« 歩いている時に起きた危険の話 | トップページ | カステラ無残(T-T) »

2006年5月25日 (木)

領土問題の陰で絶滅する生物

 これは恥ずかしながら「古世界の住人」というブログで初めて知ったのだが、竹島問題の中でひっそりと絶滅してしまった動物がいる。ニホンアシカという動物である。

  ■竹島問題で絶滅した?ニホンアシカ(参考記事)

 かつては日本全国の海岸で見られたニホンアシカは、誰にも関心をもたれずにいつの間にか絶滅してしまった。いや、気づいた人もいるだろう。1958年の調査では最後の生息地である竹島付近で200~500頭ほどのニホンアシカが確認されている。500頭という数はなんらかの措置をとらねば絶滅しかねない状態である。

 ニホンアシカの肉は不味く、食用よりも毛皮や脂を取る為に人間に狩られたらしい。ただし、江戸時代までは必要に応じて漁師が狩る程度だった。しかし、日本が近代化されるとともに乱獲が始まり、軍国主義の台頭とともに加速する。年間に平均1300-400頭が獲られたらしい。そして日本の海岸からニホンアシカの影は急速に消え(人間と漁場が重なったなめ、駆逐されたせいもあるようだ)、最大の繁殖地であった竹島でも個体数が激減した。もともと竹島は海流の関係で豊かな漁場であり、竹島と名づけられて日本領になる前は、たまに隠岐の漁師が足を踏み入れる程度のニホンアシカの楽園だったのだ。
 個体数の減少とともに捕獲量も減少する。そうこうするうちに日本は敗戦を迎え、マッカーサーラインにより、竹島は日本漁船の活動可能領域から外れてしまう。
 ここで重要なのは、この時点で保護をすれば、なんとか絶滅を免れる程度の個体数がまだ残っていたということである。
 ところが1952年のマッカーサーライン廃止直前に、韓国大統領李承晩(イ・スンマン)の「李承晩ライン宣言」により、竹島は韓国領と主張され要塞化されてしまう。もともと個体数の激減していたニホンアシカが、この環境変化に耐えられるはずがなかった。最後の生息地を奪われたニホンアシカは絶滅の一途をたどり、1991年に環境庁は絶滅宣言を出した。

 日本領だ韓国領だとお互い譲らない状況ではあるが、もともとの住人はニホンアシカだったのである。領土問題の陰に楽園を追われ絶滅してしまったニホンアシカ。人類の長い勢力争いの陰に彼らのような生物が少なからずいることを、時には思い出してほしい。
 

 ところで、この話には続きがある。日帝により絶滅させられたアシカを、韓国様が独島(竹島)に復元させてやろうという計画があるらしい。

  ■アホウドリ繁殖地増設プロジェクト!(参考記事。ここの下のほう参照。アホウドリのほうは日本の計画)

 って、「おいおい、そのアシカに引導を渡したのはあんたたちだろう。」と、裏手チョップでツッコミを入れたくなるが。

 穿った見方をすれば、生態系を復元させて韓国の環境保護政策をアピールし、なおかつ日本のかつての「悪行」を強調し、ますます竹島から日本を遠ざけようという思惑があるのかもしれない。
 しかし、生態系は壊すことはいとも簡単だが、失ってしまった生態系を取り戻すことは難しい、というより不可能だ。トキについてもそうだが、一度失われた遺伝子を取り戻すことなんて出来ないのだ。たとえ近縁の遺伝子を持つ生物A'を移入したとしても、かつての生態系を取り戻すどころか、もとの生物Aが抜けた状態でなんとか安定した生態系を、さらにかく乱することになりかねない。
 そもそも竹島をアシカの楽園に戻さなくては意味がないだろうから、韓国も撤収しなければならないのではないか?いっそどの国の領域ともせず、竹島を中心とした半径何キロかを不可侵地域にしてしまえばいいのだ。そうすれば、ひょっとして奇跡的に生き残っていたニホンアシカたちが戻ってくるかもしれないだろう。

