フクロムシの話
先日のタイノエの話が好評だったので(ウソ)、今回は再び海の寄生生物の話をしようと思う。
フクロムシという生き物がいる。甲殻類に属するが、エビやカニというよりもフジツボの仲間らしい(これがフジツボだ!あ、違った、こっちが正しいフジツボ)。らしいというのは、どう見てもそうは見えない姿をしているからだ。身体のほとんどの部分が卵巣で占められており、まるで袋のような姿をしている。目がない、食事をする口もない、足もなければパンツ内臓もない。ないない音頭である。
そんななんもかんも省いた姿で生存可能な生き物と言えば、寄生生物しかないワケだが、このフクロムシの宿主はカニだ。寄生虫のくせに贅沢なヤツだ。
プランクトン状態の幼生(雌)が海中を漂いながら幸運にも(カニにとっては不運にも)カニに付着すると、細胞塊を注入する。それがカニの身体を移動して所定の位置に納まると、カニの体内に根を張り寄生完了。その後やはり幼生の状態で同じカニにたどり着いた雄を取り込み生殖を開始、袋状の卵巣(体外部)をカニに抱えさせる。恐ろしいことに雄は雌に寄生したまま、単なる精巣として一生を終わるのである。しかし、そんなことは宿主にされてしまったカニの雄に比べたらましな方なのだ。
フクロムシは、寄生後徹底的に宿主を去勢する。生殖能力を全くなくしてしまい、単なるフクロムシの繁殖の道具にしてしまう。雌ガニの場合は外見は普通の雌で、まあ、一見卵を抱えたカニに見える。しかし、雄の場合はそうはいかない。がんばって代わりに「卵を産んで」もらわなければならない、ということで雄はフクロムシの寄生により雌化させられてしまう。カニのお腹のいわゆる「ふんどし」と言われる部分が細いのが雄、幅広いのが雌というのがカニの簡単な雌雄の見分け方だが、寄生された雄は「産卵」にテキするようにその部分がだんだん幅広に変化する。外見まで雌そっくりにさせられ、雄なのに大事げに卵を抱えせっせと異種生物の「産卵」に勤しむのである。
おっとろしい話だ。人間に例えて考えると、エイリアンに「妊娠」させられたレイザーラモンHGが臨月の腹を抱えて幸せそうに赤ん坊の靴下を編んでいる状態か。レイザーラモンは○ ○○○や○田○○やサンバの好きな○○○あたりに変えて想像しても良い。
・・・って、変なモノを想像させるんじゃない!!
(ウルトラQのナレーション風に)こんど磯などでカニを見つけたら、よく観察をしてみてください。妙に白っぽい卵を抱えたカニがいたら、それはフクロムシに寄生された可哀想なマツ・・・じゃなくて、雄のカニかもしれませんよ。
しかし、寄生されたカニが水揚げされた場合、多分市場には出せないだろうけど、どうなるのだろうか。捨てられるのか、それとも脚だけ取って冷凍ガニとしてカニ食べ放題の店に・・・?
ガクガク((((((((( ;゜Д゜))))))))))フ ゙ルブル
・・・ってか、大型のカニにも寄生するのか、コレ?
■もっとフクロムシのことを知りたい方へ■
ランゲルハンス島の海より
「ウンモンフクロムシ」
http://diver.exblog.jp/m2005-08-01#2177836
モクズガニのフクロムシ
http://homepage2.nifty.com/hukuromushi/hukuromusi_001.htm
ここではモクズガニフクロムシを食べるという暴挙快挙を成し遂げている。しかし不味そうである。
フクロムシ類
http://www.zspc.com/mokuzu/para/para04.html
カニの卵とフクロムシ
http://members.jcom.home.ne.jp/k-kawashima/album016.htm
いろいろな生物,パーソナル版より
「フクロムシ」
http://www.medianetjapan.com/2/20/government/stentor/fukurom.html
| 固定リンク
「生物・自然・天文」カテゴリの記事
- 九死に一生を得た青虫さんの話(2023.05.14)
- クマゼミの眼(あるいは、セミの写真を撮ったらなんか怖いモノが撮れた話)(2015.08.01)
- 不思議な野草。(2014.09.28)
- 蝶々がいっぱい(オオスカシバもおるでよ)(2014.08.29)
- タイノエの生態について追記しました。(2013.05.26)
「~の話シリーズ」カテゴリの記事
- 九死に一生を得た青虫さんの話(2023.05.14)
- あわや! 大事故に巻き込まれそうになった話(2015.08.14)
- 外食にまつわるこわい話(2010.08.17)
- カイヤドリウミグモの話(2010.01.30)
- 「日本列島の背中」の話(2008.05.31)
コメント
も~、すっかり秋らしくなって、ス・テ・キ なんて思って、本文読んだら、これですもん。
寄生とか、お好きなんですか?
私が日本に帰ったアカツキには、ぜひ、アナタと、目黒寄生虫博物館でデートしたい、と思っちゃいました♪
投稿: イタリアの奥さん | 2005年9月28日 (水) 04:21
寄生に限らず、面白い生態の生物は好きですよ。
目黒寄生虫博物館は去年妹が行って面白かったと言ってました。私が行くのを勧めたんですけど、私はまだ行ったことがありませんです。
お土産に寄生虫入りのボールペンをもらいました。微妙。
投稿: 黒木 燐 | 2005年9月28日 (水) 16:38
はじめまして。昆虫エクスプレスのプログで ハリガネムシの動画を 拝見しました。
衝撃的 でした。
それにしても 寄生虫って ものすごい力を秘めてるんですね。
投稿: さるる | 2005年10月12日 (水) 23:08
さるるさん、コメントどうもありがとうございます。
件のサイトhttp://www.canal.ird.fr/programmes/recherches/grillons/index.htmは、拾い物ですが、どこから拾ったか忘れてしまいました。ブログだったのは確かですが。
それにしても怖いですね。
ハリガネムシは以前「特報王国」とかいう番組で謎の生物か?と紹介されたことがありますが、寄生虫とわかったせいか、なかったことにされてしまったようです。
寄生虫ってほんっとうに面白いですね。
投稿: 黒木 燐 | 2005年10月13日 (木) 00:04