ったことはありません。蛾はちょっと考えますが、そのほかの昆虫だったら一度くらいは見てみたいと思います。

投稿: 黒木 燐 | 2006年6月 3日 (土) 13:57

猫だぬきさん、

ついでに言うと鱗翅目の鱗は鱗粉の鱗でウロコ、翅は昆虫のハネ、です。確かに拡大するとウロコのついたハネですね(某CM参照)。

散歩の時に会った青虫君は、クチナシが近くにあったのなら、多分オオスカシバというハチドリみたいなスズメガの、幼虫です。この記事では「昼間飛ぶ蛾」のところでリンクしてますから、ご確認ください。下のほうに幼虫写真があります。

>たぶん、私に手を振るために出てきたんだと思います。

そうですね、思うのは・・・「自由だー!」(By犬井ヒロシ)

>朝から愛想の良い青虫君、なんだか燐さんに見えて見えて、仕方ありませんでした。

何故か素直に喜べないのは青虫の呪いのせいでしょうか・・・www。

ところで、きのう猫だぬきさんのブログの、君が代の替え歌の記事に、昼休みを大幅にオーバーしながら名文コメントを書き綴ったのに、送信をし忘れて全文あぼーんしてしまいました。ぐっすし。


投稿: 黒木 燐 | 2006年6月 3日 (土) 14:18

スズメガの幼虫ですか。
クチナシの青虫はよく見るので、(これも何かの役に立つかもしれないし) 覚えておこうと思います。

>名文コメントあぼーん

うわーん。もったいない。読みたかった~
気力を振り絞って、また書いてくださーい (^o^;)

投稿: 猫だぬき | 2006年6月 4日 (日) 10:44

いや~、もう書けないような気がします。
会社で書いてたから、丁度部屋に誰もいなかったから昼休み以降もノリノリで書いてたら、人が来たので焦ってしまったようです。
まあ、たまにはこういうミスもありますワね・・・。

投稿: 黒木 燐 | 2006年6月 5日 (月) 00:26

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