 韓国にどれだけの自然復元技術があるのかは知らないが、そんな無駄なことに費やさず、北朝鮮崩壊後の荒れ果てた大地を豊かな自然に戻すことに使ってほしいと思う。それがいつになるかはわからないが。

※古世界の住人さん、記事を参考にさせていただきました。
 どうもありがとうございます。

■もっとニホンアシカについて知りたい方へ

   鳥取大学サイエンスアカデミー
     ●ニホンアシカを追って

   戦え絶滅動物より
     ●ニホンアシカ

   ようこそ原久庵へ!! より
     ●「悲劇の海獣」ニホンアシカの絶滅 

|

« 歩いている時に起きた危険の話 | トップページ | カステラ無残(T-T) »

生物・自然・天文」カテゴリの記事

コメント

もし・・・復元したら
もちろん「韓国アシカ」になるんでしょうね!?><
韓国も中国も、すり替え得意ですからね! 
そんな技術ないでしょうけど・・・。(苦笑)

投稿: ココロ | 2006年5月27日 (土) 13:54

>たとえ近縁の遺伝子を持つ生物A'を移入したとしても、かつての生態系を取り戻すどころか、もとの生物Aが抜けた状態でなんとか安定した生態系を、さらにかく乱することになりかねない。

ほんと、こっちの方に危険を感じますね。
絶滅してしまったものを無理に「復活」させるより、これ以上、絶滅する種をつくらないよう、地球を上げて努力するべきだと思います。

韓国は、やること(考えること)が、いちいち分かりやすいので、かえって反応に困ってしまいます(笑)

投稿: 猫だぬき | 2006年5月27日 (土) 14:43

ニホンアシカのことは知りませんでした。
日韓の争いの犠牲者と言えますね。かわいそうです。

竹島問題もなんとかならないのでしょうかね。ニュースで見る
たびにため息がでます。

投稿: wanwanmaru | 2006年5月27日 (土) 23:37

ココロさん

>もし・・・復元したら
もちろん「韓国アシカ」になるんでしょうね!?

そうでしょうねえ。彼らは口が裂けてもニホンアシカとは呼ばないでしょう。まあ、連れて来る予定のアシカはロシア産ですが、種類はカリフォルニアアシカ(ニホンアシカの近種)らしいですが。

技術以前に、彼らは竹島の今の状態で、ホントにアシカを呼び戻せるとでも思ってるのでしょうか。まず、生息地から保全しないと意味がないのですが。
それに万一その試みが成功したとしても、結局アシカたちと漁場が重なって、不幸な結果になるのは目に見えています。

投稿: 黒木 燐 | 2006年5月28日 (日) 00:24

猫だぬきさん

そうです。
自然保護や環境復元は、小手先や目先だけでなく、もっと全体的なそして冷静な対策が必要です。
Aの変わりにA’の生物を、という方法は日本国内でさえ問題があります。その地方で絶滅した、あるいは絶滅寸前のホタルやメダカを違う地方から移入してその種の隙間を埋めようとしたところで、もともとそこにいた動物とは違う遺伝子のものを移入したに過ぎません。そこにあるのはすでに違う生態系です。さらに絶滅寸前でまだ生き残りがいた場合でも、やはり遺伝子の交雑が進み、まったくもとの状態に戻ることはありません。特にホタルは東日本と西日本では光るパターンが違い、そいう面も考慮せねば、ホタル界で大変な混乱が起きてしまいます。
また、絶滅した日本唯一の大型肉食獣であるニホンオオカミ(クマは雑食)の変わりに大陸のオオカミを移入してはどうか、というロマンティックな計画があるようです。大型肉食獣が居なくなった為にシカなどの草食獣が増えすぎて食害が深刻だからです。
しかし、ニホンオオカミはオオカミの中でも特殊な種で、かなり原始的な形態を持つ生物だたそうで、大きさも大陸狼と比べるとかなり小さく、大陸のオオカミを導入したとしても、害あって利なしでしかありません。オオカミにとっても、再び悲惨な歴史をたどることになるのは目に見えています。
まあ、この計画は無理がありすぎなので実現はないでしょうが、ロマンだけではどうしようもないという例として上げてみました。

>韓国は、やること(考えること)が、いちいち分かりやすい

まったくですね。
日本ばかりターゲットにしていたら、横からとんびに油揚げをかっさらわれますよ、といいたいです。もっと冷静になれないものですかねえ。

投稿: 黒木 燐 | 2006年5月28日 (日) 09:29

wanwanmaruさん、

領土問題は国際間の永遠の火種ですから。
しかしまあ、見事にほぼ真ん中にありますなあ。
http://www.town.okinoshima.shimane.jp/takeshima/index.html

いっそ竹島を真半分にして、境界線を引いたら丁度よさそうなくらいですな。ってそれが出来たらもめないって(笑)。

>ニホンアシカのことは知りませんでした。

私も知りませんでしたから(汗)。
こういうことはもっとマスコミでも取り上げてほしいものです。

これからも、こういう事例をみつけたら報告していきたいと思います。

投稿: 黒木 燐 | 2006年5月28日 (日) 09:42

ホタルの光り方が、東日本と西日本で違うとは知りませんでした。ビックリです。
じゃあ、西日本のホタルが減ったからと言って、安易に東日本のホタルを連れてきたりしたら、お互いにビックリするでしょうね。「なんか派手な奴がきたな~」とか「ここの奴ら、みんな、しみったれてるなー」とか。

ビックリするだけならいいけど、そこで混血が進んでしまったら、もうそれは、東日本のホタルでも西日本のホタルでもない、新しいものを人間の手で作り出してしまう。西日本ホタルと引き換えに…。

投稿: 猫だぬき | 2006年5月30日 (火) 00:38

猫だぬきさん

そうなんですよね。
生物を移入させる場合は、つい同じ種なら
どこから連れてきてもいいと考えてしまいますが、
そうではないのです。
ホタルの場合はわかりやすいけど、
すでに混乱がおこってるかもしれません。
他の生物となれば、見えないところで
すでにいろいろやっちゃってるかもしれません。
ましてや、ペットで輸入された外国産の昆虫が
このままどっちゃりと入って来たら・・・。

「ぎゃああ、家の中にヘラクレスサンが入ってきたよお!!
(((( ゜Д゜))) ガクガクブルブル」
http://photoxp.daifukuya.com/exec/nature-photo/24624

投稿: 黒木 燐 | 2006年5月30日 (火) 11:26

>ぎゃああ、家の中にヘラクレスサンが入ってきたよお!!

ち、ちょ、ちょっと待った~
燐さん、どんなとこ住んでんですかぁ~

…と思ったけど、
要するに「そーゆーことになりますよ」
ってことだったんですね。あーコワ。

投稿: 猫だぬき | 2006年5月30日 (火) 12:06

そゆことです(笑)。

でも、ヘラクレスサンこそはいないけど、クスサンやシンジュサンあたりの大型蛾はいるはず。
最近成虫は見ないけど、幼虫のシラガタロウは見ましたから。
最近画像は平気になったけど、やはり蛾は嫌いです。リアルは遠慮願いたい・・・。

投稿: 黒木 燐 | 2006年5月30日 (火) 13:55

>最近成虫は見ないけど、幼虫のシラガタロウは見ましたから。

ふ…、シラガタロウのベイビーだ ( ̄ー ̄)

と、微笑む 燐さんを想像してしまった。


って、それだけ。
ゴミレスすみません。
無視してください ← じゃあ書くなよ(^^;)

投稿: 猫だぬき | 2006年5月30日 (火) 15:52

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 領土問題の陰で絶滅する生物:

« 歩いている時に起きた危険の話 | トップページ | カステラ無残(T-T) »